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MENTAL HEALTH - 2020.07.01

精神科医Dr.KSの診察室④カウンセラーを目指すなら知っておきたい「LGBTの支援」

今回は精神科医Dr.KSが、カウンセラーを目指す方やカウンセリングに興味がある方なら、ぜひ知っておきたい大切なテーマの一つである「LGBTの支援」についてのコラムをお届けします。

皆さん、LGBTをご存知ですか。

今は世の中の意識のほとんどがコロナ禍に向けられていて、
LGBTが注目される機会が減ってしまっていると思いますが、
心理的援助者であるカウンセラーにとっては、LGBTの支援は忘れられない重要なテーマです。
6月は世界的に支援のイベントが行なわれている「LGBTプライド月間」でした。
コロナ禍がなければ、例年通り世界的にもたくさんのLGBTを支援するイベントが行われていたことでしょう。
そこで、今回はQ&Aから指向を変えて、LGBTについて少しお話ししたいと思います。

LGBTとは?

LGBTとはどのような人をいうのでしょうか?

Lesbian レズビアン: 女性同性愛者
…心の性が女性で、好きになる性が女性の人

Gay ゲイ: 男性同性愛者
…心の性が男性で、好きになる性が男性の人

Bisexual バイセクシュアル: 両性愛者
…好きになる性が同性の場合も異性の場合もある

Transgender トランスジェンダー:性別違和の自認者
…体の性と心の性が一致しない感覚をもっている人

LGBTは4つの頭文字をあわせた言葉で、セクシュアルマイノリティ(性的少数者)の総称としても使われています。
L・G・B・T以外にも多様なセクシュアリティが存在します。

日本では人口の7.6%が、約13人に1人がLGBTであるという報告もあります。
たとえば、学校の40人クラスであれば、約3人はLGBTということになります。
いかがでしょう?実感が湧くでしょうか?

精神科医療のLGBTの捉え方

精神科医は、LGBTを精神疾患とは捉えていません。
世界的に使われている精神科の診断基準には、LGBTについての病名はありません。
あえて言うなら「性別違和」という診断名はあり、これはトランスジェンダーに重なるところはあります。
人にとって「性のあり方」には3つのベクトルがあります。
体の性・心の性・好きになる性の3つです。

女性の体であれば、自分を女と捉え、多くの人はそのことを疑うことはありません。
はじめから与えられた女・男という役割に違和感を覚えることはないのですね。

ところが、自分の体の性に対してどこか違和感を持ち、
心の性が体の性とは違うと感じる人もいます。
この、体の性と心の性が一致しない人を「トランスジェンダー」といいます。
「トランスジェンダー」は診断名・病名ではありません。
当事者運動から生まれた概念で、プライドを持って自らを命名した名前だといわれています。
だから薬は出しません。

ただ、本人自身と周囲との関係性から生じてきた症状、
たとえば、自己肯定感が低くなり、人に見られるのが嫌で人前に出るのを避けるようになるとか、
ずっと嘘をついているような気分になり気持ちが沈むなど、
不安や抑うつ症状で生活に支障を来すことになれば、薬が必要になります。
また、職場・組織の偏見や無理解に苦しむあまり、適応障害になることもあるでしょう。
ここまでは一般的な精神科医が対応します。

話が進んで確定診断を受けたいとか、適合手術をすることの相談にも、精神科医の面談は必要です。
だだし、ここからの領域は一般的な精神科医ではなく、
ジェンダー専門家として認定された精神科医です。
およそ半年くらい継続面談をして診断をしていき、
ホルモン療法や適合手術へと進めていくことになります。

LGBTのこころを支えるのは・・・

抑うつ症状には精神科医が医学的見地のもと専門的に関わり、
適合手術などにはジェンダーの専門医が関わります。
では、LGBTが陥りやすい悩みや苦しみに対しては、どうでしょうか。
 LGBTの当事者が陥りやすい悩みは、どのようなものがあるでしょう。 

自分は自分であるという確信を「アイデンティティ」、
自分は自分でよいという感覚を「自己肯定感」といいますが、
なぜか他の人と違っていそう、同じ価値観で性の話しを共有できない、でも皆と同じ振りをしていないといけない、
本当の自分のことを友達にも親にも隠しておかないといけない、等々、長年抱いている秘密があるとしたら…。
 
そうなると、自分は自分であるというアイデンティティ、
自分は自分でよいという自己肯定感が、揺らいでしまうことになります。
LGBTの約6割はカミングアウトしていない、といいます。
それは、「言いたくない」からではなく、「言えない」から。 

もしも自分はLGBTだと告げたら、周囲にどう思われるか、
奇異な目で見られるのではないか、非難されるのではないか、
そんな思いに囚われて、なかなかカミングアウトができない。
 
そのことで気持ち的に苦しくなって、自己肯定感が下がったり、
将来が不安でたまらなくなったり、人間関係がぎくしゃくしたり、と、さまざまな困難が付きまとうことでしょう。

自身の性に違和感を持つ、性別違和の人々の約70%が自殺を考えたことがある、といいます。 
だから、こころの支援が必要なのです。

LGBTの人々のこころの何をどう支えるのか、
それは一言で表現するなら、アイデンティティの確立と自己肯定感を育む、お手伝いではないでしょうか。
それには、複雑に絡み合った想いを傾聴し、是認してくれる人として居続けること、クライアントにとってありのままで居ても良い、新しい関係性を提示し続けることでしょう。

となると、そこはもしかしたら精神科医以上に、
心理カウンセラーが大きく力を発揮できる領域ということになりますね。
カウンセラーという仕事や、カウンセリングに興味を感じたあなたなら、
カウンセラーとして、どのような支援がしたい、またどのような支援ができそうでしょうか。
あなたとの出会いで、救われる人たちがいる、それがカウンセラーのお仕事です。
この機会にぜひあなたも考えてみてください。  

まとめ

精神科医Dr.KSの診察室④ではカウンセラーを目指す方なら知っておきたいテーマ「LGBTの支援」をお届けしました。Dr.KSのアドバイスがカウンセラーを目指す上でのヒントになればと思います。

精神科医Dr.KSの診察室では皆さんからの悩みや質問、知りたい情報などをお待ちしております。

 

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この記事を書いた方のご紹介

Dr.KS

精神科医/日本医師会産業医/臨床心理士/法政大学産業医・学生相談室学校医/渋谷もりやクリニック/神奈川大学人間科学部特任准教授

精神分析学派のもと、卓越した理論とサイコセラピー技術を融合させた独自の臨床観と高度な専門性を持つ。産業から医療、教育と多領域で活躍。精神科医であり臨床心理士、特任准教授として大学で教鞭もとるマルチなドクター。大手ファーストフード、輸入バッグ企業ほか6社もの産業医を務める。

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