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MENTAL HEALTH - 2022.12.19

メンタルケアPLUS 第7回「セルフケア編-モチベーション」

コロナ禍の影響で私たちの働き方は大きく変化しました。当初は感染拡大防止のためのテレワークでしたが、働き方のひとつとして定着した企業も多いと思います。

テレワークになったことによって、「通勤がなくなって助かる」と好意的に受け止める人もいれば、「仕事の全体像が見えなくて不安」とか、「公私のメリハリがつかなくてやりづらい」と否定的に感じる人も少なくないようです。

このような状況下で、「社員のモチベーションが低下している」と感じており、いかにモチベーションをアップさせるかが昨今の課題となっている企業も数多くあるようです。

そこで今回は、「モチベーション」について、心理学的な概念を参照しながら考えてみたいと思います。

モチベーションとは?

「仕事のモチベーションを上げる」というと、一般的には「やる気を出す」とか「意欲的に取り組む」という意味で用いることが多いのではないかと思います。

心理学では、これを「動機づけ」と訳します。

動機づけという概念は「行動を一定の方向に向けて生起させ、その行動を持続させる過程や機能の全般」と定義されますが、けっこうわかりにくいですよね。

どういうことかというと、ある行動が起こるのはどのような時で、その行動が何に向かって持続されていくのかという、行動の原因全般について考えようとしているわけです。

日常的な意味での「モチベーション」は、主に個人の「気持ち」や「心構え」を指していることが多いと思いますが、心理学では行動の背景にある「原因」を示そうとしていると理解してみてください。

身近な行動に例えてみると?

まずは、私たちの身近な行動から考えてみたほうがわかりやすいかもしれませんね。誰でもとる行動として、「ご飯を食べる」を例にしてみましょう。

私たちがご飯を食べようと思うのは、「空腹感」が生じ、「何かを食べたい」と感じるからですよね。これを行動の原因①としましょう。

では、何かを食べようとするときに必要なものは何でしょうか?当たり前のことですが、「食べ物」です。これが原因②です。

つまり、私たちが満腹で何も食べたくなければ、食べ物があっても「ご飯を食べる」という行動は起こらないし、お腹が空いていて何かが食べたくでも、食べ物がなければやはり「ご飯を食べる」という行動は起こらないということです。

心理学の用語では、原因①を「動因」、原因②を「誘因」とよびます。

このように行動の背景に目を向けてみると、「仕事をする」という行動にも、人それぞれに動因と誘因を見出すことができるのではないでしょうか。

「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」

ここで、人が起こす行動を大きく2つに分けて考えてみたいと思います。

「内発的動機づけ」

まず、人の興味や関心などから起こされる行動です。

つまり、好きだから、楽しいから、あるいは好奇心などによって起こされる行動です。簡単にいえば、「やりたいからやっている」さまざまなことです。

個々人が趣味でやっていることの多くは、これに当てはまるのではないでしょうか。例えば、絵を描くこと、本を読むこと、ゲームをすることなどは、現実的な報酬や生産的な結果が伴わなかったとしても続けていくことができます。これは、その行動そのものに満足感や達成感が伴うためであり、これを「内発的動機づけ」とよびます。その行動から得られる満足感や達成感が、誘因として機能しているということもできるでしょう。

「外発的動機づけ」

もう一つは、報酬や罰則など、外部からもたらされるものによって起こされる行動です。

つまり、現実的な報酬や高い評価を得るため、あるいは罰則を受けないために起こすような行動で、何らかの具体的な目的を達成するための行動ともいえるでしょう。

この仕事が成功したら特別ボーナスがもらえるとか、ある資格を取得したら昇進が約束されるといった「目の前にご褒美が準備されている」場面がイメージしやすいかもしれません。このような場合を「外発的動機づけ」とよびます。

私たちは日々さまざまな行動をして生活していますが、みなさんの行動を振り返ってみた時、どちらが多いでしょうか?

モチベーションを上げるためには?

ある行動の自発性や持続性を考える場合、一般に内発的動機づけのほうが優れているといわれています。「やりたくてやっている」わけですから、当然といえば当然ですね。

「仕事のモチベーションを上げる」という問題について考えるとすれば、いかに内発的動機づけによって仕事に取り組めるか、ということになるでしょう。つまり、仕事に対する興味や関心をもち、仕事そのものからやりがいや達成感が得られるということになります。

それがいちばん難しい、と思われる方も多いかもしれませんね。しかし、その手掛かりはあります。

「自己決定感」と「有能感」

内発的動機づけを支える要素としては、「自己決定感」と「有能感」があるといわれています。これらが感じられれば、内発的動機づけが生じやすいというわけです。

さまざまな仕事に取り組む中で、自分の責任や権限で決定を下して事態を動かすことや、取り組んだ結果として有能な自分の一面を感じられるような場面はあるでしょうか?

これは、働く当事者としての立場でも、マネジメントの立場としても工夫の余地があるといえるかもしれません。

一方の外発的動機づけですが、これにもメリットがないわけではありません。

行動の自発性や持続性では内発的動機づけに劣るとされますが、外発的動機づけは「即効性が高い」ということがあげられます。誰もやりたくない仕事を急いでしなければならないとき、特別手当を支給するといった方法は典型例だといえるでしょう。

ただしこの方法は、報酬を得てしまえば行動が持続しない可能性が高いということに注意しておかなければなりません。

「社員のモチベーションが低下している」という課題を克服するとしたら、外発的動機づけから、徐々に内発的動機づけを高めることが理想的だといえるでしょう。

つまり、最初は「給料をもらうために仕方がない」という思いで始めた仕事であっても、内容や進め方を工夫することによって、「自己決定感」や「有能感」を得られるようにしていくということです。

何を決断することが自分にとって重要な意味をもつだろうか?
どのようなことができると自分を有能だと感じられるだろうか?

このような視点から問いかけてみることが、「モチベーションを上げる」ためのスタートになるのではないでしょうか。

まとめ

リカレント専任講師の蔵屋先生の連載「メンタルケアPLUS」の第7回では、「メンタルヘルス セルフケア編 –モチベーション」をテーマにお届けしました。
モチベーションを心理学的な概念からみると、新たな発見もありますね。
皆さんもぜひ参考にしてみてくださいね。

 

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この記事を書いた方のご紹介

蔵屋鉄平(リカレントメンタルヘルススクール専任講師)

リカレント メンタルヘルススクール専任講師
公認心理師/精神保健福祉士
東京都内のメンタルクリニックで休職者の復職支援(リワーク)や、復職後のフォローアップ支援に従事している。

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