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MENTAL HEALTH - 2020.11.20

精神科医Dr.KSの診察室⑨ 人のこころを癒してくれる「芸術療法」その2 -音楽療法

音楽療法とは

さまざまな芸術療法の中から、「音楽療法」について少し詳しくご紹介しましょう。

音楽療法とは、音楽を聴いたり演奏したりする音楽活動を通じて、こころや体の調子を整えたり、健康を促進する療法です。人は誰もが好きな音楽を聴くと心が落ち着いたり、元気が出たりするものです。皆さんきっと好きな音楽がありますよね。

また、過去の思い出が音楽とともに鮮明に記憶に残っている、そんな方は多いのではないでしょうか。

音楽は考えてみれば不思議なものです。
目には見えないし、特別な空気の振動が、特異的な波動となり、その絶妙な重なり合いを心地よい音として脳が感知して、音楽というものが形作られる。

我々人類が先に手にしたのが、言葉なのか、音楽なのか、どちらが先なのでしょうかね。
それくらい音楽とは我々の生活に欠かせない、あって当たり前のモノのようです。

音楽の驚くべき力

音楽は実は心身の健康ととても密接に関係しているのです。音楽は人間の心動かし、それが身体に与える影響も大きい。たとえば、美しい音楽はストレスを和らげ、こころを落ち着かせてれます。躍動的な調律はエネルギーを与えてくれたり、癒しの音楽は疲労感を取り去ってくれたりもします。

音楽はこころに反応するだけではありません。同時に体(生体)にも反応を起こさせます。心拍、血圧、脈拍、脳波、体温、血流なども、音楽を聴く前と聴いた後で変化することがわかっています。

音楽は驚くべき力によって、私たちのこころにも体にもよい影響を与えてくれるのです。この音楽を医学の視点で活用し、医師や専門家の指導のもとに、こころや体の治療や病気の予防をするのが音楽療法というわけです。

音楽療法の対象と効果

近年でも音楽療法は根拠のあるものとして、このようにさまざまな対象に活用され、大いに効果をあげています。

・精神障害者
・障害児
・視覚障害者
・聴覚障害者
・妊婦
・スポーツアスリート
・老人性認知症の高齢者

最近では認知症などにも効果的といわれています。昔の懐かしい思い出のある音楽を聞くことで脳が刺激されて働きが活性化し、記憶が呼び起こされ認知機能が回復する、といったことも研究発表されています。

音楽療法のスタイル

音楽療法には、
・能動的音楽療法…自分で音を出すスタイル。歌唱療法と演奏療法があります。
・受容的音楽療法…演奏を聴くスタイル。刺激療法と鑑賞療法があります。
・人的音楽療法…一人ひとりの病状、音楽歴、生活歴、嗜好性を考慮してセッションをします。
・集団的音楽療法…集団で歌ったり楽器演奏をしたりします。メンバーとの協調性が求められるため、社会性が回復したり芽生えたりする効果があります。
音楽療法の実践では、これらをうまく組み合わせて活用すると、より効果的といわれています。

音楽療法に適した音楽

音楽を聴く鑑賞療法として使うのに適している曲は、旋律が美しく、リズム感があり、強弱が激しくない、短いフレーズが繰り返し演奏されるもの。ジャンルとしては
・自然の音(波の音や鳥のさえずりなど)
・クラシック音楽
・子守歌・童謡・唱歌(記憶の回想につながる)
・楽器演奏の歌のないもの(ピアノ、オルガン、バイオリン、ギター、フルート、ハープ、ハーモニカなど)

精神障害への音楽療法

精神障害の方の通うデイケアなどの治療施設での音楽療法は、集団歌唱、合奏、ダンスなどの集団音楽療法がよく行なわれます。

クライエントの様子をよく観察しながら、情緒の状態や体調にあわせて、無理強いはせずに、できることを楽しめるようにサポートしていきます。プライバシーには触れないように注意します。こころのバランスが崩れていたり、ストレスから抑うつ状態になっている方には、マイペースで取り組める個人的音楽療法も好まれます。

音楽はα波を出してくれる

心地よい音楽に浸ることで感覚脳である右脳の働きが優勢になり、こころが安らいでいるときに優勢になるアルファ(α)波が発せられるといわれています。

α派はいろいろな効果をもたらします。まずは脳と体を休めてリラックスする効果、ストレスを沈める効果、そして脳の活性化を促して体の免疫力を高め、病気を予防する効果も確認されています。良質な音楽によってα波が多く出る状態をつくり、その状態を維持すれば、こころにも体にもよい影響を得られるのです。

音楽のメンタルヘルスへの効果

音楽に関するメンタル状態への影響は、いくつも研究されています。
例えば鬱が酷くて、音を聞くのも煩わしいと思い時期は、静寂を好むものでしょうが、ある程度憂うつ感が軽くなり、脳が音楽を聴くことに苦にならないまで回復してきたら、音楽は心のリハビリとしても効果を発揮するようです。

悲しい気分のときは静かな曲調が心に馴染むかも知れませんが、自分の気分よりも少しだけ上の曲調に乗せて、気分を持ち上げれるといいですね。でも、元気がなさすぎるときに無理をして自分の気分と正反対のアップテンポの曲調を聴くと、かえって、わずかな元気も持っていかれてしまいそうです。

心理カウンセリングでは、相手の気持ちのたたずまいに合わせて話を聴きます。考えてみると、音楽でも自分の気持ちのありように合わせて曲調を選ぶと、こころにしっくりと馴染みやすく、癒しの効果につながりやすいのだと思います。

芸術の秋ですから、音楽に新しい観点で向き合ったり、楽しむのもいいかもしれませんね。

まとめ

精神科医Dr.KSの診察室⑨では、人のこころを癒してくれる・新しい自分を発見するといわれている「芸術療法」の概要について解説しました。
Dr.KSのアドバイスが毎日の生活の中でのヒントになればと思います。

精神科医Dr.KSの診察室では皆さんからの悩みや質問をお待ちしております。

 

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この記事を書いた方のご紹介

Dr.KS

精神科医/日本医師会産業医/臨床心理士/法政大学産業医・学生相談室学校医/渋谷もりやクリニック/神奈川大学人間科学部特任准教授

精神分析学派のもと、卓越した理論とサイコセラピー技術を融合させた独自の臨床観と高度な専門性を持つ。産業から医療、教育と多領域で活躍。精神科医であり臨床心理士、特任准教授として大学で教鞭もとるマルチなドクター。大手ファーストフード、輸入バッグ企業ほか6社もの産業医を務める。

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