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CAREER - 2023.08.30
キャリアコンサルタントを目指す方なら、知っておきたい。「キャリア教育」【第2回】 なぜ今「キャリア教育」が必要なのか?小学校・中学校で望まれる「キャリア教育」とは?
学校における「キャリア教育」では、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる能力や態度を育成することが求められています。そのためには、児童生徒や学生一人ひとりに対する発達状況の的確な把握と、きめ細やかな支援が必要となり、幼児期の教育から高等教育までの体系的な取り組みが重要となります。
では、それぞれの段階において、望まれる「キャリア教育」とはどのようなものなのでしょうか。このページでは、小学校、中学校におけるキャリア教育について解説します。
小学校における「キャリア教育」
キャリア教育において小学校段階は、「進路の探索・選択にかかる基盤形成の時期」と位置づけられています。 学級や学校、家庭、地域社会などにおける活動を通して、将来につながる夢を持つことの大切さや、目標を達成するために工夫して努力する大切さを理解しながら、社会性、自主性・自立性、関心・意欲などを養う時期です。
また、小学校のキャリア教育では、「働くこと」の意義を理解し、自分が「できること」「意義を感じること」「したいこと」を理解して行動し、これらを「学ぶこと」の意欲につなげることも重視されています。
進路の選択は中学校以降の問題であり、小学校のキャリア教育は将来の進路決定の準備をさせるものではありません。自立して社会で生きていくための基盤を作る時期なのです。
発達段階に応じたキャリア教育の必要性「小学校のキャリア教育」
小学校低学年のキャリア教育
小学校低学年では「小学校生活に適応する」「身の回りの事象への関心を高める」「自分の好きなことを見つけて、のびのびと活動する」ことがキャリアの発達課題 として設定されています。
小学校生活の適応において重要となるのが、「小1プロブレム」への対応です。学校生活への対応が困難な児童が増えてきており、幼稚園など入学前の段階との連携を踏まえた対策が必要となっています。また、返事やあいさつをする、時間や約束を守る、自分の気持ちや意見を伝えるなど、基本的な生活習慣や社会ルールを理解して集団に適応し、友達と仲良く助け合う態度を育てていきます。
さらに、家庭から学校、学校から地域へと学習の対象を広げることで、身近な人々の生活や働く人々に関心を持たせることも重要です。また、好奇心旺盛な時期でもあるため、自信を持たせて活動する楽しさを味わわせることも、低学年のキャリア教育の発達課題となります。
小学校低学年のキャリア教育
小学校中学年では、「友だちと協力して活動する中でかかわりを深める」 ことが1つ目のキャリアの発達課題です。当番活動などを通して、自分たちで決まりを作り、守る姿勢を身につけます。さらに、学校行事やクラブ活動で協力し合える人間関係を築きます。
もう1つの発達課題が「自分の持ち味を発揮し、役割を自覚する」ことです 。係や当番活動などを行うことで、役割への責任を持って最後までやり遂げる姿勢や、自分から考えて進んで取り組む姿勢を養います。また、地域の人と交流する体験活動により、さまざまな職業や生き方に触れることも重要となります。
小学校高学年
小学校高学年の発達課題は、「自分の役割や責任を果たし、役立つ喜びを体得する」「集団の中で自己を活かす」「社会と自己の関わりから、自らの夢や希望をふくらませる」の3つ です。失敗を恐れずに目標に取り組み、集団の中で役立つ喜びや自分への自信を育むことが重視されます。
集団の中で自己を活かすためには、コミュニケーション能力の育成も欠かせません。相手に対して思いやりを持ち、他者の個性を尊重する姿勢も身につけていきます。また、高学年は自分の将来に目を向ける児童が多くなる時期でもあります。体験活動で勤労や職業への理解を深め、社会の様々な役割についての情報を収集・探索する力を習得させることも重要になります。
こうしたキャリア教育は、各教科や道徳、外国語活動、総合的な学習の時間、特別活動などを通して行われます。さまざまな職業や働き方、生き方に触れるには、学校や家庭だけでなく、地域社会とも連携したキャリア教育の実践が重要となります。
中学校における「キャリア教育」
中学校段階では、「現実的探索と暫定的選択の時期」 と位置づけられます。「社会における自らの役割や将来の生き方・働き方等を考えさせ、目標を立てて計画的に取り組む態度を育成し、進路の選択・決定に導く」(※)ことが、中学校のキャリア教育推進のポイントです。校区内の小学校におけるキャリア教育の取り組みを踏まえ、生徒たちの実態に即し、かつ系統的な教育を行うことが必要となります。
また、3年間を通したキャリア教育を展開することも求められます。「人間関係形成・社会形成能力」「自己理解・自己管理能力」「課題対応力」「キャリアプランニング能力」などをすべての教育活動を通して、体系的に育成 することが重視されています。さらに、社会における自らの役割や将来の生き方・働き方などをしっかりと考えることはもちろん、目標を立てて計画的に取り組む姿勢を養うことも重要です。キャリアに関する発達は個人差が大きいことを踏まえ、生徒一人ひとりの発達に対応する指導を充実させることが、中学校のキャリア教育の課題ともなっています。
※中央教育審議会「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」概要(2011 年1 月31 日答申)
将来設計を見据えたキャリア教育の実践
中学1年
中学1年のキャリア発達の課題は、「自分の良さや個性が分かる」「自己と他者の違いに気付き、尊重しようとする」「集団の一員としての役割を理解し、果たそうとする」「将来に対するおおまかな夢やあこがれを抱く」 とされています。そのために、まずは「中1ギャップ」といった問題を解決するために、ガイダンスや学級活動などを通して、中学校生活への適応を図っていきます。さらに、自己分析などの特別活動により、他者との関わりにおいて自分を知り、他者の個性を尊重する重要性も学びます。職業調べや職場訪問などの体験活動も多く取り入れられており、職業についての視野を広げ、将来に対する夢や憧れを抱かせることも必要となります。
中学2年
中学2年では、「自分の言動が他者に及ぼす影響について理解する」「社会の一員としての自覚が芽生えるとともに、社会や大人を客観的に捕らえる」「将来への夢を達成する上で、現実の問題に直面し、模索する」こ とを発達課題に据えています。職場体験やボランティア活動などを通して、勤労の意義や働く人々の思いを理解するとともに、キャリアカウンセリングにより、自分の適性を理解し、学校での活動や自分の進路にも活かしていくことを目指します。また、「ポートフォリオ」などで1年間の学習や生徒の考えをまとめることで、考えの変化がわかるとともに、自己理解を深めることにもつながります。
中学3年
中学3年は、自らの将来について深く考える時期です。キャリア発達課題として掲げられているのは、「自己と他者の個性を尊重し、人間関係を円滑に進める」「社会の一員としての義務と責任を理解する」「将来設計を達成するための困難を理解し、それを克服」の3つ です。将来どうなりたいかというビジョンを明確にするとともに、高校進学など具体的な進路選択を行います。これまでのキャリア教育をさらに深め、自らの課題に積極的に取り組み、主体的に解決する重要性を理解することが求められます。時には、現実の厳しさを理解し、それを克服する意欲を持たせることも大切です。
中学校におけるキャリアカウンセリング
中学校では3年間を通したキャリア教育が重要であることは、前に述べました。加えて、「ポートフォリオ」や「進路学習ノート」「面談カード」などを活用して生徒の学びを振り返り、進路や将来に対する考えがどのように変化したのかを記録しておくことも重要となってきます。そして、それらをもとに進路決定のサポートとして行われるのが、「キャリアカウンセリング」です。
学校における「キャリアカウンセリング」は、生徒の悩みや迷いを受け止め、自分の可能性や適性についての理解を深めさせたり、適切な情報を提供したりしながら、生徒が自ら進路を選択できるようにするための、個別またはグループ別に行う指導・援助です。特に、中学3年時の高校選びなどは人生における重大な選択となるため、精神的な余裕を持てなくなる生徒も出てきます。キャリア発達を支援するためには、一人ひとりに対して個別の指導を適切に行うことが重要です。
学校では、担任が家庭やスクールカウンセラーなどと連携して、キャリアカウンセリングを行うことが多いようです。またキャリアカウンセリングのスペシャリストである「キャリアコンサルタント」がキャリア教育の現場で期待される活動としては、キャリア教育に関する講義やセミナー、グループワークをはじめ、職業人としての講演などがあります。
さらに、インターンシップや職業体験の実施においても、キャリアコンサルタントの助言が有用となるでしょう。教職員に対する研修の企画・運営など、キャリア教育を実践する担当者をサポートする活動に従事することもできます。
まとめ
このページでは、小学校・中学校におけるキャリア教育について解説しました。
キャリア教育は、幼児期から発達の段階に応じて行われることが望まれています。それぞれの教育機関では、何を目標として、どういった活動を行っていくのかを理解しておくことが重要です。また、年齢が上がるにつれて、学校におけるキャリアカウンセリングの重要性も増してきます。高校や大学だけではなく、小学校や中学校でも、キャリアコンサルタントの専門性が求められているのです。
次回は、高校における「キャリア教育」について解説します。
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