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キャリア - 2024.10.18更新 / 2022.12.26公開

アサーショントレーニングとは? 3つの自己表現タイプと具体的な技法

アサーションは、自分の意見も他人の意見も尊重するコミュニケーションテクニックです。カウンセラーを目指す方はもちろん、普段の生活や会社の中でも活用できますので、ぜし参考にしてください。

アサーションとは【基礎知識】

アサーション(assertion)は直訳すると「断言」や「主張」という、やや強い言葉ですが、現在では相手と対等な立場に立って自分の意見を主張する意味として使われるようになりました。

はじめに、アサーションがなぜ広まったのか、土台となっている考え方は何なのかを紹介していきます。

アサーションの起源

アサーションは、1943年に心理学者のアンドリュー・ソルターによって提唱されました。アンドリュー・ソルターは、心理的に問題を抱える方の多くが、幼少期に親からの過度なしつけを受け、自分の考えを伝えられなくなっていると主張しました。

そして同年に、自己主張訓練に関する著書『Conditioned Reflex Therapy』の中でアサーションに関するテクニックを紹介し、世界中に広がります。

アサーションとは自分も相手も大切にする自己表現

アサーションとは「自分も相手も大切にする自己表現」です。この考え方は「アサーション権」に基づいています。アサーション権とは、基本的人権の一部で、自己表現に係る権利です。権利と聞くと難しく聞こえますが、『誰しもが認められる権利がある』また、『誰しもが主張できる権利がある』という考えかたです。ここで重要になってくるのは、自分にも他人にも権利があるということです。

アサーションは、お互いに不快な思いをしないように、相手の意見も尊重しつつ、自分の意見も伝えるためのコミュニケーションなのです。

それでは、具体的にアサーションの技法について見ていきましょう。

アサーションの3つの自己表現タイプ

アサーションは以下の3つの自己表現から成り立ちます。

  1. 非主張型(ノン・アサーティブ)

  2. 攻撃型(アグレッシブ)

  3. バランス型(アサーティブ)

それぞれの自己表現の特徴を知り、自分が何に当てはまっているのかを考えながら確認してみましょう。

非主張型(ノン・アサーティブ)

非主張型・受身型は、自分の意見を口にするのが苦手で自己主張をしないタイプのことです。

このタイプの方は、自分が不安に感じていることや嫌なことがあった場合にも、それを主張できないことが多いようです。自分が嫌だと感じていることや、本当に言いたいことを言えないため、人間関係に疲れてしまいます。自己主張が苦手な日本人に多い傾向があります。

攻撃型(アグレッシブ)

攻撃型とは、自分の意見を一方的に伝えて相手の意見をまったく聞かないタイプのことです。

自分の考えだけを押し付けてくる上司や、子どもに過干渉な親などは攻撃的な自己表現に当てはまります。すぐにマウンティングをしたり、大声で相手を罵倒したりするのが特徴です。

自分の意見や主張をはっきりと伝えられる面もありますが、周りからは「怖い人」や「嫌な上司」のような印象を持たれる可能性があります。

バランス型(アサーティブ)

バランス型であるアサーティブは、自分も他人も尊重するタイプのことです。

このタイプの人は、意見や主張がぶつかった際には、話し合うことが重要だと考えています。そのため、自分の意見も伝えつつ、相手の意見にも耳を傾けることができます。自分の意見と相手の意見の違いを認識して尊重し、妥協点はどこにあるのかを一緒に考えられるのが、アサーティブな自己表現です。

たとえば、初対面の人と接する機会があったときに、アサーティブなコミュニケーションができる人は「楽しそうだけど、不安もある」のようにネガティブな感情にも目を向けます。アサーションでは、ポジティブな感情もネガティブな感情も受け入れることを大切にします。

アサーションテクニックの具体的な技法

ここでは、アサーションテクニックを実践するための方法を紹介します。

相手の発言を受け入れたうえで自分の意見を伝える

アサーションで大切なのが、相手の発言を一度受け入れることです。相手の主張に同意できないからといって、すぐに反対意見を言ってしまうと、相手が発言する権利を奪いかねません。

たとえば、「海と山どちらが好き?」という話題に対して、相手が「海が好き」と答えたとします。

アサーションがないと「海なんかよりも山のほうが絶対いい」という答え方になり、これだと相手を否定していることになり不快に感じてしまう人もいるでしょう。

そうではなく「そうですね。海には素晴らしい所がたくさんあります。山も海とは違った魅力がありますよね。」というように伝えると、円滑なコミュニケーションが可能となります。それでは、もう少し具体的な例で見ていきましょう。
 

AさんとBさんのケース

Aさんは、ある企業で営業部のリーダーを務めている。ある日、部下のBさんが担当している企業から「納品日を過ぎた上に、注文とは違う商品が送られてきた。」とクレームの電話が入った。

Aさんは電話で謝罪後、Bさんにどのような対応をするでしょうか。

 

非主張型(ノン・アサーティブ)の場合

Aさん自身が取引先の企業に謝罪に行った後、Bさんに「先方から指摘があったけど、もう解決したから大丈夫だよ」と伝えた。

Aさんは「また同じミスをしたら、取引が切られて大きな問題に発展してしまうかもしれない」と不安になっているが、Bさんの機嫌を損ねてしまうことを恐れて注意できない。

一方でBさんは、仕事を最後まで任せてもらえず、指導もされないことにモチベーションが下がっている。

 

攻撃型(アグレッシブ)の場合

「いったい何をやっているんだ!何度ミスをすれば気が済むんだ!今から謝罪に行ってこい!」とBさんの言い分を聞かずに、怒鳴り散らす。

その後、BさんはAさんに対して不信感や恐怖を感じるようになり、Aさんを避けて行動するようになった。

そのため、Aさんへの報連相が疎かになり、大きなトラブルが度々起こるようになった。

怒鳴っても部下のミスは一向に減らず、Aさんはますます怒鳴ることが増え、それに比例して、部下との会話が無くなり、孤立感を感じるようになった。

 

バランス型(アサーティブ)の場合

「こういう理由で先方からクレームがあった」という事実を伝え、そのときの状況確認をし、どうしてミスが起こったのかをBさんと確認をする。

そのうえで「これはBさんの管理ミスだったので、次回からはこのようなことがないように注意してほしい。しかし、ミスが起こる業務の仕組みにも問題があるから、次に向けて対策を立てよう。その報告も含めて先方に謝罪に行こう」と伝えた。Bさんはミスを起こしたことに落ち込んだものの、次回の対策を立てた上で先方に謝罪ができたので、取引先とも良好な関係が保てた。

また、冷静に対処するAさんを頼もしく感じ、自分の意見が反映されていることで仕事へのやりがいを感じている。

 
バランス型(アサーティブ)のように、相手の話を受け入れ、自身の主張も伝え、相互にコミュニケーションをとろうとする姿勢が大切です。

反対意見を伝えるときは主語を「わたし」にする

Iメッセージとは、主語を「わたし(I)」にして伝えることです。Iメッセージの反対を「You(ユー)メッセージ」と言い、主語を「あなた(You)」にして伝えます。

日本語は主語がなくても『誰』を指しているかをおおよそ判断できる言語ですが、英語は必ず『誰』を指しているのかを要求される言語です。アサーショントレーニングをする場合はまず、あなた(You)を私(I)にしてみるところから始めてみるとよいでしょう。

Youメッセージ:どうしてあなたは泣いてるの?
Iメッセージ:あなたが笑顔だとは嬉しいです。

Youメッセージ:あなたはなぜこんなこともできないのですか?
Iメッセージ:ここをこうしてもらえるとはとても助かります。

このように『誰』を自分自身にすることで、自分の気持ちを伝えることもでき、かつ相手を尊重する表現になります。

企業でアサーションテクニックの活用できる場面

企業でアサーションテクニックを導入したいと考えている方もいるでしょう。ここでは、企業で実際にアサーションテクニックを活用する場面を紹介します。

人事評価

人事が従業員を評価をする際にアサーションテクニックは有効です。

企業がアサーションを理解していれば、意見や主張を伝えやすい文化が形成されやすくなります。

上司や部下の関係だからといって素直に思っていることを伝えられないと、生産性の低下やお互いの関係性に影響します。しかし、思っていることを率直に伝えすぎてしまってもトラブルの原因になるでしょう。

アサーションテクニックを使用することで、相手の意見を認めつつ自分の意見が言えます。そのため、企業体制の改善や従業員の気持ちが理解しやすくなるので、風通しのよい職場環境が作れるでしょう。

採用面接

採用面接をする際にもアサーションテクニックは役立ちます。

採用面接では、企業側と応募者とのコミュニケーションが重要だからです。面接官が応募書の意見を一方的に否定したり、自分の意見ばかり主張してしまっては、企業イメージにも大きく影響します。

対等な関係でコミュニケーションが取れるように、アサーションの考え方やテクニックを学ぶ必要があります。

研修

一方的な講義を進めるよりも、研修生に意見を聞いたり質問したりすることで、内容の理解が深まります。

また研修の種類によっては、意見をディスカッションする場面があります。アサーションを共通認識としておくことで、活発な議論が生まれ、研修生が「やってよかった」と思える価値の高い研修になるでしょう。

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まとめ

アサーションは、自分の意見も他人の意見も尊重するコミュニケーションの態度・考え方です。

私たちは誰しもが尊重される権利を持っています。相手と話しているときに「自分が絶対正しい」「これを言ってしまったら嫌われる」と思うこともあるでしょう。

アサーションを身につけると、相手の考えを理解したうえで、適切に自分の意見を伝えることが可能です。

アサーションはあらゆる場面で役立つスキルなので、ぜひマスターしてみてください。

Q&A

アサーションとは何ですか?
アサーションは自分の意見や主張も伝えつつ、相手の意見も尊重していくコミュニケーションスキルです。
アサーションテクニックを取り入れることで何が期待できますか?
アサーションテクニックを実践することで、円滑な人間関係を築くことが期待されます。
相手から無理な要求をされたときの、アサーティブな返答は?
例えば、今日中にこの資料をまとめて欲しいと上司から要求された場合は、無理です!とだけ返すのではなく「本日中に対応をしたいのですが、別件で依頼されている資料の締め切りが本日のため、明日の午前中まででお時間いただけましたらこちらの資料をまとめることができると思いますが、いかがでしょうか。」というように、相手の要求に応えようとする気持ちや代替案を織り込むとよいでしょう。
アサーションのコツはありますか?
「I(アイ)メッセージ」を意識するとよいでしょう。
「どうしてあなたは(You)やってくれないの?」よりも、「私(I)はこうしてもらえるととても助かります」と言い換えることで、相手への伝わりかたも変わってきます。
Iメッセージを意識することで、より円滑なコミュニケーションが取れるようになるでしょう。

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