キャリアコンサルタント大辞典 Career Consultant Dictionary
キャリアコンサルタントに関する
役立つ情報を掲載
キャリア - 2024.10.14更新 / 2022.12.15公開
【あなたはどのタイプ?】キャリア・アンカーを知って自分らしく生きる
「キャリア・アンカー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
「キャリア・アンカー」は、キャリアを考えるときに自分の中で譲れない「軸」となるものです。皆さんの「軸」はなんでしょうか?
このページでは「キャリア・アンカー」についてや、「キャリア・アンカー」の診断方法を紹介していきます。
そもそもキャリアとは何か
そもそもキャリアとは何でしょうか?
「優良企業に入って働くこと?」
「出世すること?」
「特殊なスキルや経験のこと?」
最近よく見聞きする言葉ですが、意外と説明が難しい「キャリア」。その定義や重視されている理由を説明します。
キャリアの定義
キャリアとは、「仕事で得るもの、得るまでの過程」を指す言葉です。
キャリアというと、出世や優良企業への就職・転職をイメージする方も多いかもしれませんが、これらはあくまで一時的なもの、結果です。つまり「仕事で得たもの」なのです。
キャリアはこれだけでなく、結果を得るまでの過程も指しています。例えば、日々の業務を行い、経験を積み重ねていくこともキャリアです。
新しいスキルを習得するために、勉強を繰り返すこともキャリアなのです。仕事に取り組む中で知識やスキル、加えて人間性を磨いていくこと、つまり、生き方を磨いていくこともキャリアといえます。
厚生労働省では以下のような言葉でキャリアを定義しています。
「キャリア」とは、一般に「経歴」、「経験」、「発展」さらには、「関連した職務の連鎖」等と表現され、時間的持続性ないし継続性を持った概念として捉えられる。
「職業能力」との関連で考えると、「職業能力」は「キャリア」を積んだ結果として蓄積されたものであるのに対し、「キャリア」は職業経験を通して、「職業能力」を蓄積していく過程の概念であるとも言える。
引用:厚生労働省 | 「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会」報告書について
少し難しい表現ではありますが、やはりポイントは、職歴や経験といった結果だけではなく、それまでの過程も指しているということです。
キャリア・アンカーとは何か
キャリアを選択する軸として注目されているキャリア・アンカー。具体的にどういったものなのでしょうか。
キャリア・アンカーの定義
「キャリア・アンカー」とは、エドガー・H・シャイン(Edgar H. Schein)が提唱した言葉です。
「キャリア・アンカー」の”アンカー”とは船の錨のことで、キャリアのよりどころとなるもののことを指します。キャリアを考える上で譲れない軸と言うこともできます。
「キャリア・アンカー」は3つの要素、8種類のカテゴリーに大別して考えることができるとされています。
キャリア・アンカーの3つの要素
キャリア・アンカーは3つの要素から構成されています。
1.コンピタンス
1つは、コンピタンスです。コンピタンスとは能力のこと、専門スキルや知識だけではなく、環境に順応し目標達成を実現できるということも含みます。
2.動機
2つ目は、動機です。「これがしたい」と思うきっかけになるものです。動機には、外部から影響を受けて発生する外発的動機と、自分自身の内から湧く内発的動機があります。どちらも人が行動を起こすために必要なものですが、キャリア・アンカーには内発的動機付けがより重要であると言われています。自ら考え、行動に移すことで、やりがいを感じやすくなるためです。
3.価値観
3つ目は、価値観です。仕事をする上で、「絶対にしなくてはいけないこと」「絶対にしてはいけないこと」というのは明確である場合が多いです。
例えば、「期日までに取引先に届けなくてはいけない」「発送漏れがあってはいけない」こういったことは誰にとってもわかりやすいです。
こういったはっきりとした価値基準の一方で、人はそれぞれ抽象的な判断基準――価値観を持っています。この価値観を明確にし、自分が納得できる選択を取ることで意欲的になれるとされています。
キャリア・アンカー 8つの分類と適職
前述の3つの要素を分析することで、8つのタイプに分類することができます。
1.専門・職能別コンピタンス
自分の専門性や技術が高まることを強く望む、管理職になるよりも現場の仕事を続けたい。これに当てはまる方は、企画、営業、エンジニアリングなど、特定の分野で能力を発揮することに喜びを感じるタイプと言えます。
2.全般管理コンピタンス
組織の中で責任ある役割を担うことを望む、経営に求められる能力を重視する、異動などの経験も受け入れる。これに当てはまる方は、経営者タイプと言えます。
3.自律・独立
自分で独立することを望む、集団行動が苦手でマイペースに働きたい。これに当てはまる方は、組織のルールややり方に縛られずに、自分のやり方で働きたいタイプと言えます。
4.保障・安定
安定的に1つの組織に属し勤め上げることを望む、大企業や公務員として働くことを望む、将来が見通せる環境で働くことを重視する。これに当てはまる方は、雇用安定を重視するタイプと言えます。
5.起業家的創造性
クリエイティブに新しいことを生み出すことを望む、起業的な発想・行動を好む。これに当てはまる方は、新しいものを創り出すこと。障害やリスクを恐れずに行動し、結果を得ることが原動力なタイプと言えます。
6.奉仕・社会貢献
才能や有能な分野よりも価値観によって方向づけられている、自分の仕事で世の中をよくしたい、人の役に立つことが好き。これに当てはまる方は、暮らしやすい社会の実現、他者の救済、教育などに価値を見出し、成し遂げていくタイプと言えます。医療や福祉、教育分野に向いています。
7.純粋な挑戦
不可能と思えるような障害を克服することを望む、自分を磨きたい、挑戦を大事にする。これに当てはまる方は、困難な問題の解決や人との競争にやり甲斐を感じ、新しさや変化、難しさを目標とするタイプと言えます。
8.生活様式
個人・家族・仕事のバランスを望む、ライフイベントに合わせて仕事を調整したい。これに当てはまる方は、個人的な欲求、家族の願望、自分の仕事とのバランスや調整を考え、全体的な調和を実現したいタイプと言えます。
キャリア・アンカーの診断方法と活用方法
キャリア・アンカーの診断方法
キャリア・アンカーを診断する方法は以下です。
自己分析
前述のキャリア・アンカーの3つの要素ごとに、自身の考えを分析しましょう。コンピタンスは、動機は、価値観は。過去の経験を棚卸しして、どういった時に何を軸に行動したのか考え直してみましょう。
サイト診断、チェックシートを利用する
シャイン氏が提唱するキャリア・アンカー診断を無料で行える、テストできるウェブサイトや、キャリア・アンカーを知るためのチェックシートをアップロードしている企業・組織もあります。
チェックシートは、在職者向け・求職者向け、年代や経験によって用途が分かれている場合もあります。自身の状況に合ったチェックシートを見つけて、利用してみるのも手です。
キャリア・アンカーの活用方法
キャリア・アンカーの活用方法を、企業・組織の中と外に分けて説明します。
企業・組織の中での活用
配属や異動に活かす
従業員の適職を把握することによって、従業員に合った部署に配属させる、異動させるといったことが可能になります。これは、部署内・チーム内の役割分担にも通じるものです。
長期的なキャリアを考える際の軸にする
これまでの経験を棚卸しするだけでは、今後何がしたいのかという中長期的な目標を立てることが難しい場合もあるはずです。従業員のキャリア・アンカーを明確にすることで、新たな目標を立てるきっかけにすることができ、高いモチベーションで働くことが期待できます。
企業・組織の枠を超えた活用
転職、就職
働き手自らが適職・適性を知っておくことで、自分に合った環境を選ぶことにつながり、望む働き方を実現しやすくなります。ミスマッチを防ぐことは従業員・企業ともにメリットがあります。
ライフイベントに合わせて働き方を選択する
自分の軸を知っておくことで、その時々大事にすべきことをしっかり捉え、働き方を選択することにつながります。例えば、結婚や子供の誕生といったライフイベントがあったとき、それまでと同じ働き方をすることが大事なのか、自身で考えることができます。
この年、この時期は、自分はこれを重視したいからこう働く、そう自発的に動機付けして選択することで納得感と満足感が高く働けるはずです。
【事例あり】キャリア開発とは? 必要性や具体的な方法を紹介 | リカレントcounselor |
内的キャリアを知ると働き方が変わる! 考え方をわかりやすく解説 | リカレントcounselor |
まとめ
このページでは「キャリア・アンカー」について解説してきました。キャリアを考えることによって、より自分らしい働き方・生き方を実現することができます。
キャリアを考える、その1つの手法としてキャリア・アンカーを知ることは重要です。自分らしい選択とは何なのか、判断の軸はどういったことなのか明確にすることで、納得感と満足感が高く働くことができます。
また、そういった生き生きとした個人に支えられて、企業や組織も強くなれるのではないでしょうか。今回の解説を通して、キャリアへの理解を深めていただけましたら幸いです。
Q&A
初心者から短期間で
カウンセラーやキャリアコンサルタントになるには
リカレントでは、日本を代表するキャリアカウンセリングスクール「リカレントキャリアデザインスクール」を運営しています。
「国家資格キャリアコンサルタント」を取得したい方や、初心者からキャリアカウンセラー、キャリアコンサルタントとして、キャリア支援を行ってみたい方は、ぜひ下の青いボタンからパンフレットをご請求ください。
RECOMMENDおすすめ記事
-
キャリア
キャリアに役立つピグマリオン効果とは? ゴーレム効果との違いも解説
-
キャリアコンサルタント資格
良い効果が波及する「ポジティブ・スピルオーバー」とは?
-
キャリア
【時短勉強】L・サニー・ハンセンの統合的生涯設計理論をサクッと理解
-
キャリア
キャリアコンサルタントにとってのキャリア形成の考え方とは? 2つの視点で解説
-
キャリア
キャリア・アダプタビリティとは? 個人や企業で取り組めることを解説
-
キャリア
企業の力を高める「プロアクティブ行動」について解説!
-
キャリア
【解説】ダニエル・レビンソンの発達段階説-人生の四季とは
-
キャリアコンサルタント資格
あらゆる場面で活きるナッジ理論とは?人材育成など事例を紹介