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キャリア - 2024.09.02更新 / 2024.01.24公開
キャリア教育の重要性とその働きかけについて
現代を生きる私たちは、「キャリア」という言葉と無縁ではいられません。
自分が思い描くキャリアを歩んでいくためには、キャリアに対する理解が必要です。特に若年層は、キャリアに関する教育を受けることがキャリアを構築するために必要とされています。
このページでは、注目されている「キャリア教育」について解説していきます。
キャリア教育とは
「キャリア教育」とは、子どもや若者が自らのキャリアを構成していくために必要な能力を身に着けるための、教育的なアプローチのことを指します。
文部科学省ではキャリア教育を以下のように定義しています。
〇人が生涯の中で様々な役割を果たす過程で、自らの役割の価値や自分との関係を見いだしていく連なりや積み重ねが、「キャリア」であるとされています。
〇一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育が「キャリア教育」です。
引用:文部科学省 | キャリア教育
「物事を考える力」をきちんと身に着けて育ってきた人の場合、自分自身のより良いキャリアを構築するための方法は、ある程度自分だけで導くことができます。
また、必要に応じてだれかにアドバイスをもらうという選択肢をとることもできるでしょう。
キャリア教育が重要視されるようになった背景
成長段階にある子どもや、「物事を考える力」が養われていない人の場合は、自分だけで考えていても「理想的なキャリアの構築」にまでいたることが難しいといえます。
また、そもそも「キャリア形成の概念そのもの」を持っていないこともあります。
情報技術の革新などによる急激な社会環境の変化は、子どもたちの成長にも大きく影響してきます。
人間関係の構築や、自分自身での意思決定、そして将来に希望を持つことが重要であり、将来に起こり得る変化に対応できるような教育が必要であると考えられるようになったのです。
キャリア教育はキャリア構築の土台
キャリア教育は、「対象者が成長していくに従い、自分自身でキャリアを構成できる能力」を身に着けるための土台作りを行う教育です。
一般的にキャリア教育は、比較的若い学生程度までを対象として用いられることが多い言葉ですが、現在は社会人を対象とした教育にも用いられることがあります。
キャリア教育の導入
キャリア教育は、1999年の2月に文部科学行政関連の審議会報告によって出され、2006年の11月から実践的なキャリア教育が教育現場に取り入れられるようになりました。
キャリア教育は、小学生の段階からはじまります。ただしこのときのキャリア教育は、もちろん、「進路決定」や「将来設計について」などのような具体的なものではありません。
小学校1年生は、まずは「団体行動に慣れる」「集団での生活に慣れる」というところからスタートするため、道徳の授業で学んだり、体育の授業でチームを組んだりすることから始まります。
子ども自身が「キャリア教育の時間であること」を意識しないような、しかし将来的にはキャリア形成に役立つようなカリキュラムが組まれているわけです。
学年が上がる段階を経てより具体的に
学年が上がるにしたがって、このキャリア教育はより複雑に、より具体的になっていきます。さまざまな意見はありますが、義務教育機関は「社会に出るための準備期間」としての性質を持っていることを考えれば、このような働きかけは非常に有用だといえるでしょう。
ちなみに近年では、教育の多様化が進んでるため、学校ごとに異なるアプローチやカリキュラムが組まれています。
キャリア教育が育もうとしている4つの能力
上記では、キャリア教育の意味についてみてきました。ここからは、実際のキャリア教育に目を向けましょう。キャリア教育が育もうとしている能力とは、いったい何なのでしょうか。
キャリア教育が育もうとしている能力は、以下の4つです。
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人間関係を築く能力、社会を形成する能力
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自分自身を理解し、管理する能力
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課題に対応する能力
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自分のキャリアを形成する能力
それぞれ見ていきましょう。
1.人間関係を築く能力、社会を形成する能力
人間関係を築いたり、社会性を身につけることは、社会で生きていくために必要不可欠です。
たとえ、「だれとも関わらないで、一人きりで仕事をしていく芸術家」になったとしても、作品を売るためには必ずなんらかのかたちで他者と関わらなければなりません。その意味では、この「人と関わる能力」は、4つの能力のなかでも特に重要なものだといえるでしょう。
学校では、 「他者に対してどのように働きかければ、友好的な関係が築けるか」「意見が異なったとき、どのようにして話し合いをしていくか」を、授業のなかで学んでいきます。
コミュニケーションの基本である「あいさつ」
毎朝の基本的な生活習慣として「あいさつ」が挙げられます。一日の始まりに「あいさつ」をすることで、コミュニケーションが円滑になることが期待できます。
特に学校や会社などの集団行動を必要とする場では、こうした習慣をしっかりと育んでいくことが重要であると考えられています。
2.自分自身を理解し、管理する能力
相手を理解したいと考えたときに、相手の情報や気持ちに接することは重要ですが、それと同じくらい、「自分自身を理解して、自分自身を管理する能力」が必要です。
自分自身の考えやスタンスがしっかりしていないと相手に振り回されることになりかねませんし、逆に自分の感情をコントロールできないと相手を怒らせて仕事の停滞を招いてしまうこともあります。
「自分のことをよく理解し、自分の感情を律していく能力」もまた、社会に出ていくうえで非常に重要です。
自分が「できること」と「これからやりたいこと」
自分を理解していく過程では、現段階で自分が「できること」と「これからやりたいこと」を理解して主体的な行動をしていくことが必要になってきます。
また、自分のスキルについてしっかりと認識することで、これからの行動計画が立てやすくなります。
3.課題に対応する能力
人生は、目の前に現れた種々の課題を攻略していくことが常に求められるものです。その課題は、「苦手な食べ物をどうやったら克服できるだろう」というごく小さなものもあれば、「仕事上で大きなトラブルを起こして、損害が出てしまった」という大きなものもあります。
仕事においては、「そもそも課題は何か」ということから、課題を分析し、それを処理・解決することが求められています。DX化やグローバル化が進み変化する現代では、課題に対して柔軟に対応するスキルも必要となるでしょう。
ただ、「目の前にある課題をクリアするためにどうすればよいかを考えること」が求められているという点では同じです。
決断する能力
目の前に現れた課題に対して有効な決断をしていく能力も、キャリア教育のなかで学ぶことになります。そしてこの「課題に対処する能力」は、「現状を把握する力」「それぞれの役割の認識」「立てた計画を実行する力」「目の前にある選択肢のなかから、よりベストの選択肢を選ぶ力」から成り立っています。
4.自分自身のキャリアを形成する能力
「キャリア教育」の最終的な目的のひとつは、「自分自身のキャリアを形成する力を身に着けること」です。
自分自身の能力や環境を把握し、課題を解決するための情報収集力や認識力、計画実行力を持ち、提示された選択肢のなかから、より良い選択肢を自分の責任において選んでいくという能力を掛け合わせた結果として生まれるのが、この「自分自身のキャリアを計画していく力」です。
学習段階で培われるキャリアを計画していく能力
「自分自身のキャリアを計画していく力」は、学習段階で徐々に伸びていくものですし、成長の過程で「目指すべき未来像」が変わることもあります。
ただ、目指すべき未来像が変わったとしても、「その未来像にたどり着くための思考力・実行力・理解力」の重要性が失われることはありません。
社会人に求められるキャリアアップのための学習とは
キャリア教育は主に学生を対象としたものですが、上でも述べたように、現在は社会人に対しても使われるようになった言葉です。
ここからは、社会人を対象としたときの、『キャリア教育』について解説していきます。
なお、学生のころは教師や親から教育を「与えられる」立場にありますが、社会人の場合は自ら勉強していく姿勢が求められます。
社会人のキャリアアップのために必要な能力は、以下の3つです。
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行動する力
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物事を考える力
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人と協力する力
ひとつずつ見ていきましょう。
「行動する力」
どれだけ頭のなかで考えていても、実際に行動に踏み出さなければキャリアアップのためのステップを踏むことは難しいといえます。そのため、社会人には「行動する力」が求められます。
この「行動する力」は何も、「上司に対して自分の意見をガンガン申し立てる」などのような難易度の高いものだけを指しているのではありません。たとえば「資格取得のための勉強を始める」「仕事上の疑問をまとめて、上司に教えてもらう」などのような比較的ハードルの低いものもまた、「行動」だといえます。
行動するための力を身に着けるには、「スモールステップ」を大切にすることが重要です。
一足飛びにいきなり大きな行動に出るのではなく、「まずは資格試験のための本を1ページ読む」などのように、小さなステップを細かく踏んでいく方が失敗がありません。
「物事を考える力」
忙しい状況にあると、人は「物事を考える」ことをやめてしまいがちになります。目の前にある仕事や家事をこなすことに一生懸命になってしまい、なかなか先のことまでをイメージすることができなくなってしまうのです。
しかし物事を考える力が失われれば、自分のキャリア構成についても考えることが出来なくなります。
また、物事を考える能力が低下すると、他人の立場や気持ちを理解することも難しくなり、人間関係がこじれる可能性があります。
「このやり方で良いのか、本当にベストなのか」と日々の仕事のなかでも疑問を抱いたり、自分の知らないジャンルの本を読んだり、自分の行動を振り返る日記をつけることが非常に有効です。上でも挙げたこのような「スモールステップ」を踏むことで、物を考える力が身についていきます。
「人と協力する力」
社会人にも、当然「人と協力する力」が求められます。そのなかでもよく取り上げられるのは、「傾聴の力」でしょう。人の話を最後まで聴き、意図を読み取り、その人の潜在的な願いを引き出そうとする力です。
また、自分自身に余裕がないと、人の話を聞くだけの心のスペースを確保することが難しくなります。そのため、自分自身のストレスをコントロールし、キャパシティーオーバーの状態にならないように心がけます。
「キャリア自律」がもたらすメリット~企業側と個人側の両面から | リカレントcounselor |
まとめ
人は社会に出ていくうえで、必ず他者との関わりが必要になります。また、より良く生きていくうえでは課題を解決する能力や自分自身を理解する能力が必要です。そしてそれらを活かして、自分自身のキャリア構成をしていくことが求められます。
小学校1年生から実施される「キャリア教育」は、このような能力を伸ばすための教育です。
学年によって取り組むべき課題・達成するべき目的が異なりますし、社会人になってからもこれへの取り組みをし続けていく必要がありますが、どの年齢・どの世代においても、現在では必須といえる取り組みだといえるでしょう。
Q&A
年齢が異なれば、当然アプローチ方法も異なるのが「キャリア教育」です。
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