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キャリア - 2024.05.14公開

キャリア・パスポートとは? 小学校からのキャリア教育への活用

自分自身の強みと弱み、好き嫌いを把握してキャリアに生かしていこうと考えるのは、年代を問わず必要です。そしてこのようなキャリアの取り組みを支える基礎として、学校教育の場で使われる「キャリア・パスポート」があります。

このページでは「キャリア・パスポート」についてわかりやすく解説していきます。

キャリア・パスポートとは―積み重ねられたポートフォリオ

「キャリア・パスポート」はキャリア教育において活用される教材を指します。

子どもは、小学校に入学してから高校を卒業するまでの間、さまざまな学びを積み重ねていきます。その学びのなかで、自分の強みや弱みを把握したり、好き嫌いを把握したり、自分自身の将来の夢を見つめたりしていきます。

キャリア・パスポートは、このような「生徒自身の振り返り」をまとめたポートフォリオのようなものです。

ポートフォリオとは

「ポートフォリオ」という言葉は、就職活動の際や、ビジネス、金融の分野でよく知られていますが、キャリア教育においては、生徒たちの学習成果を一覧化して記録することを指します。

ポートフォリオはテストの成績やプロジェクトの成果物、実績、特技、そして他の学習上の成果を包括的に示すものです。

生徒たちがポートフォリオを作ることで、自身の強みを明確にし、「将来どのような仕事に就きたいか」「その仕事に就くためには、今自分はどうしたらいいのか」を主体的に取り上げられるようになります。

生徒の特性を理解することにもつながるポートフォリオ

生徒を導く役割にある教師にとっても、このキャリア・パスポートは非常に重要なものとなります。

生徒自身の特性や考え方を把握することで、その生徒をより伸ばすための指導ができるようになりますし、生徒自身のことをより深く知ることができるようになるからです。

キャリア・パスポートが導入された背景

キャリア・パスポートは、文部科学省が2020年4月から小中高に導入することを決定した、教育現場でも比較的新しい教材です。そのため、「小学生の段階からキャリアを考えさせるのは、早すぎるのではないか」などの意見もみられます。

「職業体験」という取り組みについて

実は、キャリア・パスポートが生まれる以前から、教育の現場では進路指導や就業体験という取り組みがなされていました。小学校や中学校のころに、学校主導の「職場体験」などを経験したことがある方もいるのではないでしょうか。

しかし昭和から平成にかけての職場体験などは、あくまで学校教育の一面にすぎず、取り組みも学校によって異なっていることが一般的でした。

従来のキャリア形成の在り方

多くの場合、高校もしくは大学、大学院を卒業した後、そのまま就業し、そこで初めて自分自身のキャリアを形成していくことになります。

ただ、社会人になり、訓練していない状況から、「キャリアの積み重ね」をしていくのはなかなか難しいといえます。

このような背景から、国では、「小学校のころからキャリア形成を意識させ、自分自身のキャリアをより良く積み重ねられるような訓練を、系統立ててさせていくべきだ」と考えました。これが、キャリア・パスポートの導入に繋がったのです。

 

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キャリアパスポートの現場への導入と引継ぎ

2020年から導入されたキャリア・パスポートの内容は、文部科学省が「例」として公開しています。学校ごとに多少の違いはありますが、基本的にはこの例に添うようなかたちで教師は指導に当たっていきます。

キャリアパスポートの引継ぎの手順

また、文部科学省ではキャリア・パスポートは、小学校6年・中学校3年・高校3年の12年間にわたって、原則教師間で引き継ぎを行うとしています。

小学校から中学校に上がるときや転校するときなどの「学校が変わるとき」にも、引き継ぎが行われます。なおこの引き継ぎは原則として生徒が行いますが、紛失の可能性を防ぐために、教師が行うこともあります。

ちなみにキャリア・パスポートは、引き継ぎの手間を最小限に抑えるために、「サイズはA4判・各学年5枚以内で引き継ぐ」とされていて、サイズや枚数の規格がきちんと定められています。

キャリア・パスポートは小学校1年生から高校3年生までの9年間にわたって積み重ねていくものです。

キャリアパスポートを引き継ぐ重要性

小学校1年生に求められる思考力・理解力・表現力と、高校3年生に求められる思考力・理解力・表現力は、当然大きく異なります。そのためキャリア・パスポートは、「将来のキャリア構築に役立てるためのものである」という一点はすべての学年で共通していますが、問われる内容や難易度は学年ごとに異なります。

また、キャリア・パスポートはあくまで「生徒が自主性をもって取り組む」「生徒が、自分自身のキャリアのために、生徒自身で向き合う」というものです。そのため、教師は生徒の書いたキャリア・パスポートにコメントを書くなど、対話的に関わるスタンスを維持することが非常に重要です。

さらに、キャリア・パスポートを保護者と共有したり、学期末ごとに見直したりして、「振り返り」を行うことも求められます。

キャリア・パスポートの活用状況

キャリア・パスポートの活用状況について見ていきましょう。

キャリア・パスポートの内容で、「アンケートやポートフォリオを盛り込んでいる」と答えた学校は、高等学校で79パーセント・中学校で77パーセント・小学校でも60パーセントに上ります。
 

 
このような数字を見ていくと、キャリア・パスポートのアンケートやポートフォリオは多くの現場で有用に使われていると考えることができるでしょう。

文部科学省「キャリア・パスポートって何だろう?」p2を参考に作成

キャリア・パスポートで育成する内容について

ここでは、キャリア・パスポートの内容について紹介していきます。

キャリア・パスポートの基礎能力

キャリア・パスポートにおける基礎能力は以下の4つです。

  1. 人間関係形成・社会形成能力

  2. 自己理解・自己管理能力

  3. 課題対応能力

  4. キャリアプランニング能力

1つずつ順番にみていきましょう。

1.人間関係形成・社会形成能力

人間関係形成・社会形成能力は、他者との関係を築き、社会での役割を理解していくことで、自分の状況や立場を把握していくことを指します。

他者との協力など、コミュニケーションを取る中で、社会と関わり積極的に形成していくことがキャリア・パスポートの基礎能力のひとつであるとしています。

2.自己理解・自己管理能力

自己理解・自己管理能力は、自己認識や自己評価を行い、自分の強みや弱みを理解する能力と、それに基づいて目標を設定し、計画的に行動する能力を指します。

自己管理能力の中には「自分がしたいこと」、「自分ができること」を理解し、主体的に行動し学習していくことも含まれます。

3.課題対応能力

課題対応能力は、新たな状況や課題に対して適切に対処し、解決策を見つける能力を指します。

変化する環境や難題に対して適切に対応し、成果を出すことが期待できるため、課題対応能力は、キャリア・パスポートを構成する能力の中でも重要であるとされています。

4.キャリアプランニング能力

キャリアプランニング能力は、自己のキャリア目標を設定し、計画を実行する能力を指します。

人間関係形成・社会形成能力、自己理解・自己管理能力、課題対応能力を踏まえ、情報に対し適切かつ柔軟な考えを持ち、キャリア目標の設定や計画の実行に活かす能力sパンが求められます。

出典:文部科学省「キャリア・パスポート(零時資料)中学校指導者用」

まとめ

生徒が自分のキャリアプランや進路を考える手助けとなるものとして、「キャリア・パスポート」があります。

自分自身と向き合い、分析し、夢を実現するための方法を主体的に考えることを目的としたこのキャリア・パスポートは、教師・保護者が生徒を知るための資料としても役立てられます。

Q&A

キャリア・パスポートとは何ですか?
キャリア・パスポートとは、2020年4月から文部科学省が小中高に導入を決定した、キャリア教育において活用される教材を指します。
キャリア・パスポートのメリットとは何か?
キャリア・パスポートの導入のメリットとして、「自分自身の生き方を考えることに繋がる」「主体性を持てるようになる」「保護者や教師が生徒についてよく知ることができる」が挙げられます
キャリア・パスポートの目的は?
子どものころからキャリア形成を意識させ、自分自身のキャリアをより良く積み重ねられるような訓練を、小学校のころから系統立ててさせていくことを目的としています
キャリア・パスポートの留意点は?
キャリア・パスポートの留意点としては、教科や科目、学校行事等の評価に偏らないように記録していくことが挙げられます。また、導入からさほど年数が経過していないこともあり、キャリア・パスポートで使用されるシートや、連携のしかたなどが統一されていないなどの課題もあるため、柔軟に対応していくことが必要です。

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