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対立を糧に~コンフリクトマネジメントの考え方

組織には、異なる考えや価値観を持つ従業員が所属しています。そのため、組織のなかでもめごとやあつれき、対立が生まれることはある意味では当然のことだといえます。
この「対立」は、正しく処理することで、組織やそこに属する人にとってむしろプラスに働くようになります。
このページでは、組織内における対立を処理する考え方や方法論として、「コンフリクトマネジメント」を取り上げていきます。
対立をプラスに転化する「コンフリクトマネジメント」を知る
「コンフリクト」は「衝突」という意味です。「コンフリクトマネジメント」とは、組織内で起きた対立を積極的に解決し、組織や従業員にとってプラスに転化していこうとする考え方またはその取り組みを指す言葉です。
組織には、異なる考えを持つ従業員が所属することになります。考えが異なればあつれきや対立は起こるものですが、対立を放置すると、従業員同士の溝が広がり、組織の空気が悪くなってしまいます。
しかし対立を適切に処理をし活用をしていけば、むしろ組織にとって多くのメリットが期待できるといえます。意見の交換のなかから新しい発想が生まれることもありますし、自分自身では気づけなかった考え方や認識に気づかされる可能性もあるからです。
そしてこのような「起きた対立を、良い方向に導こうとする考え方」として、コンフリクトマネジメントがあるのです。なおこのコンフリクトマネジメントは、特に医療の現場で重要視されるものですが、現在は一般企業でも広く取り入れられるようになってきました。
コンフリクトは、主に2つのパターンに分けられます。
タスクコンフリクト
1つは「タスクコンフリクト」です。これは、仕事に関する衝突のことをいいます。たとえば「営業部がコスト減を訴えているが、コストを減らすと品質が維持できないとして開発部門が反対している」「部長Aは通販システムの拡充を訴えているが、部長Bは人材不足で管理する従業員がいないからということで反対している 」などです。
リレーションコンフリクト
もうひとつのコンフリクトは、「リレーションコンフリクト」です。これは「人間の感情に基づくあつれき」であり、個人の好き嫌いの感情を原因としているものです。
組織が抱えるコンフリクトとして健全なのは、もちろん前者のタスクコンフリクトです。タスクコンフリクトはあくまで仕事上の対立であるため、話し合って着地点を探していくことができます。また妥当な着地点を見つけられた場合は対立も解消するため、比較的解消難易度が低い対立だといえます。
対して、リレーションコンフリクトの場合は、個人の好悪の感情に基づく対立であるため、解決の難易度が非常に高くなります。リレーションコンフリクトは感情の問題であるため、明確な解決策がありません。ただそれでも、コンフリクトマネジメントのことをよく知り、解消に向けて段階的に努力していくことで、問題が解決する場合もあります。
コンフリクトマネジメントに関係する5つの反応
ここでは、コンフリクトマネジメントを行う際の手助けとなる「従業員が示す5つのスタイル」について解説していきます。
主張性低×協調性低 の「回避型」
自分の考えを主張せず、人の仕事に対しても非協力的な姿勢を取る従業員は、「回避型」であると考えられます。
回避型に分類される従業員は、自分の考え方を主張しないため、他の従業員と争うことは一般的に少ないとされています。また他者と関わりを持たないため、目立った問題行動もなく、自分の意見を述べない傾向があるため、表面上は穏やかではあるものの、問題解決に至ることはほとんどありません。
主張性高×協調性低 の「競争型」
自分の主張を行いたいという気持ちが強い一方で、人との協力体制を取らない人を「競争型」といいます。自分の利益や主張を押し通そうとするため、しばしば主張性が低く協調性が高い従業員が犠牲になる傾向があります。
協調性のなさが問題になってくるため、組織の一員として雇用し続ける場合は扱いに注意が必要です。
主張性中×協調性中 の「妥協型」
「自分の意見もほどほどに主張し、相手の意見もそれなりに聞く」という中庸スタイルは「妥協型」と呼ばれます。
お互いの意見をすり合わせてバランスをとっていくため、妥協型が多い組織は円滑に回りやすく、また問題の解決スピードも速まる傾向にあります。ただお互いが少しずつ譲り合うかたちであるため、問題解決における満足度が低いのがデメリットです。
主張性低×協調性高 の「受容型」
自分自身の意見はそれほど言わず、人の意見を受け入れるタイプの従業員を「受容型」といいます。
このタイプの従業員はコンフリクトが起きたときに自分の意見を抑え込み、主張が必要な場面でも主張することが少ないのが特徴です。そのため受容型の従業員は、一方的に不利益を被るリスクがあるというデメリットがあります。
主張性高×協調性高 の「協力型」
コンフリクトマネジメントにおいてもっとも望ましいのが、「自分の意見をしっかりと主張し、相手の意見もしっかり聞く」という協力型の姿勢です。
自分自身の考えをしっかり相手に伝えながらも、相手の意見も取り入れてより良い方向を模索していくため、組織力の向上につながる姿勢として評価されています。またお互いの考えを述べ合うスタイルであることから、フラストレーションがたまりにくく、均衡が取れているうえに組織を成長させられる関係を築けます。
コンフリクトマネジメントを行う際は、自社の従業員をこの協力型の状態へと導いていくことが望まれます。
対立を解消するためには?
最後に、対立を解消するための方法について解説していきます。
コミュニケーションを積極的に取る
コミュニケーション不足は相互の理解不足につながります。コミュニケーションがしっかりとれていない職場の場合は、問題が起きてもそれを共有しにくくなります。また、相手からの提案に対してもかたくなな態度をとってしまう従業員が多くなります。
このため、日ごろからしっかりコミュニケーションをとっておくことが必要です。上司が中心となり、積極的に同部署・他部署との連携を進めていきましょう。上司が部下の意見に対して耳を傾ける姿勢をとっていれば、部下は自分の考えを口に出すことを恐れなくなります。
コミュニケーションをしっかりとるようにすると、従業員一人ひとりの特性や得意不得意が把握でき、より適切な部署の配置をすることも可能になります。
自分が得意としている分野の仕事を割り当てられた従業員は、仕事に対するモチベーションを保ちやすくなりますし、自分の考えに自信を持つことができるため、気後れすることなく発言もできるようになります。
「コミュニケーションをとること」は、コンフリクトを解決する手段となるだけでなく、職場全体の生産性向上や、離職者防止にも役立つのです。
原因を解明し、解決策を模索する
コンフリクトが起きたときは「原因を解明すること」が重要です。感情に走ってしまうと状況を改善することは難しくなるので、まずは「何が原因で対立が起きているのか」を冷静な視点で見極めるようにします。
原因の洗い出しが終わったら、それに対して有効な解決策を模索していくようにします。当事者だけで解決が難しいと判断される場合や、片方が競争的で片方が受容的、あるいは片方が管理職で片方が役職なしなどのように力の差がある場合は、第三者が間に入る必要もでてくるでしょう。
お互いにとって良い着地地点を探す
社会人同士の対立では、「片方だけが100パーセント正しくて、片方だけが100パーセント間違っている」と言い切れるケースは決して多くはありません。そのような状況で、片方だけの意見を無理に押し通そうとした場合、感情のもつれを後々まで引きずることも考えられます。
ビジネスの場のコンフリクトにおいて大切なのは、「双方にとって良い着地地点を探すこと」です。
そのためには、冷静に話し合いをすることが重要です。また相手の主張を理解するように努め、自身の主張を一方的に押し付けてはいないかを自問自答していく姿勢が求められます。
良い着地点が見つかり、それを決定としたのであれば、その後は引きずらないように努めることも重要です。
まとめ
組織には、異なる考え方を持つ従業員が所属しています。そのため、対立が起こることも少なくありませんが、従業員の特性を把握し、コンフリクトマネジメントの考えに基づいて解決方法を試みることで、解消していくことが可能です。
対立をきちんと解決できれば組織の結束力は高まり、生産性の高い組織へと成長につながるでしょう。
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