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キャリア - 2024.10.17更新 / 2024.07.15公開
就職氷河期世代とは? いまさら聞けない意味と原因を解説
現在すでに社会の一員として働くビジネスパーソンのなかには「自分がまさに就職氷河期世代だった」という方も決して少なくはありません。
ただ新入社員や比較的若い世代にとっては、『就職氷河期』という言葉は「聞いたことはあるけれど、どんなものだったかはよくわからない」という場合も多いことでしょう。
このページでは、改めて就職氷河期世代について解説していきます。
就職氷河期世代とは
「就職氷河期世代」とは、ごく簡単に言うのであれば、就職が非常に難しかった時期に新卒で就職活動を行わなければならなかった世代のことをいいます。
データや見方によって多少の違いはありますが、おおむね1993年〜2005年くらいに就職活動をしていた世代(40歳〜50歳)を指します。
また、日本で広く知られている氷河期世代は、最近耳にすることが多いZ世代の前の世代にあたるため、世界共通でY世代と呼ばれています。
就職氷河期の完全失業率と有効求人倍率
1970年から2023年までの完全失業率と有効求人倍率の年平均をみてみると、1990年にピークだった有効求人倍率は1993年あたりから急激に下がり、完全失業率の割合が高くなっていることがわかります。
総務省統計局 「労働力調査」厚生労働省「職業安定業務統計」を参考に作成
この世代は、就職が非常に難しかった世代です。就職氷河期世代でもっともひどい就職難にあえいでいたのは2000年〜2003年の層ですが、このときは大卒であっても就職率が最悪の年で63%前後、高卒の場合は60%程度にまで落ち込みました。
また平均値で見ても、就職氷河期世代の大卒の就職率は約70%、高卒に関してもほぼ同等程度です。
就職氷河期世代以外の就職率がいかに厳しいものであったかが、この数字に表れているといえるでしょう。
就職率でみる氷河期世代の厳しさ
2019年の就職率は大卒ならば85%を軽く超えていますし、5人中2人〜3人が高卒であった1985年の高卒の就職率は、実に90%近くにも達しています。
また1985年〜2019年の間で就職氷河期世代を除いた場合の就職率の平均は、大卒で80%、高卒でも78%を超えています。
つまり就職氷河期世代は、ほかの世代に比べて、大卒の場合は10%近く、高卒の場合は8%近くも就職率が低かったうえに、年度によってはそれよりもさらに厳しい状況だったといえるのです。
氷河期世代の非正規雇用率
就職氷河期世代が影響を受けたのは、単純な就職率だけではありません。非正規雇用での就職率にも大きな影響を与えました。
現在のように「ライフスタイルが多様化して、さまざまな働き方ができるようになったから正規での就職率が落ちた」という状況とは異なり、就職氷河期世代は「正規で就職したくても正規での就職口がない」という状況にありました。
正規採用率がもっとも高かった1990年〜1991年は、大卒の正規採用率が0.9を超えていました(1.0がマックス)。また高卒の場合も0.85を超えており、ほとんどの人が正規で採用されていました。
しかし就職氷河期世代のなかでも最も厳しい2002年〜2003年にかけては、大卒の正規採用率は0.83程度、高卒に至っては0.71程度にまで落ち込みます。またそれと呼応するように非正規での雇用率が増えていき、2003年には大卒のうちの15%程度が、2001年には高卒の25%近くが初職であっても非正規雇用の雇用形態に甘んじなければなりませんでした。
このような数字を見れば、就職氷河期世代がいかに過酷な状況に置かれていたかが分かることでしょう。
出典:
東京大学社会科学研究所近藤絢子「就職氷河期世代のその後:雇用・所得・健康状態」
内閣府「日本経済2019-2020-人口減少世代の持続的な成長に向けて―」
なぜ就職氷河期世代が発生したのか?~きっかけは「バブル崩壊」にあり
ではなぜ、このように就職氷河期世代が生まれてしまったのでしょうか。
これは、だれもが一度は耳にしたことがあるであろう「バブル崩壊」によるものです。
1985年9月にドル高を是正するために行われた「プラザ合意」によって円高ドル安状態になったことは、輸出業を生業としていた日本の企業に大きなダメージを与えました。このダメージを回復させようと国は金融緩和政策を実施します。
この金融緩和政策によって企業が融資を受けやすくなったのですが、同時に「余剰資金を土地や株に回そう」という考えが生み出されました。そしてこの考え方は企業だけではなく、個人にも大きな影響を与えました。
1990年直前までの日本は「バブル」好景気
土地や株に資金を回す企業が増え、土地や株の値段は大きく上昇します。日本は空前ともいえる好景気に沸き、「土地や株は永遠に値上がりを続ける」という価値観のもと、実態のない「バブル」好景気が作り出されます。これが1990年直前までの流れです。
しかしこのような状況は、健全な経済状況とはいえません。そこで国は1989年の5月以降、今度は金融の引き締め政策を実施し始めたり、土地に関連する融資の制限を行ったり、地価税をコントロールしたりし始めます。
このような政策によって、実際の価値以上の値段がついていた地価や株価は大きく下がり、企業や個人は「高いお金を出して買った土地や株が売れない」「土地や株を売っても、マイナス分が補填できない」という状況に陥ります。また融資を受けられなくなった企業が立て続けに倒産していきます。
こうして、実体を伴わずに膨れ上がったバブルという泡は崩壊を迎えました。
バブル崩壊の影響を受けた氷河期世代
バブルが崩壊して企業が大打撃を受ければ、当然企業には従業員を雇い続けるだけの体力がなくなります。企業は、バブル崩壊までに雇用していた従業員にリストラを言い渡さなければならない状況に陥ります。従業員の給与すら保証できないなかで、新規採用にまで手や目やお金をかけられる企業の数は、決して多くありませんでした。
バブル崩壊にまつわる話は数多く、1974年〜1980年ごろの生まれの人のなかには「大学に進学せず、高卒で就職すればよかった。そうすればバブル好景気の恩寵にギリギリあずかることができ、就職できたのに」「すでに就職氷河期に突入していたが、自分が大学を卒業するころには状況が改善するだろうと大学院まで進んだ。しかし余計に状況は悪化した。それなら高卒で就職した方がまだマシだった」という声が上がっています。
就職氷河期世代支援プログラム
就職氷河期世代は、個々人の努力だけでは状況を覆すことが非常に難しいものでした。そのためしばしばこの世代は、「ロスジェネ=ロストジェネレーション=失われた世代」とも評されます。
就職氷河期世代の問題は、個々人の問題だけに留まるものではありません。そのため現在は国からもこの世代を助けるべく、さまざまな取り組みがなされています。
たとえば厚生労働省では、
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安定就職に関する支援
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就職を実現するための基盤の整備
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社会参加を促すプログラム
などを組み立てています。
1.安定就職に関する支援
まず1の「安定就職に関する支援」を見ていきましょう。
すでに述べた通り、就職氷河期世代は、正規雇用のかたちで就職したいと考えても、それが非常に困難な状況でした。そして今もその影響を受けている就職氷河期世代は多く見られます。
そのような人たちのために、国ではハローワークを窓口として、安定した就職先のあっせんやセミナーを行っています。これ自体は世代を問わずに行われているものですが、就職氷河期世代に対しては特に、専門の窓口を設けたり、就職氷河期世代限定・歓迎の求人を紹介したりといった一人ひとりのキャリアに合わせたセミナーの開催などを行っています。
2.就職を実現する基盤の整備
就職氷河期世代の場合は、最初の就職段階で上手く就職できず、それを現在も引きずっている人が多くいます。
そのような人のために国や自治体では、コミュニケーション講座やビジネスマナー講座、さらに就業体験(ジョブトレ)などを実践しています。また、セミナーや個別の相談支援や、就職後は長くその職場で働き続けられるようにと、定着支援も行っています。
3.社会参加を促すプログラム
就職氷河期世代は、非常に過酷な状況で就職活動を行わなければなりませんでした。
そしてその結果、就職活動が上手くいかず引きこもりになったり、就職はできたものの職場でのストレスで辞職したことがきっかけで再就職が困難になるケースなどが、就職氷河期世代の特徴のひとつであるともいえるかもしれません。
このように、一度社会から距離を置いている状態を長期間続けている人のために、段階的な支援が開始されました。
たとえば厚生労働省は、「現在働いておらず、引きこもり状態にあったり困窮状態にあったりする人のための支援を行う」として、自立相談支援事業を展開したり、住居を確保するための給付金を支給する取り組みや、自立の第一歩目として、社会参加をするための準備支援を行っています。
この「社会参加を促すプログラム」は、当事者のみを対象とするものではありません。引きこもりの家族を抱える家庭は、当人以外の周囲の人も大きな悩みのなかにあります。そのためこのプログラムのなかには、家族への支援を目的としたものもあります。
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まとめ
かつて就職率が70%程度にとどまり、さらに正規雇用率も低い世代がありました。バブルの崩壊によってもたらされたこの「就職氷河期世代」は、その世代に就職活動をしようとする人たちにとって大きな痛手となりました。
これは現在も問題視されていて、国は彼らを救うために数多くの支援策を打ち出しています。
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