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キャリア - 2024.10.25更新 / 2023.05.18公開
フランク・パーソンズ提唱「特性因子理論」とは
フランク・パーソンズと呼ばれる社会改革の運動家が、今から100年ほど前に「特性因子理論」と呼ばれる理論を確立しました。
このページでは、パーソンズの「特性因子理論」について解説します。
特性因子理論とは
特性因子理論を唱えたのは、フランク・パーソンズという人物です。彼は社会改革の運動家であり、また職業指導において卓抜した技術と知識を有していた人物でもあります。
「特性因子理論」は、文字だけを見ていると、非常に難しいもののように思われるかもしれません。しかし実際にはかなり単純明快で、そして2023年を生きている私たちにとってはごく当たり前の価値観でもあります。
特性因子理論とは、「個人や職業にはそれぞれ特徴があり、個人の能力に合った仕事を選べれば、仕事に対する満足度は高くなる」とする考え方です。
たとえば、人と接することが好きで得意な人が、だれとも会話しない事務作業を8時間行ったら、当然その作業効率は落ちるでしょう。また逆に、一人でコツコツと研究をしていくことを生きがいにしている人に、常に人とのメールのやり取りや電話でのやり取りを求められる職場を紹介しても、ストレスがたまってしまいます。
このようなミスマッチを防ぐために、フランク・パーソンズは「3つの要素」と「それを支援するための7つの段階」を設定しました。
適合のためにできること
人と職業のマッチング度を知り、それに応じた職業に就くために、フランク・パーソンズは、「3つの要素」と「7つの段階」を設定しました。
それぞれ解説していきます。
特定因子理論「3つの要素」とは
特性因子理論の基本となる「適合のために必要な3つの要素」は以下の通りです。
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自己分析:自分自身を理解すること
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職業分析:職業の特性を理解すること
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理論的推論:1と2を合わせて考えて、自分にぴったりの職業を選択すること
ひとつずつ見ていきましょう。
1.自己分析
「自分は人と関わることが好きで、常にだれかと交渉したり話し合ったりして、ベストの選択肢を選んで行きたい」「人と関わるのは苦手で、1人で作業する方が集中できるし、その方が効率が上がる」
「残業や休日出勤をすることはまったく厭わないが、その分の報酬はしっかり欲しいし、がんばる分評価もしてほしい」「プライベートの時間の方が重要なので、残業や休日出勤がない職場がいい」
「病を持つ人のことを直接的に支えたい」「さまざまなエンターテイメントで、人の心を明るくしたい」
などのように、人にはそれぞれ「好み」「考え方」があります。このような自分自身の好みや考え方を追求し、言語化することが第一段階となります。
2. 職業分析
「人と関わることが前提となる営業職」「一人でコツコツ作業することが多い研究職」
「時間が読み切れず、残業が多いディレクター業」「基本的に残業がほぼ発生しない受付業務」
「人の健康や福祉に直接携わる医療系や看護・介護系」「人の『楽しい』を作るエンターテイナー業」
などのように、それぞれの職業にはそれぞれの特性があります。職業の特性を把握することで、自分とマッチングしやすい職業を探しやすくなります。
このため、「自分自身への理解」の段階が終わったら、公平な視点で「職業の特性を理解する段階」に進みます。
3.1と2を合わせて考えて、自分にぴったりの職業を選択すること
1と2が分かれば、それを元に、自分に合った職業を選択しやすくなります。このときはあくまで合理的に考えて、適切な選択肢を選んで行くことが必要になります。
もちろん、「きちんと分析をしたのちに就職したが、想像と違った」などのような状況に陥る可能性はあります。しかしそれでも、1と2を経て、3でしっかり合理的に考えたうえで行動することで、マッチング不備が起きるリスクを下げることはできます。
特定因子理論「7つの段階」とは
また、フランク・パーソンズは、上記の3つの要素を支援するために、下記の7つの段階を経ると良い、としています。
1.個人資料の記述
就業に必要な個人の情報を記録します。例えば、これまでの就業経験や持っているスキル、価値観や特技、学習経験など、就業にあたって必要となりえる情報を記録します。
2. 自己分析
「自分自身のこと」は、意外と自分には見えていないものです。そのため、自己分析を行う際は、専門のカウンセラーの力を借りると良いとされています。
3. 選択と意思決定
1と2の段階ですでに、「決定」が行われることもあります。なお、下記からでもカウンセラーの力を借りることはありますが、常に意思を決定するのは「本人」です。そのためフランク・パーソンズは、カウンセラーに対しては、「重要なのは本人の決定であり、カウンセラーの決定ではない」としています。
4. カウンセラーによる分析
本人が下した結論が、カウンセラーの目から見て、本人が望むものと合致しているか、妥当なものであるか、また整合性が取れているものであるかの分析が行われます。
5. 職業についての概観と展望
カウンセラーより、本人が選んだ仕事の特性や、どういうスキルが必要か、何を学べばいいかといった支援を行います。
6. 推論とアドバイス
カウンセラーの論理的な思考や知識に基づいたアドバイスを行います。
7. 選択した職業への適合
カウンセラーは、本人が選んだ仕事に適合していくための方法や、今回はどのようにして意思を決定していったかの振り返りの支援をします。
この説がもたらすさまざまなメリットについて
さて、この特性因子理論ですが、この特性因子理論を実践~成功させた場合、雇用する側にとっても雇用される側にとってもメリットが大きいといえます。
ここからは、特性因子理論の実践~成功がもたらすメリットについて、雇用する側と雇用される側で分けて解説していきます。
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【雇用する側】適材適所で活躍させられる
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【雇用する側】人材が定着しやすい
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【雇用される側】良い結果を出しやすい
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【雇用される側】ストレスが溜まりにくい
ひとつずつ解説していきます。
【雇用する側】適材適所で活躍させられる
特性因子理論が成功していると、雇用する側はその人物を適材適所で活躍させられます。
人は、自分が向いていると思われる場所はより効率よく動けますし、またモチベーション維持もしやすく、部内・社内全体の生産性が向上が期待できます。
実際に、「苦手な職場環境・仕事内容のときの場合は、部内で一番『できない人材』だったが、適材適所の職場に配属されたらいきなり『できる人材』に変化した」というケースもあります。
【雇用する側】人材が定着しやすい
「自分にとって働きやすい職場環境である」「自分の能力を発揮しやすい状況である」という場合、人はえてして周りからの評価も高くなります。そして評価が高くなれば、当然モチベーションも維持しやすくなり、働き甲斐も見出しやすくなります。
「もっともっとうまくできるようにしよう」「さらに効率の良い働き方を模索しよう」と考えるようになりますし、そのような人は「自分を理解してくれる職場」で長く働き続けたいと考えるようになります。
この結果、人材が定着しやすくなります。雇用する側は、「新しい人材を雇い入れて、新しい人材を育ててゆく」というコストを掛けずに済むようになるので、結果的にプラスは非常に大きいといえるでしょう。場合によっては、会社の業績そのものの向上にもつながるかもしれません。
【雇用される側】良い結果を出しやすい
上でも軽く触れましたが、人は「適材適所」「適性のある仕事」の方がテキパキと片付けられるものです。また、同じ時間をかけていても、「向かない仕事」をしているときに比べて、「適性のある仕事」をしているときの方が、より大きな結果を出しやすくなります。
「仕事の進捗が滞っている」「仕事がなかなか進まない」「失敗が多く、自分自身を嫌いになりそうだ」という状況に陥ることが少なく、長時間の残業を避けられたり、良い評価につながりやすくなります。
【雇用される側】非常にストレスが溜まりにくい
「自分が活躍できる場所」で、「人に自分の成果を認められながら」、「快適な労働条件で」働けることは、人のストレスを大きく軽減します。
ストレスのない職場で働けることで、より良い提案を出しやすくなりますし、体も壊しにくくなるでしょう。また仕事自体に魅力を感じることができるようになるため、より高度な資格の取得意欲もわいてくるかもしれません。
このように、特性因子理論の実践~成功は、企業側にとっても雇用される側にとっても大きなメリットがあるのです。
まとめ
随分昔に確立した「特性因子理論」の考え方ですが、それは2023年の段階でもまったく色あせることはありません。
企業にとっても個人にとってもメリットが大きいこの理論の実践~成功を、ぜひ目指してみてください。
Q&A
その結果、若い人たちはコロコロと転職をし、技術を身に着けることができなかったのです。そのような状況を避けるために、「転職を必要としない職探し」を助ける概念として特性因子理論が生まれました。
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