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キャリア - 2024.10.09更新 / 2022.12.19公開
【職場を変える!】ハーズバーグの二要因理論を解説
近年、人手不足の対応として、従業員の職場定着や一人ひとりの生産性向上に取り組む企業が増えています。その中で、従業員の仕事に対する満足度を向上することが重要視されていますが、そもそも、仕事への満足感や不満にはどういったことが影響するのでしょうか。
このページでは、フレデリック・ハーズバーグが提唱した「二要因理論(動機付け・衛生理論)」をもとに、仕事に満足する要因、不満を持つ要因を解説します。職場での課題発見・解決の具体例もご紹介します。
ハーズバーグの二要因理論 ── 動機づけ・衛生要因
二要因理論とは
「二要因理論」とは、アメリカの心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した、仕事へのモチベーションに関する理論です
この理論が提唱された19世紀は、産業化がめまぐるしく進んだ時代でした。効率が求められる中で、個々の生産性を高めることが重要になったのです。
個々の生産性は、「働きたい」、「働きたくない」といったモチベーションが大きく影響します。そのため、ハーズバーグは働く人にとって何がモチベーションとなるのかの研究を始め、結果として導かれたのが「二要因理論」です。
この理論では、仕事へ満足する要因、不満を抱く要因を、「動機づけ要因」と「衛生要因」に分けて考えます。
「欲求」に焦点を当てたマズロー
ハーズバーグと並んで紹介されることが多い人物に、「欲求」に焦点を当てた研究を行ったマズローがいます。マズローの理論は欲求を5段階に分けて論じており、「欲求5段階説」と呼ばれています。
マズローは人間の普遍的な欲求を、低次なもの、例えば、「何か食べたい」・「寝たい」という生理的な欲求から、より高次なもの、例えば「人に認められたい」・「自己実現」したいというものへ移行していくものとしました。
ハーズバーグは仕事に関するモチベーションに絞り、満足と不満という反対方向へ向かう要因に大別した点が特徴的といえます。
【徹底解説】キャリア形成に活かす「マズローの欲求段階説」 | リカレントcounselor |
動機づけ要因とは
動機づけ要因は、満足につながる要因です。具体的には、達成、承認、仕事そのもののやりがい、責任、昇進などです。
動機付け要因が満たされていることで、「仕事を通してスキルアップしたい」、「目標達成のために努力したい」というモチベーションが高まるとされています。
衛生要因とは
衛生要因とは、不満を引き起こす要因です。具体的には、対人関係、仕事環境、会社の方針、監督者の行動などです。
衛生要因が満たされていないと、「今の職場では働きたくないから退職したい」、「別の会社に転職したい」、「積極的に働きたくない」といった気持ちを引き起こす可能性があります。
動機づけ要因と衛生要因の関係
動機づけ要因と衛生要因の両方が満たされていることは、従業員にとって重要です。動機づけ要因だけが満たされている場合を考えてみましょう。
達成感のある仕事、そして働きが認められていると感じる状況、能力にふさわしい責任あるポジション。こういった状態であれば、仕事自体へのモチベーションは保たれるでしょう。
両方が満たされることでモチベーションが高まる
動機づけ要因が満たされていても、衛生要因が満たされていなければ、職場に不満がある状態です。例えば、仕事に見合った額の給与が支給されない、人間関係に問題があるといった状態では、仕事自体に満足感を得られる瞬間はあっても、大きな不満を抱えてしまうでしょう。
反対の場合も考えてみましょう。衛生要因だけが満たされている場合、不満は解消されている状態ですが、働きがいや達成感は満たされていません。
そのため、従業員は不満がないだけで、十分な満足感が得られません。高いモチベーションも期待できません。動機づけ要因、衛生要因、両方が満たされることでモチベーションが高まり、満足度が向上するのです。
ハーズバーグの二要因理論を活用しよう!
ハーズバーグの二要因理論は、職場で起きる問題解決の糸口になります。働く個人として、同僚や上司と接する際、部下と接する際、さまざまな場面で有効です。ここでは主に、マネジメントの視点を中心に、実践方法をご紹介していきます。
動機づけ要因を見直してみよう
先に、動機づけ要因を5つ紹介しました。それぞれに分けて考えてみましょう。
達成
達成するため、達成感を得るためには、適切な目標が必要です。従業員それぞれに合った内容・量の仕事が配分されているでしょうか。負担が大き過ぎる場合、従業員はうまく仕事をこなせず、不満につながります。個々の従業員の考え方、受け止め方を共有することが重要です。上司と部下が積極的に対話できる場面を設けることで改善できます。
承認
従業員個々の働きが見えやすい環境になっているでしょうか。頑張っているのに評価されない、そういった不満を抱えている場合があります。また、上司としては評価しているつもりだけれど伝わっていないという可能性もあります。評価面談や給与への反映だけではなく、積極的に承認する、称賛する文化が重要です。
仕事そのもの
従業員がやりたいこと、仕事を通して実現したいことを理解することは重要です。周囲が適職だと思って任せた業務が、モチベーション低下につながってしまっている可能性があります。スキルが高い従業員ほど、業務がこなせてしまうため抱え込む場合もあります。
また、仕事が簡単過ぎる、少なすぎる場合も、達成感を得られずモチベーションが低下することも考えられます。現在の仕事そのものに対してどう考えているか、共有することが重要です。スキルアップすることによって、次は別の仕事がしたいと、考えも変わっていくはずです。定期的な話し合いが必要です。
責任
能力が高まるごとに責任範囲も拡大していきますが、これだけのことを任せてもらえているという満足感にもつながります。これは昇進・昇格などを通して管理職になるということだけでなくチームのリーダーを任せる、新しい企画に挑戦してもらうなど、さまざまなサイズ感で実施できます。
昇進
昇進は企業ごとの決まりがあり、個々では解決が難しい問題ではあります。些細なことではありますが、組織内で適切な評価を行い、報告することが重要になってきます。
衛生要因を見直してみよう
衛生要因の解決は、部署全体、会社全体で取り組まなければいけないものも多くあります。先に説明したように、会社の政策、経営、監督、給与などが要素になってくるからです。また、対人関係も重要なことです。従業員の不満をすくい上げられる体制であることはとても重要です。経営・マネジメント側には伝わっていないものも多くあります。
従業員の不満を明確に洗い出し、明らかに整備されていないことは、重要度に合わせて取り掛かりましょう。他の企業の良い取り組みに関心を持ち、自社の従業員ではどうか考えることも大事です。
デメリットもある? 二要因理論を用いる際の注意点
二要因理論を用いる際には注意点もあります。
個人の価値観は異なるため、何に満足し不満を持つかは一律ではありません。これは、従業員が抱える不満の内容や満足の基準がそれぞれ異なることを意味します。したがって、二要因理論が適用可能な状態かどうかを確認しながら進めることが重要です。
職場の問題解決に有効な二要因理論の活用
職場の問題解決において、二要因理論は非常に有効です。衛生要因を見直すことで、従業員の不満を軽減し、全体の職務満足度を向上させることが可能です。
従業員の意見を取り入れる体制が整えば、経営陣と従業員とのコミュニケーションが促進され、より良い職場環境が構築されます。これにより、従業員のエンゲージメントが高まり、組織全体のパフォーマンスも向上が期待できます。
従業員の満足度向上は、企業の成長に寄与するため、積極的な取り組みが求められます。従業員のキャリア支援をはじめ、従業員と企業間の価値観のすり合わせや、企業自体が持つ課題解決に向けた提案を行う、企業内外のキャリアコンサルタントを活用することも大変効果的です。
キャリアコンサルティングでみるハーズバーグの二要因理論の具体例
それでは、ハーズバーグの二要因理論の具体例を、キャリアコンサルティングを受けた30代のAさんを例にしてみてきましょう。
Aさんは、長年同じ職場で働いてきましたが、最近は仕事に対するモチベーションが低下していると感じています。職場環境や仕事の内容に満足しているものの、昇進や報酬に関する不満が募り、キャリアコンサルティングを受けてみようと思いました。
二要因理論の適用
動機付け要因
達成感
Aさんは、自身のスキルを活かせるプロジェクトを任された際、やりがいを感じています。しかし、最近は新しい挑戦が少なく、成長の実感が薄れていました。
責任感
Aさんは責任ある仕事を任されることを望んでおり、その機会が提供されないことが不満の一因となっています。
衛生要因
職場環境
Aさんは職場の人間関係や物理的な環境には満足していますが、昇進の機会がないことが不満です。
給与
現在の給与水準は適切だと感じていますが、業務量に対して報酬が見合わないと感じていました。
キャリアコンサルティングのプロセス
キャリアコンサルタントは、Aさんの抱える問題を洗い出し、以下のようなアクションプランを提案しました。
動機付け要因の強化
-
定期的な振り返りと目標設定を行い、自身の成長を実感できるようにする。
-
定期的なフィードバックの機会を設ける
1on1など取り入れ、フィードバックや目標の振り返りができる機会を作ることで、新しい業務などに挑戦しやすくなります。
衛生要因の改善にむけて
-
昇進のためのスキルアップや資格取得を目指す具体的なプランを策定
-
現在の業務の見直しを行い、業務量に見合った報酬の交渉を行う
上記の改善策が通ればAさんの衛生要因は満たされ、モチベーションアップにつながります。
具体的な成果
数か月後、Aさんはキャリアコンサルティングで得た知識をもとに職場環境を改善し、昇進試験に向けた準備を進めました。
さらに、チーム内でのプロジェクトリーダーを引き受けることで新たな達成感を得られました。結果として、職場での満足度が向上し、以前よりも積極的に仕事に取り組む姿勢が見られるようになりました。
このように、キャリアコンサルタントとのキャリアコンサルティングによって、Aさんは動機づけ要因と衛生要因が満たされる結果となりました。
まとめ
このページでは、ハーズバーグの「二要因理論(動機付け・衛生理論)」を通して、仕事への満足・不満要因について解説してきました。働き方や職場環境の改善は、さまざまな理論や事例をもとに判断し、取り組んでいきましょう。
今回取り上げたハーズバーグの二要因理論には注意点もありますが、それは他の理論についても同様のことがいえます。さまざまな角度から状況を見極め、場面にあった課題の解決法を考えることが重要です。
Q&A
動機付け要因は、成長や自己実現に対する欲求につながるとされています。仕事を通してスキルアップしたい、目標達成のために努力したいという気持ちを引き起こす可能性があります。
衛生要因は、不快さを回避する欲求につながります。今の職場では働きたくないから退職したい、別の会社に転職したい、積極的に働きたくないといった気持ちを引き起こす可能性があります。
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