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キャリア - 2024.11.14更新 / 2023.09.25公開

ホリゾンタル・リーダーシップとは? 上下関係ではない協力関係

一人のリーダーが指示を出してチームを引っ張っていくのが「リーダーシップ」であり、縦の構造をイメージする方が多いと思います。

「ホリゾンタル・リーダーシップ」は、横のつながりを重視する新しいリーダーシップで、時代背景からも必要とされているスキルです。

ホリゾンタル・リーダーシップとは何か

「ホリゾンタル」(horizontal)は、「水平」を意味する言葉です。

「ホリゾンタル・リーダーシップ」は、水平方向に働きかけるリーダーシップ、つまり “上下関係” といった縦のつながりよりも、 “協力関係” という横のつながりを重視する新しいリーダーシップを指します。

縦つながり | 上下関係

組織での縦のつながりには、上司と部下といった階層的な組織体系による上下関係が挙げられます。

上下関係によるリーダーシップは、リーダーとなる人の力量や立場、権力のもと、部下やチームに指示が出され、組織を引っ張っていくというものです。

横のつながり | 協力関係

組織での横のつながりには、役職や立場、業務を越えた協力関係が挙げられます。

横のつながりを重視するホリゾンタル・リーダーシップは、リーダーと部下やチームのメンバー、さらには他部署などがフラットな協力関係になります。そのためリーダーには、考えを尊重し共感する姿勢、コミュニケーション能力、様々な意見をまとめる論理的な思考能力が求められます。

ホリゾンタル・リーダーシップ誕生の経緯

そもそもリーダーシップという概念は、20世紀初め、アメリカで体系化が進んだとされています。

そこからしばらく、「リーダーシップ」とは、リーダーの豊富な経験やそこからくる力量などが軸となり、トップダウンで指揮がとられるというものでした。

しかし近年、グローバル化の加速といった様々な変化が生じ、リーダーの過去の経験やリーダーひとりの力量だけでは組織を維持・発展することが難しくなってきました。そこで注目されたのが、上下ではなく横のつながりに目を向けるホリゾンタル・リーダーシップだったのです。

ホリゾンタル・リーダーシップの必要性

ホリゾンタル・リーダーシップが注目される背景

ホリゾンタル・リーダーシップは、近年のあらゆる社会的な変化へ対応するために注目されるようになりました。具体的にどのようなことが影響しているのか見ていきます。

グローバル競争の激化

インターネットといった情報通信技術の発達により、どの分野も市場が世界規模に広がり、競合相手も増加しています。

激しいグローバル競争の中で勝ち抜くためには、独自の強みを発揮できる組織力が重要になってきます。固定の概念や業界・分野、規模にとらわれない発想を持ち、イノベーションが起きやすい環境が必要となっているのです。

そのため、横との協力関係を重要視するホリゾンタル・リーダーシップが注目されるようになりました。

働き方の多様化

労働人口の減少は、特に日本では深刻な問題となっています。柔軟な働き方を認めることで、これまで様々な事情から働く機会が限られていた人材を働き手として迎えることができます。

また、個々に合った働き方は、モチベーションと生産性を高めることにもつながります。

ホリゾンタル・リーダーシップをとることで、立場や働き方、価値観が異なる人同士もお互いを認め合い、各々が働きやすい文化を醸成しやすくなります。

VUCA時代への対応

変化が激しく先行きが不透明な時代を表した「VUCA(ブーカ)時代」。

前述のような変化以外にも、今後予測のつかないことが起こる可能性が高まっています。

このような時代に組織に求められるのは、変化が訪れたときに対応する力です。これまでの枠組みを越えて、目指すべき方向性を定め、行動に移していける、ホリゾンタル・リーダーシップをとれる人材を増やしていく必要があります。

VUCAについてはこちらの記事で解説しています。
 

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VUCA時代でも迷わないキャリア戦略とは?個人に与える具体的な影響も解説 | リカレントcounselor

 

ホリゾンタル・リーダーシップのメリット

ホリゾンタル・リーダーシップにはどのようなメリット・効果が期待されているのかご紹介します。

多様な考え方や価値観を反映する

組織内の横のつながりが強くなることで、幅広い価値観や考え方が共有され、受け入れられやすくなります。その結果、個々が意見を言いやすく、新しいアイデアが生まれやすくなると言えます。

また、横のつながりを重視する文化は、時には組織を越えた取り組み、コラボレーションとなることもあるでしょう。

組織の意思決定をスピーディーにする

縦のつながりを重視するトップダウン型の組織では、各段階の責任者の決裁が必要なため、意思決定までに時間を要する場合があります。

ホリゾンタル・リーダーシップでは、組織の各チームで個々が自立し、責任を持って業務に当たります。重要な判断が求められる場面ではリーダーが責任者として決裁を行いますが、チームでのコミュニケ―ションがとれているため、トップダウン型よりもスムーズに進む傾向があります。

ホリゾンタル・リーダーシップのデメリットと注意点

ホリゾンタル・リーダーシップは多くの場面でメリットを発揮しますが、チームの状況や誤った捉え方により、組織にとってデメリットになることも考えられます。

力のあるリーダーが牽引する方が向いている場もある

専門性の高い職種や、磨いてきた技術が重視されるチームなどでは、横の力に期待するホリゾンタル・リーダーシップよりも、縦・上下の力で引き上げるリーダーが向いている場合もあります。

判断や決断を鈍らせる場合がある

横のつながりを重視し、傾聴・共感するスタイルばかりに気を取られると、組織全体にメリットのある決断ができない可能性があります。

ホリゾンタル・リーダーシップは、個々を尊重し協力しながら、結果的に組織全体に利益をもたらすものです。リーダーになる人は、その本質を見失わないよう注意して取り組むことが必要です。

ホリゾンタル・リーダーシップに必要なスキル

上下や業界・業種を問わないコミュニケーション力

横のつながりには、チームのメンバー、他部署、他部門など、様々なケースがあります。そういった人たちと協力関係を築くにはコミュニケーション力が非常に重要です。

また、個々の意見を尊重しながら、チームとしての方向性を定める必要がありますが、皆が同じ意見とは限りません。そういった時も、日ごろからコミュニケーションをとり、良好な関係を築いておくことで、チーム内の雰囲気を保ちながら適切な判断をすることができるでしょう。

「共感力」や「好奇心」

様々な立場の人と協力関係を築くために、幅広いスキル・価値観を持つ人を理解する共感の姿勢、あらゆる事柄に広く関心を持つ好奇心が重要です。これにより、互いの信頼が生まれるだけでなく、意見を言いやすい環境がつくられます。

また、話を聞き出す力、傾聴の姿勢も重要で、業務の話はもちろん、ときにはチームのメンバーの悩みを聞いたり、フォローをしたり、といったことも必要になってきます。 

現場を調整する力

様々な人材が活躍できるよう環境を調整するスキルが必要です。多様な人材が活躍できるよう配慮し、それぞれの能力を見定めた業務フローなどを整備する力が求められます。

ホリゾンタル・リーダーシップで成功した事例

「偉い人」がいない会社を目指した星野リゾート

観光業を手掛ける星野リゾートでは、トップダウンではなくスタッフが自立する組織づくりを行っています。

組織が決断し動くスタイルではなく、リーダーを始めとしたチームが意見を出し、実行に移すスタイルを目指してきたと言います。

縦の関係に依存しないので、勤続年数やポジションに関係なく誰でもフラットに意見・アイデアを出す文化が生まれ、組織を動かす大きな取り組みにつながっています。

星野リゾート代表の星野佳路氏は、優れたリーダーについて、いわゆる『優秀な人』よりも、チームをうまくまとめ、フラットな組織でスタッフの力をフレキシブルに活用できる人と答えています。

ホリゾンタル・リーダーシップ導入企業でのキャリアコンサルタントの役割

ここまでみてきたように、ホリゾンタル・リーダーシップは伝統的な上下の組織構造ではなく、横のつながりを意識してフラットな協力関係を構築していきます。

ホリゾンタル・リーダーシップのようなアプローチでは、チームの中の従業員がどのようなキャリア形成をしていくかも非常に重要なポイントであるといえるでしょう。

ホリゾンタル・リーダーシップを導入している企業では、従業員一人ひとりが知識や経験、スキルを生かしてチーム全体の目標達成に貢献していくために、サポートをしていくキャリアコンサルタントが重要であると考える傾向が強くなってきています。

キャリアの悩みをサポートするキャリアコンサルタントの重要性

ホリゾンタル・リーダーシップを導入する企業での、キャリアコンサルタントの役割をみていきましょう。

自己成長のサポート

ホリゾンタル・リーダーシップでは、自己成長が非常に重視されます。キャリアコンサルタントは従業員のキャリア目標を明確にし、それに向けて必要なスキルや経験を身につけるサポートや、従業員が自己成長を達成するための計画を立て、その実現に向けての指導を行います。

チーム力の促進

キャリアコンサルタントは、チーム内での円滑なコミュニケーション、問題解決能力、チームワークの向上、そして全体のパフォーマンス向上のためのサポートを行っていきます。

ホリゾンタル・リーダーシップを導入している企業では、従業員それぞれが意思決定や責任を共有します。このような状況下で、キャリアコンサルタントは従業員が仕事に対するモチベーションを維持し、パフォーマンスを向上させるための戦略を共同で開発し、支援する役割を果たします。

キャリアコンサルタントの存在は、従業員のキャリア形成において不可欠であり、企業の成功に向けた重要な要素となっているのです。

まとめ

ホリゾンタル・リーダーシップは、多様な人材の採用や多様な働き方の導入などを進めるにあたって、これからの時代に求められるスキルのひとつといえるでしょう。

また、キャリアコンサルタントとして社内で活動するときだけでなく、独立してフリーのキャリアコンサルタントとして活動する場合も、様々な人と協力関係を結んで活動の幅を広げるために必要なスキルだといえるかもしれません。

Q&A

ホリゾンタル・リーダーシップとは何ですか?
水平方向に働きかけるリーダーシップ、つまり上下関係といった縦のつながりよりも、協力関係という横のつながりを重視する新しいリーダーシップを指します。
ホリゾンタル・リーダーシップのメリットは何ですか?
トップダウンといったこれまでの縦のリーダーシップではなく、メンバーをフラットにし、コミュニケーションを重要とするリーダーシップであるため、多様な考え方や価値観を業務や組織に反映しやすくなる、組織の意思決定をスピーディーにする、といったメリットがあります。
ホリゾンタル・リーダーシップの注意点は?
本質を見失わないよう注意して取り組むことが必要です。
ホリゾンタル・リーダーシップに必要なスキルは何ですか?
上下関係や業界・業種を問わないコミュニケーション力、共感力や好奇心、傾聴力、現場を調整する力などがあります。

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