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キャリア - 2024.09.23更新 / 2024.05.31公開
インクルーシブ・リーダーシップはなぜ必要? 意味やメリット・デメリットを解説
「インクルーシブ」や「インクルージョン」という言葉を、よく耳にするようになりました。
特にビジネスの世界では「インクルーシブ・リーダーシップ」という言葉が注目を集めています。
このページではインクルーシブとは何か、インクルーシブ・リーダーシップの必要性とメリット・デメリット、具体例を解説します。
インクルーシブとは何か
インクルーシブとは
まずは「インクルーシブ」という言葉について説明します。
「インクルーシブ(inclusive )」とは、「包括的」という意味を持つ形容詞です。
名詞形にすると「インクルージョン(inclusion)」となり、「包含」や「包摂」という意味になります。
インクルージョンもインクルーシブも多様性を尊重するために重要ですが、インクルーシブは「全体的なアプローチ」というニュアンスで使用される事が多いようです。
また、「インクルーシブ」という言葉は、近年になって頻繁に使われるようになっています。特に、社会や組織の中で個人が尊重され活躍できる環境を目指すために用いられており、「インクルーシブ・リーダーシップ」もその1つです。
インクルーシブ・リーダーシップとは
「インクルーシブ・リーダーシップ」は、社会や組織の中の多様な個を尊重し、個々の力を発揮させるリーダーシップのあり方です。個人が意見を出しやすく、組織の成長に反映させやすい環境づくりも担います。
インクルーシブなリーダーとは
それでは、インクルーシブなリーダーとは具体的にどういった人物なのでしょうか。次の6つの特徴を紹介します。
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目に見えるコミットメント
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謙虚さ
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バイアスへの認識
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他者への好奇心
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文化的知性
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効果的なチームワーク
1.目に見えるコミットメント
多様性への本気の取り組みを明言し、現状に疑問を投げかけ、他者への説明責任を果たし、多様性と包摂を自分の優先課題としている。
2.謙虚さ
自分の能力に関して謙虚であり、過ちを認め、部下に貢献の余地をつくる。
バイアスへの認識
個人には盲点があること、そしてシステムには欠陥があることを認識し、実力主義を徹底するために尽力している。
他者への好奇心
他者にオープンな姿勢と強い好奇心を示し、人の言葉に是非を問わずに耳を傾け、共感を持って周囲の人を理解しようと努めている。
文化的知性
他者の文化に配慮し、必要に応じて適応している。
効果的なチームワーク
部下に権限を持たせ、思考の多様性と心理的安全性に気を配り、チームの結束に重点を置いている。
参考「Why Inclusive Leaders Are Good for Organizations, and How to Become One」
これらは、インクルーシブなリーダーか否か、判断する際の指標になります。
ダイバーシティとインクルージョンの関係性
参考に、近年よく用いられる「ダイバーシティ」との関係についても説明します。
「ダイバーシティ(Diversity)」とは、直訳すると「多様性」という意味です。人種や性別、信仰、価値観など、異なる属性を持った人々が共存している状態を示します。
ダイバーシティとインクルージョンは、「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」と合わせて用いられることもあります。多様な人材が単に集まるだけでなく、互いを包括して尊重し、共に成長していくという意味で用いられます。
インクルーシブ・リーダーシップの必要性
先に述べた通り、インクルーシブ・リーダーシップは、社会や組織の中の多様な個を尊重し、個々の力を発揮させるものとして期待されています。
そもそも、なぜ個の尊重が重視されるのでしょうか。肝は「組織力の向上」です。特に日本の企業では以下が大きな課題となっています。
日本の企業における課題
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少子高齢化による労働人口不足
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グローバル競争の激化による生産性向上の必要性
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働き方の多様化への対応
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VUCA時代への対応
それぞれ見ていきます。
少子高齢化による労働人口不足
日本では、少子高齢化と人口減少が深刻な問題となっています。さらなる働き手の減少も見込まれており、各企業で人材を確保することがより困難になっていくとされています。
こういった状況において、いかに多くの人を労働市場に参加させるかが重要になっており、多様な人材を受け入れ、活躍させる必要性に迫られています。
グローバル競争の激化による生産性向上の必要性
インターネットなど、近年の情報通信技術の発達により市場は世界に広がっています。それにより、競合相手が増加し、強みを発揮できる組織力が重要になっているのです。
人材が不足している状況の中で組織力を向上させるために、一人当たりの生産性を高めることが求められています。
働き方の多様化への対応
柔軟な働き方を認めることで、労働力として多様な人材が確保できます。また、個々にあった働き方は、モチベーションと生産性を高めることにもつながります。
先の、労働人材不足の問題や、生産性向上に直結する問題です。組織・マネジメント側の整備や、文化醸成が必要になってきます。
VUCA時代への対応
現代は、様々な変化が起こる可能性が高く、不安定で先が見えづらい社会とされています。
いかに変化に対応するか、安定性を保てるかどうかは、これからの組織に重要なことです。変化に強い組織であるためには、多様な人材と能力を活躍させる力が必要になってきます。
多様な人材が活躍できる環境は、これまでになかったアイディアの創出、イノベーションにつながりやすいとされています。
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課題への対応として必要とされるインクルーシブ・リーダーシップ
このように、現代の企業は人材不足、市場の拡大による企業間競争の激化という厳しい環境におかれています。さらに、近年は社会情勢や自然災害など、予測のつかない変化が起こる可能性が高いとされています。
そのため、個々人が持つ特性に合った能力を活かし、さらに延ばすことによって、これまで以上に組織力を向上させることが必要となっています。
個々の力を発揮させるインクルーシブ・リーダーシップは、こういった現代に合ったリーダーシップだといえるでしょう。
インクルーシブ・リーダーシップのメリット
次に、インクルーシブ・リーダーシップのメリットについて紹介します。
多様な考え方や価値観を反映する
多様な考え方や価値観が反映されることで、これまでになかったアイディアの創出、組織の中でイノベーションが起こりやすくなります。
個人や組織の生産性を高める
多様な人材を受け入れ、それぞれの強みを発揮させることで、生産性の向上につながります。個々が「受け入れてもらえている」「認められている」という実感から、働きやすさや働きがいを得やすくなり、業務に対して積極的になる効果も期待できます。
離職・転職を防ぐ
働きやすさや働きがいといった、個々の満足度を高めるマネジメントを行うことで、離職・転職を防ぐ効果が期待できます。人材確保・定着の面からも重要なアプローチであるといえます。
インクルーシブ・リーダーシップの注意点
判断や決断を鈍らせる場合がある
個の意見を尊重することで、従業員同士の意見が対立するなど、チームや組織全体の意見がまとまらない可能性があります。
力のあるリーダーが牽引する方が向いている場もある
専門性の高い職種や、磨いてきた技術が重視されるチームの場合、スキルでチームを引き上げられるリーダーかどうかが重要ということもあります。
インクルーシブの観点はこれからの時代になくてはならないものです。チームや組織の状態や目標に合わせた取り組みにすることが重要です。
【具体事例】浸透する「インクルーシブ」の視点
「インクルーシブ・リーダーシップ」をはじめ、「インクルーシブ教育」など、様々な領域にインクルーシブ(インクルージョン)の視点が浸透しています。
この章では、具体例をご紹介します。
シリコンバレーも重視するインクルーシブ・リーダーシップ
有名IT企業やスタートアップ企業が拠点を置く、ビジネス界の最先端とも呼ばれるシリコンバレーでも、インクルージョンやインクルーシブ・リーダーシップの取り組みは重要視されています。
シリコンバレーに本社を置くAppleのCEOであるティム・クック氏は「多様な集団が最高の製品を生む」と述べ、インクルージョンがイノベーションに貢献することを強調しています。
多様な人材を組織に呼び込むだけでなく、それぞれが「受け入れられている」と感じる環境であることが重要であるといえるでしょう。
「自分の視点や考え方が取り入れられている」と感じられるかどうかがインクルーシブであるかの判断基準であり、新しいアイディア創出につながる環境づくりに大切な観点であるとされています。
文部科学省主体で取り組む「インクルーシブ教育」
「インクルーシブ教育」とは、2006年の国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」で示されたもので、「子どもたちの多様性を尊重し、障害のあるなしなどにかかわらず、すべての子どもを包含する教育方法」のことです。
これにより、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様なあり方を相互に認め合える共生社会の形成を目指します。
世界各国で取り組みが進んでいますが、日本では文部科学省が主体となり「インクルーシブ教育システム」の構築のための取り組みを行っています。
インクルーシブ教育によって、子ども時代から自分と他者の違いを知る機会を持ち、互いの特性を尊重し、支え合う心を育むことができます。
参考 文部科学省 「共生社会の形成に向けて」
まとめ
このページでは、インクルーシブとは何か、インクルーシブ・リーダーシップの必要性とメリット・デメリット、具体例を解説しました。
個を尊重し活躍させることで組織を高める「インクルーシブ・リーダーシップ」、参考にしていただけますと幸いです。
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