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キャリア - 2024.09.09更新 / 2024.03.14公開

職務特性理論とは?仕事のモチベーションに影響する5つの特性をわかりやすく解説

「やる気を保つこと」は、仕事をしていくうえでもっとも重要なことのうちのひとつです。

ここでは、その「仕事のやる気」と深くかかわる「職務特性理論」を取り上げて、その特徴や内容について解説していきます。

職務特性理論とは

職務特性理論とは、仕事や職務が人のモチベーションにどのように影響しているかを、「スキルの多様性」「タスクの主体性」「タスクの重要性」、そして「自律性」「フィードバック」という5つの特性からみる理論です。

職務特性理論はモチベーション理論のうちのひとつ

人のやる気や動機付けを研究・説明していくものとして、「モチベーション理論」があります。この研究は1950年代から熱心に行われてきましたが、今回ここで取り上げる「職務特性理論」もまた、そのようなモチベーション理論のうちのひとつです。

さて、この「職務特性理論」ですが、これは以下の流れで構成されています。
 

1.

仕事には、主に5つの特性がある

2.

この「5つの特性」は、人のやる気ややりがいを左右する

3.

その5つの特性に対する自己評価が高かったり、核心的な仕事をしていたりする人は、仕事へのモチベーションが高い

4.

また、そのような仕事をしている人は、心理的に良い状態に置かれている

 
ごく簡単に言うのであれば、「人は、自分が楽しくやりがいがあると感じる仕事をしていると、仕事に対するモチベーションが保ちやすく、精神的にも安定しやすい」ということになります。

この職務特性理論の考え方は、1976年にグレッグ・オールダムとリチャード・ハックマンという心理学者によって導き出されました。

職務特性理論が認められてから50年近くの時間が経とうとしていますが、その考え方は今も生きていて、多くの人に用いられています。

5つの職務特性について

この章では、5つの職務特性について紹介していきます。
 

  1. スキルの多様性

  2. タスクの主体性

  3. タスクの重要性

  4. 自律性

  5. フィードバック

 
それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.スキルの多様性

「スキルの多様性」は「技能多様性」“Skill Variety”とも書かれることもあるものです。

これは、「その仕事が、単調な仕事ではないか」を問う項目です。

人は繰り返し単調な仕事を行うことで、「この仕事は誰にでもできるのではないか」と感じたり、仕事自体に飽きてしまう傾向を持つため、仕事に対するモチベーションが低下すると考えられています。

しかし、仕事内容が資料作成から営業での外回り、細かい作業から会議でのプレゼンなどというように多様性に富んだものであるなら、飽きることなくモチベーションを保ち、仕事をすることができるでしょう。

2.タスクの主体性

「ひとつの仕事の初めから終わりまで、一貫して関わることができる」という状況の場合、人は仕事のやる気を保ちやすくなります。

たとえば仕事の完成までに10段階あったとしましょう。この場合、「そのうちの1だけしか行わない」「3から5の段階までしか行わない」という状況に比べて、「1から10まで、すべて自分で見られる」という状況の方が人は仕事への熱意を持ちやすくなります。自分が行った仕事の結果を、自分で見届けることができるからです。

なおこの「タスクの主体性」は、「タスクのアイデンティティ」「タスクの一貫性」“Task identity”とも呼ばれています。

3.タスクの重要性

自分の仕事が、社会に与える影響が大きければ大きいほど、人は仕事にやりがいを感じることができます。これを、「タスクの重要性」“Task significance”と呼びます。

自分の仕事を「だれでもできる、取るに足らない仕事である」ととらえるか、「会社や社会に大きな影響を与える仕事である」ととらえるかで、仕事に対する取り組み方は異なってきます。

「自分自身が人/会社/社会に求められている」と感じられることはその人の自己肯定感を高めますし、高い自己肯定感を持つ人は仕事に対しても肯定的に向き合えるようになります。

4.自律性

「自律性」は、“Autonomy”の日本語訳です。
これは、「自分自身の裁量で仕事を進められているかどうか」を表すものです。

「上司に言われたことだけしかできない」「自分自身で自分の仕事を判断・実行することは許されない」という状況にある人と、「自分で仕事のやり方を決定したり、対応方法を考えて実行に移したりすることができる」という状況にある人では、後者の方が仕事に対するやる気を保ちやすくなります。

たとえば、「自分自身が営業担当となり、取引先に自由にアポイトメントを取れる。取引先との仕事の進め方も、自分と取引先で決めてもよい。上司に対しては、定期的に進捗・結果の報告だけを行えばよい」などの、ある程度の裁量権を持って仕事を進めることができるケースでは、人は仕事に意欲的に取り組めるようになります。

5.フィードバック

フィードバックは、上司からのレスポンスや評価を意味する場合が一般的ですが、職務特性理論におけるフィードバックは、自らが取り組んだ仕事の成果を確認することを指します。

「自分が行った仕事が、どのようなかたちになったか」を知れることは、職業人にとって大きな喜びとなります。「タスクの主体性」のところでも少し取り上げましたが、「自分がした仕事の結果」が可視化されている場合、人は仕事に対して満足感を抱きやすくなります。

もちろん、人には適正があります。たとえば、「複数の仕事を同時に行わなくてはならない場合には、一つひとつに集中することが難しい」「自由裁量権が大きすぎると、どこから手をつければよいか分からなくなる」という人もいるでしょう。また、その特性上、組織で動くことが大前提になっている職業もあります。

そのため、「職務特性理論に基づいて動けば、100人中100人全員が仕事に対して最高のモチベーションを維持できる」とまではいえません。しかし職務特性理論を理解し、「モチベーションを保ちやすい仕事の方法」を従業員ができるようにすると、会社は発展しやすくなるでしょう。

 

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職務特性と関係する、「3つの心理状態」

上記の5つの職務特性と結び付けて考えるものに、「3つの心理状態」があります。これは、5つの職務特性が満たされた場合にこの「3つの心理状態」が生じ、その結果モチベーションの向上につながるというものです。

これは、下記の3つに分けられます。

ひとつずつ見ていきましょう

1.仕事への有意義感

「スキルの多様性」「タスクの主体性」「タスクの重要性」が満たされて生じるのが「仕事の有意義感」です。

複雑で多様性に富んだ仕事をしていたり、一つの仕事に最初から最後まで携われたり、社会的に重要な仕事をしているという意識を持てたりすると、人は「自分の仕事には意味があるのだ」という有意義感を保てるようになります。

「挑戦し甲斐のある仕事に取り組める」「一貫して仕事に取り組める」「自分の仕事は人の役に立っている」と実感できることは、人が自分の存在意義を確立することに非常に役立ちます。

2.仕事への責任感

「自律性」が満たされて生じるのが「仕事への責任感」です。

自分で自分の仕事をコントロールしたり、自分で行える仕事の範囲が広がったりすると、人はそれによる責任を負う必要も出てきます。

責任を負うことで、意識高く仕事に取り組み、仕事に真摯に向き合う姿勢を育みます。「責任」は必ずしもマイナスに働くものではなく、仕事への誇りを育て、モチベーションにつながります。

3.仕事の知識

「フィードバック」が満たされて生じるのが「仕事の知識」です。

適切なフィードバックは、仕事の実行者に対して、新しい知識やより深い知識を与える機会となります。

自身の仕事の結果を自分で確認することで、「このような仕事をしたから、このような結果を得られた」という知識が得られ、「自分のしてきた仕事は、このように貢献した」という自己肯定感を持つことができます。

まとめ

職務特性理論とは、「仕事には5つの特性があり、それが仕事のモチベーションに大きく関わっている」とする理論です。

そしてその5つの特性として、「スキルの多様性」「タスクの主体性」「タスクの重要性」「自律性」「フィードバック」があります。

この5つが高い状態であると、人は自分の仕事や存在に意義を見出しやすくなりますし、責任感や誇りを抱けるようになります。また、自分の仕事に対してより深い知識を得られるようにもなります。

Q&A

職務特性理論とは?
職務特性理論とは、仕事や職務が人のモチベーションにどのように影響しているかを、「スキルの多様性」「タスクの主体性」「タスクの重要性」、そして「自律性」「フィードバック」という5つの特性からみる理論です。
5つの職務特性とは?
「スキルの多様性」「タスクの主体性」「タスクの重要性」「自律性」「フィードバック」の5つです。「スキルの多様性」は、単調な仕事ではなく多様なスキルを活かせる仕事か、「タスクの主体性」は、仕事の初めから終わりまで一貫して関われる仕事か、「タスクの重要性」は、社会に与える影響が大きい仕事か、「自律性」は、自分の裁量で進められる仕事か、「フィードバック」は、仕事の結果や成果を確認できる仕事かどうかを指します。
職務特性と関係する、「3つの心理状態」は?
5つの職務特性と結び付けて考えるものには、「仕事へに有意義感」、「仕事への責任感」、「仕事の知識」があります。
職務特性理論を唱えたのは?
職務特性理論は、1976年にグレッグ・オールダムとリチャード・ハックマンという心理学者によって導き出されました。

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