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キャリア - 2024.09.20更新 / 2024.05.28公開
ジョブクラフティングとは? やり方やメリットを解説
仕事のやり方が多様化していき、従業員一人ひとりの指針が考慮されるようになった現在、従業員側にもまた主体性が求められるようになってきています。
そのなかで注目を浴びるようになった考え方のひとつに、「ジョブクラフティング」というものがあります。
ジョブクラフティングとは?
ジョブクラフティングは、従業員一人ひとりが自らの仕事を前向きにとらえて、やりがいを持てるように働きかけていく手法を指します。
仕事は、「ただ上司からの指示に従っていればいい」「退屈な作業を、お金のためだけにこなす」という意識ではなかなかポジティブにとらえられません。
そのため、ジョブクラフティングは、自分自身で工夫をし、仕事の満足度を上げていくことを目的としています。
ジョブ・デザインとジョブクラフティング
ジョブクラフティングの概念が注目され始めたのは、2001年ごろからです。ただこのジョブクラフティングの基礎として、「ジョブ・デザイン」の考え方があることは押さえておきたいポイントです。
ジョブ・デザインとは、「企業側が従業員一人ひとりの仕事を、それぞれにあったかたちでデザインをし、従業員にやる気を持ってもらうための方法」であり、「ジョブクラフティング」とも非常に共通点が多いものです。
ジョブ・デザインとジョブクラフティングの違い
ジョブ・デザインとジョブクラフティングの大きな違いは、ジョブ・デザインは上司などの上層部が主体となって働きかけるものであるのに対して、ジョブクラフティングの場合は従業員一人ひとり、従業員本人(自分自身)を主体としているという点です。
ジョブクラフティングがもたらすメリット
ジョブクラフティングが企業と従業員にもたらすメリットはいくつかあります。
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企業と労働者の関係が深まる
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作業効率やモチベーションがアップする
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従業員自身のやりがいが上昇する
ひとつずつ見ていきましょう。
従業員と企業の関係が深まる
ジョブクラフティングが成功すると、企業と従業員の関係が深まります。
「自分自身にとってやりがいがある仕事をしている人」「自分の仕事に対して適切な自信を持てている人」は、従業員同士で交流を活発に行います。そこで培われた人間関係は、企業を適切で心地よい空間にすることにも役立ちます。
また、ジョブクラフティングの働きかけを行う企業に対して、従業員は信頼感を寄せるようになります。
「自分の仕事でもっと認められたい」「やりがいをもっているこの仕事で、企業に寄与したい」と、仕事を前向きにとらえる従業員の増加も期待できるでしょう。
離職率低下が期待できる
従業員と企業の信頼関係が深まった場合、離職率も下がることが予想されます。
そして離職率が下がれば、自社の業務をより深く理解した人が働き続けてくれるようになるため、効率よく仕事が進められます。
作業効率やモチベーションがアップする
上でも少し取り上げましたが、ジョブクラフティングが成功し、従業員エンゲージメント(従業員の企業に対する信頼度)が高まることで、業務パフォーマンスの向上が期待できます。
従業員エンゲージメントの高まりと業務効率の関連性
たとえば、「1つの会社で10年間、同じ部署で専門的な仕事をしている」という人と、「この間入ってきたばかりで、まだ入社後1か月も経っていない人」では、同じ仕事をしていても仕事の精度・練度が大きく異なります。
従業員エンゲージメントを高めることによって、この「入社10年目で、専門性の高い仕事をしている従業員」の離職を防止し、作業効率を上げていくことができるのです。
コミュニケーションの円滑化とミス削減
ジョブクラフティングによってコミュニケーションが円滑になり、上司と部下、同僚同士の間で情報を積極的に交換することにより、ミスが起きにくくなります。
加えて、もしミスが起きた場合であっても、迅速に報告や共有が行えるため、対策を講じやすくなるでしょう。
主体性がもたらすアイデアの促進
さらに、仕事に主体的に取り組むようになった従業員は、今まで自分のなかで抱えていた「新しいアイデア」を発言することをためらわなくなります。
「どうせ私が話しても、上司は聞く耳を持たないだろう」「たとえ企画を立ち上げても、自分の給料がアップするわけではない」というマイナスの感情にとらわれている状態では、従業員は思いついたアイデアを口にすることができません。
ジョブクラフティングによる「自分自身の仕事への肯定的かつ主体的なプラスの感情」は、従業員本人に対してだけでなく、企業そのものにも変革をもたらしてくれるものなのです。
従業員自身のやりがいが上昇する
現在は、企業がただ利益を上げていればよいという時代ではなくなりつつあるため、従業員や環境に配慮していくことが課題であるといえます。企業を支える要素の一つであるESG投資などを意識した場合、「従業員の満足度」は決して無視できないものです。
ジョブクラフティングを心掛けることで、従業員自身のやりがいが上昇します。これは、すでに上で述べた、熟練の従業員の離職を防止するだけに留まらず、従業員の心身の健康にも関わってくるものです。
ジョブクラフティングは、従業員の健康管理を経営的な視点で考える「健康経営」の観点からも、非常に重要な取り組みであるといえるでしょう。
ジョブクラフティングを実行するための4ステップ
それでは実際にジョブクラフティングを実行するためには、どのようなステップを踏んだらよいのでしょうか。
また、ジョブクラフティングを実行するためには、企業は従業員にどのように働きかけたらよいのでしょうか。
1.現在の仕事を洗い出す
ジョブクラフティングに限らず、すべての作業の工程のファーストステップは「現在抱えているものを言語化すること」だといえます。
自分が現在抱えている仕事を、大きいものから小さいものまで、すべて書き出します。
なおジョブクラフティングの場合は、最終的に、「自らの仕事をポジティブにとらえられるようになること」を目的としますが、ネガティブな要素についても詳細に記していくことで、より現在の仕事にたいする理解が深まるでしょう。
2.自分自身を振り返る
1の作業が終わったら、次は、「自分自身を振り返る」という工程に進みます。
「自分は今までどのような仕事をしてきたか」「どのような成績をあげてきたか」などを書き出すことはもちろん、「そもそも自分はなぜこの仕事をしたいと思ったのか」「今現在、自分にとっての『仕事をする動機』は何か」も見直してみるとよいでしょう。
たとえば、他の従業員と比較しても書類作成の精度が非常に高いという場合は、本人は当たり前にできるスキルと認識しているケースも多いため、自覚しにくい強みであるといえるかもしれません。
そのため、自分の長所や特技、スキルについて、冷静な視点でもって精査していくことがポイントとなります。このときには自分の欠点や苦手な分野も合わせて洗い出しておくと、次のステップに進みやすくなるでしょう。
SWOT分析とは?自己分析やキャリアプランに役立つ方法を徹底解説 | リカレントcounselor |
3.「仕事の捉え直し」を行う
1で洗い出した「自分の抱えている仕事」と、2で求めた「自分自身の振り返り」を掛け合わせて、仕事の捉え直しを行います。
自分自身にとって仕事とはどのような意味を持つのか、自分は会社に対してどのようなかたちで貢献できるのか、自分はなぜその仕事を得意もしくは苦手であると感じているのかを言語化していきます。
なお、苦手な仕事については、「これを行うことでどのようなメリットがあるのか」「この仕事ができるようになったら、どんな利益が得られるのか」も併せて考えていくとよいでしょう。
この「メリット」は、「自分のスキルアップ」などだけではなく、「企業の利益に繋がる」「同じ部署の従業員が仕事をしやすくなる」などの他者を対象としたものであっても構いません。
この際にキャリアコンサルタントが行うキャリアコンサルティングを活用することで、仕事の捉え直しがスムーズに行えるかもしれません。
キャリアコンサルティングについては、こちらの記事で解説をしています。
【1からわかる!】「キャリアコンサルティング」とは? 必要な知識と技能 | リカレントcounselor |
4.見直しと実践
仕事内容の可視化、自分自身の振り返り、仕事の捉え直しが終わったら、最後のステップに進みます。
最後は見直しと実践ですが、どのようにすれば仕事をよりやりやすくなるかを考えて、実際に実行していくステップです。このときには、仕事内容だけではなく、人間関係の見直しを行うことが必要になってくるケースもあるでしょう。
ジョブクラフティングは、書き出し→客観視→捉え直し→実践 の4工程をとります。
自分が苦手もしくは嫌いと感じている仕事や、自分自身の弱みを洗い出すことには、しばしば苦痛が伴います。しかしこの工程は、ジョブクラフティングを実行するために必要なステップであることに留意しておきましょう。
なおジョブクラフティングを行う場合は、素直で冷静で客観的な視点を保ち続けることが重要です。
冷静な視点を持つことは簡単ではありませんが、よりフラットな状態で見直しと実践を行うことで、より効率的にジョブクラフティングに取り組むことができるでしょう。
まとめ
この記事では、従業員が、自分自身の仕事を肯定的に主体的に取り組めるようにするための方法「ジョブクラフティング」について紹介しました。
ジョブクラフティングは従業員本人が主体となって行うものではありますが、企業側が「ジョブクラフティングに関する研修などを実施する」「社内全体でジョブクラフティングに取り組めるようにする」といった環境づくりを行うことも重要といえるでしょう。
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