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キャリア - 2024.10.18更新 / 2023.03.17公開
自己分析ツール「ジョハリの窓」とは?
「自分を知ること」は、自己成長に役立ちます。そのため、現在にいたるまで、さまざまな自己分析方法が生み出されてきました。
今回はその中から「ジョハリの窓」を取り上げ、ジョハリの窓の詳細から、活かし方や実践方法までをわかりやすく解説します。
ジョハリの窓とは
ジョハリの窓とは、自己分析ツールのうちのひとつです。
「自分から見た自分」と「他の人から見た自分」を4つの区分に分けて、自分自身を理解するためのツールだと考えると分かりやすいでしょう。
この「ジョハリの窓」の概念が誕生したのは、今から70年ほども前のことです。1955年に、心理学者のジョセフ・ルフトと、ハリントン・インガムによって組み立てられました。現在でもこのジョハリの窓の概念は、教育やビジネスの分野で活用されているフレームワークであるといえます。
ジョハリの窓の由来
ジョハリの窓という名前は、ジョセフ・ルフトと、ハリントン・インガムに由来し、4つの区分が窓に見えることから、「ジョハリの窓」と呼ばれるようになりました。
詳しくは後述しますが、ジョハリの窓は「自分が知っている」と「他者が知っている」、そして「オープンになっている性質」と「秘められている性質」を掛け合わせて、合計で4つのマスを作ります。
ジョハリの窓、4つの窓について
ここからはより詳しく4つの窓について解説していきます。
ジョハリの窓では、「自分が知っている」「自分が知らない」「他人が知っている」「他人が知らない」と、「オープンになっている性質」と「秘められた性質」を掛け合わせることで、自分を分析できるとしています。
-
開放の窓
-
秘密の窓
-
盲点の窓
-
未知の窓
図に表すと以下のようになります。それぞれみていきましょう。
1.自分が知っている×他人が知っている「開放の窓」
開放の窓/open self
「自分自身でも自覚しており、他人にも知られている自己」のことを「開放の窓」といいます。
4つの中でもっともオープンである「開放の窓」を広げていくことによって、円滑なコミュニケーションが取れるようになり、他者との親密度や信頼感が高まると考えられています。
2.自分が知っている×他人が知らない「秘密の窓」
秘密の窓/hidden self
「自分自身は自覚しているけれど、他人は知らない、知られていない自己」のことを「秘密の窓」といいます。
大人になるに従い、私たちは多くの秘密を抱えて人生を歩んでいきます。それは、すべてをさらけだすことが良いこととは限らないと、成長とともに知っていくからです。
「秘密の窓」の代表例として挙げられるのが、過去の出来事などを理由とするトラウマです。また、ほかの人には話しづらいコンプレックスも、ここに分類されます。これは「開放の窓」と対になるものでもあります。
3.自分が知らない×他人が知っている「盲点の窓」
盲点の窓/blind self
「自分は知らないけれど、ほかの人は知っている自己」のことを「盲点の窓」といいます。
私たちは「自分自身のこと」を100パーセント理解することはできません。自分の抱く自己のイメージが、他者からのそれとはかけ離れていることもよくあります。
例えば、自分が当然と思って何気なく行っていた行為も、他者からすると賞賛に値するものだったり、不思議に思われたりすることがあるでしょう。
当たり前のように「会社では、自分のゴミだけでなく部署内のゴミもまとめて捨てに行く」という行動を取っていたら、それを見た社内の人から「気遣いのできる人」と評価されていた、というケースがこれにあたります。
なおジョハリの窓では基本的にネガティブなワードは用いませんが、マイナス面の指摘を受けることもあるかもしれません。
自分ではまったく自覚していない部分であるため、これは「盲点の窓」と呼ばれます。
4.自分が知らない×他人が知らない「未知の窓」
未知の窓/unknown self
「自分も他人もまだ知らない自己」のことを「未知の窓」といいます。
自分自身で自己を見つめ直したり、ほかの人との関わりのなかでこの未知の窓を広げていくことが、新たな自分を見つけることや、自己成長に繋がります。
以上のジョハリの窓の4つの領域は、だれもが当たり前に持つものです。そのため、どれか1つをまったくのゼロにすることは難しいでしょう。秘密の窓のように、話す相手を選ぶ領域もあるからです。
ただ一般的には、開放の窓を広くしていくとよいとされています。それによってより親密なコミュニケーションが可能となりますし、自分も成長しやすくなるからです。
ジョハリの窓を知ることで得られるメリットとは
ここからは、ジョハリの窓を知ることで得られるメリットについて解説していきます。
ジョハリの窓を知ることで得られるメリットは、以下の通りです。
-
自己分析をすることにより自分の思わぬ長所を知ることができる
-
ミュニケーションに活かせる
-
話し合いを通して信頼関係が生まれる
1つずつ見ていきましょう。
自己分析ができて、自分の思わぬ長所を知ることができる
すでに述べた通り、ジョハリの窓は自己分析のツールのうちのひとつです。
何かの問題を解決したり、成長させるときに重要になってくるのは、「現状の把握」です。これは「自分自身の抱えている問題の解決」「自分自身の成長」であっても変わりありません。
まずは現状の自分の問題点を踏まえたうえで、自分自身の強みを把握することで、より成長しやすくなります。
たとえば「盲点の窓」で、自分の抱えている無自覚な短所を指摘してもらえれば、それを解決するための手立てが打てるでしょう。
自分が思っている自分の強みと、ほかの人が感じている強みが一致していることを「開放の窓」で知ることができれば、よりその強みを伸ばしていくための方法を考えることができるようになると思われます。
このように、「現状を把握し、成長のきっかけを作れること」は、ジョハリの窓を行うことの大きなメリットです。
コミュニケーションに活かせる
ジョハリの窓によって、「自分が知っている自分」と「他者から見られている自分」を知ることができます。
自分の認識と他者の認識の違いに気づくことで、より良いコミュニケーションの取り方や、円滑に物事を進めるにはどうしたらいいか、などを考えるきっかけになります。
話し合いを通して信頼関係が生まれる
ジョハリの窓は、人との話し合いが前提となっているものです。「開放の窓」も「盲点の窓」も、他の人からの評価があって初めて成り立ちます。
そのため、ジョハリの窓を実践することで、おのずと「他者とのコミュニケーションの機会」が生まれます。自分のことを話したり、他者の話を聞くことで、お互いを理解でき、信頼関係を深めることができます。
例えば、同じプロジェクトに参加している従業員同士で信頼関係が生まれれば、より円滑に業務を進めやすくなるというメリットもあるでしょう。
このように、ジョハリの窓の実践には多くのメリットがあります。次の項目では、このジョハリの窓の実践方法について解説していきます。
ジョハリの窓の具体的なやり方について
ジョハリの窓は複数人(4人~10人が1つの目安)を集めて行うことを基本とします。ここからはその手順を紹介していきます。
-
まず、自分自身が思う自分の性質を書き出す
-
次に、ほかの人(Aとする)の性質を紙に書き出す
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2を、Aに渡す
-
同じようにほかの人(Bとする)の性質を紙に書き出す
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4をBに渡す。これを繰り返す。
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全員分が終わると、自分の手元に、自分で書いた紙(1)と、ほかの人からもらった紙がそろう
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自分の書いた性質とほかの人の書いた性質が重なっていた場合、それを「開放の窓」に入れる
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自分は書いているけれども、ほかの人が書いていなかった部分は「秘密の窓」に入れる
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自分は書いていないけれども、ほかの人が書いていた部分は「盲点の窓」に入れる
-
全員分を見せ合う
注意点としては、ほかの人の性質を書く際は、相手のことを考えてネガティブな言い方は避ける必要があります。例えば「仕事はゆっくりだけどミスは少ない」と感じている人には「物事を丁寧に進める」といった言い方が適切です。
また、精神的な負担が心配な人には、無理にやらせない、という配慮も必要です。
相手を尊重しながら円滑なコミュニケーションをとるテクニックとして、アサーションがあります。こちらの記事で詳しく解説していますので是非参考にしてみてください。
アサーショントレーニングとは? 3つの自己表現タイプと具体的な技法 | リカレントcounselor |
なお、ジョハリの窓は自由記載のやり方と、選択肢から選んで行く方法があります。
選択肢から選んで行く場合は、「自分も書いておらず、ほかの人も書いていない」という選択肢も出てくることになりますが、これは「未知の窓」に入れるとよいでしょう。
まとめ
「ジョハリの窓」は、自己分析ツールとして教育や就活、企業の研修などでよく使われています。
「自分が知っている」と「他者が知っている」、「オープンになっている性質」と「秘められている性質」を掛け合わせて4つの窓に分類していくというこの方法は、自分自身でも気づけなかった長所や短所を知るために役立ちます。
このようにジョハリの窓は、社内研修やワークなどで4人〜10人程度で行うことが多いですが、現在では個人で実践できるWebツールも公開されています。所要時間は30分程度ですので、試してみてはいかがでしょうか。
Q&A
ジョハリの窓は、自分では気づけない長所や短所を理解するために使えるツールです。また、コミュニケーションを円滑に行うことを目的として活用することもできます。複数人で行う場合はネガティブな言葉で表現することを避け、相手を尊重した言葉に言い換えることが重要です。
ジョハリの窓は、「自己の開示」「秘密の自分」と向き合い、場合によってはそれを伝えなければならないという工程を挟みます。しかしこれは、人によっては大きなストレスとなりえるでしょう。特に「秘密の窓」の開示は、ためらわれることが多いかと思われます。このため、嫌がっている人を強制的に参加させるようなことは避けるべきです。
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