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キャリア - 2024.09.06更新 / 2023.05.31公開
【解説】ダニエル・レビンソンの発達段階説-人生の四季とは
人間にはいくつかの発達段階があり、その段階では心が安定したり不安定になったりします。これを四季に例えて提唱したのがダニエル・レビンソンです。
この記事では、「ダニエル・レビンソンの発達段階説」について詳しく解説していきます。
ダニエル・レビンソンとは
1920年生まれのダニエル・レビンソンは、カリフォルニア大学バークレー校で社会科学の研究をしていた心理学者です。
レビンソンは生涯を通して発達の研究に力を入れて、成人発達の理論を提唱してきました。そして児童期から老年期にかけて起こる過渡期や「中年の危機」を明らかにし、4つの発達段階に分けた「ライフサイクル」を発表します。
レビンソンは社会心理学や発達心理学の発展に貢献してきた人物です。
ダニエル・レビンソンが提唱したライフサイクル理論
レビンソンはアメリカに住む中年男性にインタビュー調査をし、「人生の発達期は約25年スパンで繰り返され、それぞれの間には移行段階である過渡期がある」としました。
そして、発達段階を次のような4つの四季に表しました。
春 |
児童期と青年期 |
夏 |
成人前期 |
秋 |
中年期 |
冬 |
老年期 |
各発達段階で特有の悩みや過渡期を通過して人間は成長していくのです。
レビンソンが提唱した4つの発達期
レビンソンは4つの発達期があるとしています。
-
児童期と青年期
-
成人前期
-
中年期
-
老年期
ここでは、各発達時期の特徴を具体的に解説していきます。
1.児童期と青年期(0歳~22歳)
0〜22歳までは「児童期と青年期」といいます。
児童期と青年期では、家族や周りの大人に保護され社会に順応する時期です。
自我が目覚め他者の視点を気にし始め、精神的にも大きな変化がありますが、声質や体型など身体的な変化も起こります。
未成年の時期では最も成長する時期が児童期と青年期といわれているほど、大切な時期です。
2.成人前期(17歳~45歳)
「成人前期」は17歳から18歳ごろから始まり、45歳まで続くといわれており、ライフサイクルのなかで最も長い時期です。
身体的特徴はほぼ定まり、思考力や問題解決能力は頂点に達します。
仕事や私生活では一定の地位につき、社会的貢献感を得ている方もいるでしょう。
3.中年期(40歳~65歳)
「中年期」は40〜65歳の25年間で、成人期が終わり「新しい自分になる時期」とレビンソンは提唱しました。
体力は成人前期に比べると徐々に低下してゆき、意欲や気力も穏やかになっていきますが、活力は減ってきても仕事や趣味をこなすことは可能な時期が「中年期」です。
中年期では成人前期で抱いた野心や渇望感をコントロールできるようになり、人生を楽しく過ごしていけるとされています。
4.老年期(60歳~85歳)
60歳代前半に中年期が終わり、85歳まで「老年期」が続いていきます。
生物学的や心理学的・社会的にさまざまな変化が起こる時期です。
仕事面では定年をして第二の人生やセカンドキャリアが始まり、人生の最終段階と認識して生活していく方が多いでしょう。
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レビンソンが提唱した3つの過渡期
レビンソンは以下の3つの過渡期を提唱しました。
-
成人への過渡期
-
人生半ばの過渡期
-
老年の過渡期
参考)ダニエル・レビンソン『ライフサイクルの心理学』(講談社学術文庫、1992年、111頁以下)111頁
過渡期では生活構造が変化し、自己や外の世界に対する考え方が大きく変わる時期だとレビンソンは提唱しています。
価値観や目標を追求しなければいけない時期であり、人生において重要なタイミングです。
ここでは過渡期の特徴を具体的に解説していきます。
1.成人への過渡期
17歳〜22歳までの5年間は「成人への過渡期」といいます。
未成年から成人へ変化するタイミングで、いわゆる思春期の時期であり、青年としては未熟な精神性を持ち合わせています。
繊細で不安定な「成人への過渡期」
未熟な面があることで家族に反抗をしたり、些細なことがきっかけで友人との関係に綻びが生じたりと、人間関係においても繊細な時期であるといえます。
私たちは傷つきやすく精神的に不安定な状態で成人を迎えることになります。
2.人生半ばの過渡期
「人生半ばの過渡期」は40歳〜45歳までを指し、成人前期から中年期の始まりにあたります。
過去も含めて現在の自分を振り返り、自己と向き合う時期といえるでしょう。
人生半ばの過渡期は、人生のなかで達成してきたことや出来なかったことを自問自答する時期といわれています。
迷いや葛藤が増えるため、自分にとって成功や失敗したことに対して意味や価値を見出さなければいけません。
自分なりの答えを出す「人生半ばの過渡期」
たとえばあるプロジェクトに失敗したことで昇進が遅れてしまったことへの未練があったとします。
しかしプロジェクトの失敗があったことで「体験できなかった仕事ができたり数多くの仲間と出会うことができた」と思えると、前向きに過ごしていけるでしょう。
人生半ばの過渡期では、自分なりに納得感のある答えを出すことが求められます。
3.老年への過渡期
60〜65歳は「老年の過渡期」が始まります。
肉体的、精神的にも衰えを感じることで、少しずつ死が近づいていることを実感します。
老年への過渡期は過ごし方によって、人生への絶望感や苦しさを軽減することが可能であるといえます。
仕事では定年の年齢にさしかかり、成人前期や中年期と比べると肉体的な衰えを感じることで、次第に表舞台との関わりが少なくなります。
しかし自分なりに新しい社会との関わりを持つことで、有意義な人生を送る環境を作り上げていけるでしょう。
自分の内面と向き合う「老年への過渡期」
いい意味で自己愛や人類愛・人間の矛盾などを広く認識できるようになっているからこそ、自分の内面と向き合うことができます。
老年への過渡期は衰えを感じると同時に、「本当に自分がしたいことは何か」を問える大切な時期でもあるのです。
自分の内なる声に耳を傾けて、社会や自分自身と深く関わっていくことが重要であるといえます。
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レビンソンが提唱する4つの危機とは
レビンソンは40〜45歳の人生半ばの過渡期では「中年の危機」が起こると提唱しています。
中年の危機とは以下の4つです。
-
「若さ」と「老い」
-
「男性性」と「女性性」
-
「創造」と「破壊」
-
「愛着」と「分離」
相反する感情と向き合い、統合する時期だとレビンソンはいいます。
この章では、中年の危機について具体例を交えて解説していきます。
1.若さと老い
中年期は20代と比べると体力が落ちていますが、新しい挑戦ができる年齢でもあります。
やる気だけではなく、熟練された経験を活かせば飛躍することも可能です。
ビジネスパーソンであれば、これまで培ってきた知識とスキルで、出世や独立といった新しいキャリアもあるでしょう。
2.男性性と女性性
男性性とは気合いや根性、積極性といった男性らしい強いイメージで、女性性とは優しさや包容力などです。
例えば20〜30代に積極性という男性性が先行していたが、そこへ包容力という女性性が加わることで良いバランスになるなどのケースがあります。
若い頃厳しかった上司が年老いてくると、部下の成長を意識するようになるのも女性性が芽生えている特徴であるといえます。
3.創造と破壊
中年期まで人生を歩んで来れば、故意ではないにせよ誰かを傷つけた経験もあるでしょう。
人生を肯定するために創造的でありたいと願う一方で、こうした自身の中にもある破壊を認めることで、破壊と創造の対立が起こります。
中年期の危機のひとつである「創造」と「破壊」の対立を抱えたまま、いかによりよく生きるかが解決の道であるとレビンソンは著書に記しています。
4.愛着と分離
これまで築いてきた外との関わりが「愛着」で、その関わりを減らして内面と向き合うのが「分離」です。愛着と分離は、自分の存在が今の場所から離れたことを想像することです。
具体的には、会社や子どもから離れたあと、自分に何が残るのかを考える時期、といえるでしょう。
愛着と分離は相反する感情ですが、「分離がないと愛着もない」とレビンソンは言います。
まとめ
私たちは発達期と過渡期を繰り返して成長していきます。そして中年期では、自分自身の感情と対立する時期を迎えます。
それぞれの時期によって悩むことや不安になることがあるでしょう。しかしどのようなことが起きるかを知っているだけでも、感情のコントロールをすることが可能になるでしょう。
各発達時期に向き合い、キャリア形成やライフプランを考えてみてはいかがでしょうか。
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