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キャリア - 2024.11.21更新 / 2024.01.26公開
ライフキャリアの意味とその考え方~ライフキャリア・レインボーとは何か
「キャリア」という言葉からは「仕事を通したキャリア」をイメージする人が多いのではないでしょうか。しかし、私たちは仕事以外にも家族との時間や趣味の時間などを多くもっており、そのときどきで異なる役割をもっています。
このページでは、仕事だけではなく、人生を通したキャリアである「ライフキャリア」について紹介していきます。キャリアコンサルタントとして支援を行うために、また、自分自身が「なりたい自分」に近づくために、ぜひ参考にしてください。
「ライフキャリア」とは何か、その意味について
ライフキャリアとは、「家庭や仕事、地域活動、趣味といった個人の活動を通した、人生の中での役割や経験の蓄積」を表す言葉です。
私たちは、家庭や仕事はもちろん、ボランティアといった地域での活動や趣味などの個人的な活動のなかで、他者との様々な関わりをもち、経験を積み重ねていくことになります。そしてこの「積み重ね」が、人生そのものをかたちづくっていきます。
ライフキャリアは、その人の選んだ人生の選択肢と行動の蓄積によって作られるものであり、またライフキャリアを考えることは人生における「選択や行動」を定めていくのに役立ちます。
「ライフキャリア」と「キャリア」
「ライフキャリア」と似た言葉として、「キャリア」があります。ライフキャリアとキャリアは、共通するところもありますが、基本的には別のものだと解釈されます。
「ライフキャリア」は、家庭や趣味などのように仕事以外も指す言葉であるのに対し、「キャリア」とは、職務上・仕事上の経験を意味する場合が一般的です。
つまり、「キャリア」は「ライフキャリア」よりも狭義の意味で使われる言葉であり、「ライフキャリア」は「キャリア」を内包する言葉だといえるでしょう。
ライフキャリアが注目される背景
ライフキャリアが注目されるようになったのは、企業そのものの性質や雇用形態、日本における平均寿命の変化からだと考えられています。
終身雇用制度が終わりを迎えた現代、人はより良い就職先を求めたり、独立を考えたり、副業をしたりするようになってきました。
さらに、定年退職後もセカンドキャリアを考えるなど、平均寿命が延びたことによって、「その後の人生」「100年時代の人生」を意識する必要が出てきました。
そのため、企業は従業員を雇用し続けることよりも、より良いキャリアを築くためのサポートをすることが求められるようになってきています。そして私たち個人も、自分のライフスタイルに合った働き方、自分らしい生き方を考えることが必要となり、「ライフキャリア」が注目されるようになったのです。
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ライフキャリア・レインボーの考え方
さて、ここからは「ライフキャリア・レインボー」について解説していきます。
ライフキャリア・レインボーとは、ライフキャリアを、虹の形態で表したものです。
出典:文部科学省 | キャリア教育に期待されること
半円形の外側には年齢が書かれていて、年齢ごとの「ステージ」が設定されています。またその年齢の内側には、「役割」が記されています。
このライフキャリア・レインボーは、1950年にドナルド・E・スーパーにより提唱されました。
彼はこのライフキャリア・レインボーを形成するものとして、「5つのライフステージ」と「9つのライフロール」があるとしました。
5つのライフステージ
ライフキャリア・レインボーにおける「5つのステージ」はこちらです。
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成長段階
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探索段階
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確立段階
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維持段階
-
解放(離脱、衰退、下降)段階
1つずつみていきましょう。
成長段階(0歳〜14歳程度まで)
自分がどういう人間であるかということを知り、自身の興味や能力の探求をする段階。また、働くことの意味についても理解を深める。
探索段階(15歳〜24歳程度まで)
自分に合った職業は何かを模索し、希望の職業を絞っていく段階。また、その職業に就くために必要な能力を身につけたり、その経験を通して他の職業の方が良いかなどを模索する。
確立段階(25歳〜44歳程度まで)
一定の職業に就き、自身の役割を明確にして、その役目を果たす段階。また、経験を積んで能力を高め、地位を確かなものにする。
維持段階(45歳〜64歳程度まで
確立した地位を守り、維持していく段階。後進の指導にあたることも多くなる。退職後の人生について考えるようになる。
解放段階(65歳〜)
肉体的・精神的に力が低下していく時期で、基本的にはこの時期に引退を迎える。退職後の楽しみを見出し、新しいライフキャリアを実行する段階。
なお、これらの段階と年齢は、絶対的なものではありません。
このライフキャリア・レインボーが生まれた当時と現代では、年齢の感覚にズレがあります。ライフキャリア・レインボーが提唱された1950年代~1960年代(ここでは1955年の統計を採用)では、大学の進学率は20パーセント弱程度にしかすぎず、高校への進学率も50パーセントを超える程度でした。
しかし2022年には大学進学率は60パーセント近くに達していて、高校進学率にいたっては99パーセントに達しようとしています。つまり、ライフキャリア・レインボーの考えが出た時代に比べて、人はもっと年齢を重ねてから働くようになっているということです。
また、人生や生き方は個人によって様々です。現在では特に70歳を超えても働き続ける人は珍しくありませんし、成人後すぐに社会人として活躍する人もいるでしょう。
ここで紹介した5つのステージは、ライフキャリアを考える1つの基準とし、時代や個々人によって変動するものと捉えるとよいでしょう。
出典:e-Stat | 政府統計の総合窓口
出典:文部科学省 | 高等学校教育の現状
9つのライフロール
スーパーは、「人は生涯において9つの役割がある」とし、これを「ライフロール」と呼びます。
子ども
親子関係における子ども。養育される立場を含む親と関わる時間を指し、幼少期だけではなく、子どもとして親の介護をする時間なども含まれる。
学生
学校に所属して学ぶ役割。義務教育以外の学びも含まれる。
余暇人
趣味人として、運動や文化的なことを楽しむ役割。
市民
地域の一員としての役割。ボランティアなどの地域貢献を果たす役割。
労働者
仕事を行う役割。会社員だけでなく、自営業者や公務員、非正規雇用なども含まれる。
配偶者
パートナーを持ったときに発生する役割。法律婚以外のパートナーを持った場合も含まれる。
家庭人
親元を離れてからの役割で、家庭の一員として家事などの家庭に関する全般を行う役割。
親
子どもを持つ親としての役割。
年金受給者
退職後の公的年金を受けて生活をする役割。
これらのライフロールは、常に1つではなく、複数を同時に持っていたり、入れ替わったりと、人によって様々です。
「人が持つあらゆる顔」を意識することは、人生を考えるうえで重要であるといえるでしょう。
ライフキャリアを捉えるための手順について
ライフキャリアやライフキャリア・レインボーの内容を取り上げてきましたが、ここからは、実際にライフキャリアを捉えるためにはどのような手順を踏んだらよいのかについて考えていきましょう。
-
現状を把握する
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今までの自分を振り返る
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将来の予想を立てる
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今後起こるであろうことに対して準備を行う
順番にみていきます。
1.現状を把握する
ライフキャリアを考えるためには、まずは「現在の自分が置かれている状況はどのようなものか」を把握することが重要です。
ライフキャリア・レインボーにあてはめて、現在の自分のライフステージと、ライフロールを確認してみましょう。冷静に客観的な視点で、確認することが重要です。
2.今までの自分を振り返る
自分の現状を把握できたなら、次は「今までの自分はどうであったか」を振り返ります。
今まで踏んできたステージと自分が担ってきた役割を整理しましょう。またこのときには、「自分は今まで何をがんばってきたか」「何が好きだったか」なども一緒に振り替えると、次の段階の「将来の予想を立てる」がやりやすくなります。
3.将来の予想を立てる
現状を把握し、過去が整理できれば、将来の予想を立てやすくなります。
「自分はこれから先何をしたいか」「自分の理想的な未来像とはどのようなものか」を考えます。
このときには、できるだけ具体的で実現性を伴ったプランを描くようにしましょう。また、「これは実現性がないかもしれない」と思うものであっても、そこに至るまでの道筋を丁寧に組み立てていくことで、実現できるようになるかもしれません。
4.今後起こるであろうことに対して準備を行う
1から3を丁寧に考えていくと、「これから起こるであろうこと」をある程度予測することができます。また、「どのような将来にたどりつきたいか」を明確に言語化することで、実現するための方法やステップを考えることもできます。
ライフキャリアを意識することは、「なりたい自分」を作るための有効な方法だといえるでしょう。
1から3を丁寧に考えていくと、「これから起こるであろうこと」をある程度予測することができます。また、「どのような将来にたどりつきたいか」を明確に言語化することで、実現するための方法やステップを考えることもできます。
ライフキャリアを意識することは、「なりたい自分」を作るための有効な方法だといえるでしょう。
まとめ
「キャリア」という言葉を聞いた時、私たちはよく「仕事のステップ」「仕事のプラン」をイメージします。もちろんこれは間違いではありませんが、人には「職業人」以外の顔も数多くあります。
ライフキャリアは、そのような「多くの顔」「多くの役割」があることを前提として構築するものです。
ライフキャリアを考えることで、「なりたい自分」が見えやすくなります。一方で、働き方や生き方の選択肢が増えている現代、自分自身でライフキャリアを考えるのは難しくもあります。
キャリアコンサルタントが行う支援には、仕事におけるキャリアだけでなくライフキャリアのサポートも含まれ、現代において重要な役割と言えるでしょう。
人々が自分らしく生きるための支援を目指してみてはいかがでしょうか。
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