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キャリア - 2024.11.07更新 / 2024.08.13公開
責任はだれにある? ローカス・オブ・コントロールについて
仕事をしていると、「この状態の責任はだれにあるのか」を考える機会がよく訪れます。
今回はその「責任のありか」を考える概念である「ローカス・オブ・コントロール」ついて解説していきます。
ローカス・オブ・コントロールとは
「ローカス・オブ・コントロール(locus of control)」は、「統制の所在」とも言われ、行動と評価の原因を自分とするか、自分以外とするかの考え方の傾向を指します。
詳しくは後述しますが、ローカス・オブ・コントロールは、「仕事で成功したのは、自分が○○の資格を取ったからだ」というように自分自身の行動に理由を求めるのか、それとも「仕事で成功したのは、たまたま運が良かったからだ」というように自分以外の要素に理由を求めるのかに大別されます。
内的統制と外的統制
ローカス・オブ・コントロールは、大きく「内的統制」と「外的統制」の2つの概念に分けられます。「内的統制」とは評価や行動の責任を自分自身に求めるものであり、「外的統制」は評価や行動の責任を自分以外に求めるものです。
この章では、それぞれの詳しい説明と具体例、メリットとデメリットについて解説していきます。
「内的統制」は、責任の所在を自分に求めるもの
「内的統制」とは、与えられた評価や起こったこと(起こした行動)の責任を自分自身に求めるものです。「現在の状況は、自分が行ってきたことの結果である」とする考え方だと解釈すれば分かりやすいでしょう。
内的統制の例
たとえば取引先との商談が上手くいき、お互いにとって有用な結果が得られたとしましょう。内的統制の思考の場合は、これを、「自分が日ごろから先方と密に連絡をとっていたからだ」「商談にあたり、取引先の会社の成り立ちや企業方針までしっかり調べていたからだ」と捉えます。
また逆に仕事が上手くいかなかった場合、「私の資料のまとめ方が良くなかったからだ」「自分のコミュニケーション能力が低く、和やかな会談にすることができなかったからだ」のように、自己に失敗の責任を求めます。
内的統制のメリット
この内的統制の考え方は、自分自身のなかに責任を求めるため、「次に同じことを繰り返さないためにどうすればよいかを考えよう」などのように前向きな結論に至るというメリットがあります。
外的要因は自分自身の力ではコントロールできませんが、自分の行動は自分でコントロールできるため、成長もしやすくなります。また他者に責任を押し付けることがない思考であるため、周りの人から見ても好意的に受け止められやすいタイプだといえます。
内的統制のデメリット
内的統制の考え方が行き過ぎると、メンタル不調に陥る可能性があります。たとえば「急な雪で電車が停まってしまい、会議に遅れた」などのように自分ではコントロールできない出来事などに対しても、「日頃の自分の行いが悪いからこうなった」「会議がある日は会社に泊まり込まなければ」などのような極端な思考につながることも考えられています。
また、内的統制が行き過ぎると、失敗することを恐れるあまり、新しいことに挑戦しにくくなってしまう傾向もみられるようになります。
「外的統制」は、責任の所在を外に求めるもの
「外的統制」とは、与えられた評価や起こったことの責任を外部に求める考え方です。「現在の状況は、自分以外の何かの働きかけによるものである」という考え方であると解釈できます。
外的統制の例
外的統制型の例について見ていきましょう。たとえば仕事が上手くいったとき、「偶然相性の良い取引先と巡り会えたから、運が良かった」「担当者は高い専門性と技術力を持っている人だったから、至らないところをフォローしてもらえた」などのように考えます。
仕事が上手くいかなかったときには、「今回の取引先の相手は非常に厳しかった」「上司がきちんとフォローしてくれなかった」などのように考えます。
外的統制のメリット
外的統制の傾向が強い人の場合は、自責心で追いつめられるということはほとんどありません。仕事と自分の間に一定の距離を置くため、仕事によってメンタルや身体の不調に陥りにくく、心身ともに健全な状況を保ちやすくなります。
また意外に思われるかもしれませんが、このタイプの人のなかにはしばしば「マネジメント業務が上手い」という人も見られます。自分の仕事やその失敗を周りの人に共有し、分配し、周りのフォローを借りようとすることに抵抗感が少ないからです。
外的統制のデメリット
外的統制の傾向が強い人は、評価や起こった結果の原因を他者に求めます。成功しても成功しなくても、自分自身ではどうしようもない(と思い込んでいる)外部に原因を求めるため、自分が変わろうとする意識が希薄です。そのため、同じような失敗を繰り返してしまうなど、なかなか成長が見られないこともあります。
バランスが大切
内的統制と外的統制は、本来は「どちらが良い・どちらが悪い」と言えるものではありません。ローカス・オブ・コントロールの傾向を測るテストでも「内的統制タイプか、それとも外的統制タイプか」の二極での結果を出してはおらず、ある程度グラデーションのある結果が出るようになっています。
ローカス・オブ・コントロールの傾向を調べるためのテストでは、複数の設問を設けたうえで、「まったくそう思わない/あまりそうは思わない/どちらともいえない/かなりそう思う/まったくそう思う」などのように複数の選択肢から回答を選んでいく形式をとります。
内的統制と外的統制の、バランスをとっていくことが重要です。
ローカス・オブ・コントロールもまた、自己評価を構成する一要素
「ローカス・オブ・コントロール」は、自己評価を構築する要素のひとつであるという特色も持っています。
私たちは、常に自分に対して評価を下しています。この自分に対する評価は「中核的自己評価」と呼ばれていますが、これには4つの種類があります。
4つの「中核的自己評価」
1.自尊心
自分に対しての誇りや、自分の存在を認められる感覚
2.自己効力感
自分には力があり、目的を果たすための実行力があるという感覚
3.不安耐性
襲ってくる不安やストレスに耐えられたり、抗えたりする力を自分は持っているという感覚。また、新しいことやストレスになるかもしれないことに挑戦できるという感覚
4.統制の所在
上で挙げた「ローカス・オブ・コントロール」のこと。そのなかでも特に、「物事は自分の力で制御できる」と感じる感覚
自己効力感とは? 概要から高める方法まで徹底解説 | リカレントcounselor |
中核的自己評価の重要性
中核的自己評価が高い人の特徴
中核的自己評価が高い人は新しいことにも果敢に挑戦できますし、自分を磨くことに対しても前向きでいられます。また、ストレスや不安があっても対処できる力を兼ね備えているため、自分自身の価値を見失って自己嫌悪に陥ることが少ない傾向にあります。
望ましい状況でいるためにはバランスが大事
望ましい状況でいるためには、1から4までのすべてが高い状態でなければなりません。たとえばローカス・オブ・コントロールにだけ注目をしていて不安耐性がない人ならば自責心によって心身の不調を抱える可能性が高くなります。
自己評価のバランスと挑戦への影響
ローカス・オブ・コントロールについて考えることは非常に重要なものではありますが、これはあくまで中核的自己評価のいち要素である点については、ポイントとして抑えておくとよいでしょう。
ローカス・オブ・コントロール、特に内的統制によって自らを律することには多くのメリットもある一方で弊害もあるということに留意しておきましょう。そのうえで、自尊心や自己効力感、不安耐性を高めていくための取り組みをしていく必要があります。
また、このような取り組みは個々人で行うことはもちろん、従業員を雇用する側である企業側も意識していく必要があるといえます。自尊心や自己効力感、不安耐性や統制の所在を高めるための働きかけを行うことはもちろん、コミュニケーションのやり方を見直すことも求められます。
まとめ
「起こった(起こした)行動や評価の責任は、どこにあるのか」を考える思考の傾向を示す指標として、「ローカス・オブ・コントロール」があります。
「責任は自分にある」とする内的統制と、「責任は自分以外の要因にある」とする外的統制の2つに分けられていますが、これはどちらかだけが良い・どちらかだけが悪いといえるものではありません。
ただ前者は成長がしやすいというメリットが、後者は身心の調子を壊しにくいというメリットがあります。
なお、ローカス・オブ・コントロール(特に内的統制)は、中核的自己評価を構成する要素です。ローカス・オブ・コントロール以外に「自尊心」「自己効力感」「不安耐性」の3つがありますが、これらをすべて高い水準で維持することで、チャレンジ精神を持てたり、心の調子を崩しにくくなったりします。
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