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キャリア - 2024.11.20更新 / 2023.12.16公開
成功がさらなるチャンスを呼ぶ「マタイ効果」とは?「マルコ効果」と違いも解説
仕事をしていく中で、「よい評価がよい結果を呼び、さらなるチャンスにつながった」という経験をしたことはないでしょうか。
この記事では、このような現象を意味する「マタイ効果」について解説していきます。また、「マタイ効果」と比較される現象である「マルコ効果」の違いについても紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
マタイ効果 (Matthew Effect)とは
マタイ効果はロバート・K・マートンが提唱した「成功している者が注目され、さらに成功する可能性が高まる」という現象を指します。
マタイ効果という名前は、新約聖書の『マタイによる福音書』25章29節の「持っている者は与えられてますます豊かになり、持っていないものは持っているものまで取り上げられるだろう」という言葉が由来となっています。
ビジネスでみるマタイ効果の例
「マタイ効果」のように、格差が更に広がる現象をビジネスシーンを例としてみていきましょう。
ビジネスシーンでみられる「マタイ効果」の例は次の通りです。
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成果から生まれる新たな機会
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人材獲得とネットワーク
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企業のブランド力
順番に解説していきます。
1.成果から生まれる新たな機会
成功している従業員はより多くの機会を得ることができるため、キャリアにおいても有利になると考えられます。
重要なポジションに抜擢されたAさんの場合
たとえば、プロジェクトで成果を出したことで、翌年には重要なポジションに抜擢されたAさんは、その後もさまざまなチャンスに恵まれ、昇進につながるといったケースがマタイ効果といえます。
2.有名企業は人材獲得において有利である
「マタイ効果」は、企業と企業の間でも見られる現象です。
有名企業はその知名度や評判によって優秀な人材を引き寄せやすくなり、集まった経験豊かな人材によって優れた成果を生み出すことが期待されます。
同じ条件なら有名企業を選ぶ傾向
求職者側も、同じ条件が提示されている状況であれば、知名度の高い企業を選ぶ傾向があり、キャリア形成を考える際にも、同じ経験をするなら有名企業のほうがよいと考える場合が多いでしょう。
このような「マタイ効果」が生じることで、大企業が市場での優位性を維持しやすくなるというサイクルが生じます。
3.企業のブランド力
知名度の高い大企業は、より多くの広告費を投入できるため、ブランドの知名度がさらに高まります。
また、長年にわたる経験を持つ企業は、顧客からの信頼を得やすいため、競合他社との差別化をはかることができます。
知っているという安心感
同じ価格帯や品質の商品を選ぶ際に、ブランド力が重要な要因であるケースは多いといえるでしょう。安心感は、顧客が選択する際の指針となるため、知名度の高いブランドが選ばれる確率が高くなります。
上記は一般的な例であり、産業によって異なる場合もありますが、ビジネスシーンにおいても「マタイ効果」の影響は大きいと考えることができるでしょう。
マタイ効果のメリット
マタイ効果のメリットは、組織やチームが優れた人材を選んで育成することによって、持続的な成功と安定をもたらす可能性がある点だといえます。
選抜された従業員が優れた成果を挙げると、組織はその成果を通じて競争力を維持し、市場での地位を強化することができます。
また、選抜と育成のプロセスによって、組織は効率的で生産的な環境を築き、優れたリーダーシップと専門知識を持つ人材を育てることができるので、企業は社会の変化に対応しやすくなり、持続的な成長と成功を実現できるのです。
公平性の問題をどう捉えるか
「マタイ効果」については、成功からさらなるチャンスを得る「スター社員」と、機会が限られる従業員とでは、成長の機会にも格差が生じるため、公平性を疑問視する声もあります。
正当な評価につながりにくいというデメリットも
「スター社員」は仕事ができる人という判断によって、本来の能力よりも高い評価を得る場合があります。
また、今まで評価を受けてこなかった従業員の成果やアイデアなどが、正当に評価されにくいという側面もあり、本来は能力の高い従業員が退職してしまうというケースも発生します。
格差が広がれば広がるほど、成長の機会が限られる従業員は、仕事に対するモチベーションを維持することが難しくなっていきます。
マルコ効果 (Marko Effect)とは
「マルコ効果」は「マタイ効果」とは逆の現象で、いままで成功する機会に恵まれなかった従業員にも機会が与えられる現象を指します。
企業が従業員にチャンスを提供し、適切なサポートを与えることで、成功の機会を広げるというアプローチです。
多様性と公平性を重視することで、従業員一人ひとりが尊重される環境が築かれます。
ビジネスでみるマルコ効果の例
現在では、企業内の全従業員に機会を提供する「マルコ効果」にも注目が集まっています。
「マタイ効果」とは逆の「マルコ効果」は、すべての従業員を優れた個人として見なすアプローチです。
この章では、「マルコ効果」の例を紹介していきます。
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従業員のモチベーション維持
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選抜しない公平な評価
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成長機会の提供
1つずつ順番にみていきましょう。
1.従業員のモチベーション維持
日の目を見ない立ち位置に留まり、正当な評価を受ける機会に恵まれなかったすべての従業員が、自身の能力が重要視されていると感じることができれば、仕事に対するモチベーションの維持につながります。
2.選抜しない公平な評価
激しい差別化が排除されると、従業員は評価を受けていると感じるようになります。
一人ひとりが協力的でチームワークを大切にし、お互いをサポートする職場環境においては、生産性の向上が期待できるでしょう。
3.成長機会の提供
全ての従業員が優れた個人として評価されるというアプローチでは、企業が成長機会を提供することで、従業員のアイデアや活躍の促進につながります。
特定の従業員の評価が明らかに高い場合には、業務が属人化される可能性があるため、担当している従業員が休職や退職をした場合には大きな影響が出てきます。そのため、スター社員だけではなく、全ての従業員に機会が提供されることは、人材不足が叫ばれる日本企業にとっては非常に有用であるでしょう。
従業員のキャリア自律の重要性
従業員自身が自己成長やキャリアを考え、自律的に行動することは非常に重要です。企業側がいくら機会を与えても、従業員がキャリア自律に取り組んでいなければ、評価にはつながらないでしょう。
従業員が自らのスキルや能力を向上させ、新しい機会を探求する意欲を持つことが、結果的に企業成長を促すと考えることができるでしょう。
「キャリア自律」がもたらすメリット~企業側と個人側の両面から | リカレントcounselor |
まとめ
この記事では、「マタイ効果」と「マルコ効果」について、ビジネスシーンの例とともに解説しました。
「マタイ効果」は、成功者へのチャンスと評価を重視することで組織全体を成長させる可能性を持ちます。しかし、その過程で公平性や均衡が損なわれる可能性がある点に注意が必要です。
一方で「マルコ効果」は、多様性と公平性を強調し、全ての従業員にチャンスを提供することで持続可能な成功を追求します。ただし、従業員がキャリア自律に取り組んでいない場合には、良い結果を得ることは難しいといえます。
企業は、公平性と成果の両面を考慮しながら、従業員の個々の能力と潜在力を最大限に引き出すマネジメントを展開することが、今後の課題となってきます。働きやすい環境が整って初めて、従業員は自身のキャリアを発展させ、成長することができるでしょう。
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