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キャリア - 2024.11.15更新 / 2023.10.20公開

誤解されやすい「メラビアンの法則」とは? 正しく理解しキャリアに役立てる

人の第一印象は約3〜5秒で決まると耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

これはいわゆる「メラビアンの法則」に基づいた考え方ですが、誤解を招きやすい表現であるともいえます。このページでは、「メラビアンの法則」についてわかりやすく紹介していきます。

「メラビアンの法則」とは?

メラビアンの法則とは、「人と人がコミュニケーションをとる場合の影響力は、言語による情報が7パーセント、聴覚による情報が38パーセント、視覚による情報が55パーセントの割合を占めている」という考え方です。

この考え方の歴史は意外なほどに古く、50年以上も前の1971年からすでに唱えられていました。ちなみにこのメラビアンの法則を唱え始めた学者は、アメリカのクラーク大学に所属していた心理学者「アルバート・メラビアン」です。

メラビアンの法則の実験

アルバート・メラビアンは、2つの実験によってこの法則を導き出しました。その実験とは、以下の通りです。

1. ”maybe” と発音するときの表情と口調を変える

“maybe” とは、「そうかもしれない」「おそらく」「多分」などの意味を持つ推量の言葉です。実験では、この”maybe”と発音するときの表情や口調を、都度変えて表現しました。

そうしたところ、同じ推量の単語を発しているにも関わらず、強い口調・表情で言われたときの方が説得力・信憑性が高くなるという結果が得られたのです。

2. 好悪の感情を表す写真と音声を組み合わせて、その人に対するイメージを聞く

2つめの実験では、「好き」「嫌い」「普通」の単語と、それを表す顔写真を用意するところから始められました。

「好き」という言葉を好意的な表情で伝えられれば、受け取った側は当然相手に対して好意的な印象を抱きます。そして「嫌い」という言葉を嫌悪感を持った表情で伝えられれば、受け取った相手は相手に対して悪い印象を抱きます。

しかし「好き」という言葉に嫌悪感を持った表情を組み合わせた場合、受け取った側は好意的な「言葉」ではなく、嫌悪感を持った「表情」を重視し、相手に対して悪い印象を持ったとされています。

また逆に、「嫌い」という言葉に好意的な表情を組み合わせた場合は、受け取り手側は「嫌い」と言われているにも関わらず、相手に対して好印象を持つという結果が得られました。

つまり人は、「言葉」と「表情」に統合性が取れない場合は、言葉(言語による情報)よりも表情(視覚による情報)を優先するわけです。

バーバルコミュニケーションとノンバーバルコミュニケーションについて

上記のメラビアンの法則をより深く理解するために、「バーバルコミュニケーション(言語コミュニケーション)」と「ノンバーバルコミュニケーション(非言語コミュニケーション)」について確認していきましょう。

バーバルコミュニケーションとは、上で挙げた「好き」などの言葉や文字で伝える「言語を通したコミュニケーション・言語による情報」のことをいいます。

対してノンバーバルコミュニケーションとは、上の例でいう「表情」やしぐさのような「非言語のコミュニケーション」のことをいいます。

言語と非言語は互いに保管し合う要素

一般的にノンバーバルコミュニケーションは、言葉だけでは伝えにくい情報や感情を補完し、より豊かなコミュニケーションを可能にすることがあります。

バーバルコミュニケーションとノンバーバルコミュニケーションは相互に補完し合う要素であり、その重要性はコミュニケーションの目的や状況に応じて影響を与えると考えられています。

恋人同士の会話を想定すると、これはより理解しやすいでしょう。すでに別れが予感されるような関係であるのに苦々しく「好きだ」と伝えられた場合は、「今は言葉で取り繕っているのだな」と感じることが一般的です。

反対に、じゃれたような明るい声で笑いながら、「もう、あなたのことなんて嫌い」と言われた場合は、恋人同士のよくあるじゃれあいだと感じることが多いでしょう。

また、母国以外でコミュニケーションを取る際は、身振り手振りを活用する場面があります。これもまた、ノンバーバルコミュニケーションが相手に対して有効であることを示すエピソードです。

このように、「ノンバーバルコミュニケーションは、受け取り手側に感情を伝えること」をアルバート・メラビアンは発見し、「メラビアンの法則」を生み出したわけです。

メラビアンの法則の誤解について

上記のメラビアンの法則と、バーバルコミュニケーション・ノンバーバルコミュニケーションの考えを見ていくと、メラビアンの法則の誤解について慎重に考えていかなければならないことがわかります。

人の第一印象は約3〜5秒で決まるというのは、コミュニケーションにおける影響力が、言語情報7パーセント、聴覚情報38パーセント、視覚情報が55パーセントの割合を占めているというメラビアンの法則の考え方がベースとなっています。

第一印象は見た目についての情報を多く含むため、割合の比率やメラビアンの実験結果のみが注目されるようになりました。

他にも、「人は見た目が9割」という言葉の根拠として使用される場合もありますが、メラビアンの法則の本来の意味とは異なります。

言葉と表情の重要性

メラビアンの法則とその実験から導き出された実際の意味合いとしては、「相手に対して自分の意図を正確に伝えようするならば、言語による情報や聴覚による情報、視覚による情報に気を配る」ということです。

「好き」ということを伝えたいのであれば、表情もまたほがらかな方がより伝わります。逆に、不快感を伝えたいときに、表情が笑顔だとなかなか伝わりません。

言語と非言語に齟齬があった場合は?

バーバルコミュニケーションとノンバーバルコミュニケーションに齟齬があった場合、非常に混乱することが予想されます。そしてその混乱を制御しようとしたとき、ノンバーバルコミュニケーションである「表情」が優先されることが多く、その結果として、「好き(あるいは嫌い)」という言葉が、相手に誤解されて伝わってしまうことも考えられます。

まとめ

メラビアンの法則は、「表情と話す内容にかい離が見られたとき、人は前者の方を優先する」としています。

つまり、相手に何かを伝えたいときは、表情や声のトーン、身ぶりや手ぶりと、話す内容を一致させることがポイントだということがわかります。

これは、就職活動での面接や、取引先へのプレゼン、部下との面談など、あらゆる場面において意識すべき点だといえるでしょう。

特に、キャリアコンサルタントといった対人支援をする職業の人、それを目指す人は、より意識して普段から取り入れてみてはいかがでしょうか。

Q&A

メラビアンの法則とは?
メラビアンの法則とは、「人と人がコミュニケーションをとる場合の影響力は、言語による情報が7パーセント、聴覚による情報が38パーセント、視覚による情報が55パーセントの割合を占めている」というものです。
メラビアンの法則は誰が提唱した?
メラビアンの法則を唱え始めた学者は、アメリカのクラーク大学に所属していた心理学者「アルバート・メラビアン」です。
メラビアンの法則の具体例を知りたい
「不機嫌な表情で賞賛したとき」と、「笑いながら叱責したとき」の比較が分かりやすいです。 たとえば、「暗い顔で、『君はよくやっている』とほめたとき」と「明るく笑いながら、『もう、馬鹿な人ね』と告げたとき」を比較します。
メラビアンの法則では、人は表情・声音の方を優先するため、前者ではマイナスの印象を、後者では好意的(あるいは好意寄りの)印象を言葉を発した相手に抱きます。
メラビアンの法則を理解することで得られるメリットとは?
コミュニケーションを円滑に進めることができます。たとえば、新製品を取引先にプレゼンテーションする際に、細くぼそぼそとした声で行った場合、その製品がどれほど使い勝手の良いものであっても契約を断られる可能性があります。
また逆に、面接などで多少不都合なことを聞かれても、それに対して明るくハキハキとした声音で答えられるのであれば、その不利を覆すこともできます。

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