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キャリア - 2024.09.25更新 / 2024.02.19公開
オンボーディングとは?意味やメリット・3つの実施ポイントを紹介
最近ビジネスなどでよく聞くようになった「オンボーディング」。
人事領域では、新入社員の早期戦力化や、人材定着の観点から注目されています。
この記事では、オンボーディングとは何か、導入企業の事例や導入のメリット、実施方法を紹介していきます。
オンボーディングとは?
オンボーディング(on boarding)とは、船や飛行機などの乗り物に乗っていることを意味するオンボードに由来する言葉です。
また、オンボーディングは、ただ乗り物に乗っている状態だけではなく、乗り込んだ乗客やクルーをサポートし、環境に慣れてもらい、必要な役割を担ってもらうまでの過程を指します。
このような本来の意味から派生し、乗り物に限らず、企業などの組織が新たな従業員を迎え入れ、いち早く活躍できるように促すことをオンボーディングと呼ぶようになり、人事領域でよく使われるようになりました。
人事領域におけるオンボーディング
人事領域におけるオンボーディングについて、具体的にどのようなものなのかを紹介します。まずは、日本で従来からある、一般的な採用から育成のプロセスとどう違うのかを見ていきます。
従来の日本の採用・育成プロセス
日本における従来の採用から育成までのプロセスは、新卒社員として人材を一括採用し、新入社員研修を短期間で集中して行うことで組織についての理解を深め、それぞれの部署に配属させるというものが一般的です。
対象が広いオンボーディング
オンボーディングは、「入社してから2週間の研修」といった短期間ではなく、継続して行われる取り組みです。
また、オンボーディングの対象となるのは新卒社員に限らず、中途採用の社員、中堅社員、管理職社員や幹部など、組織に属するあらゆる人を対象とします。
組織の従業員全員が、環境に馴染み、力を発揮して活躍できるよう継続的に行っていく取り組みなのです。
オンボーディングの具体的な取り組み
オンボーディングの取り組みは多岐にわたります。組織や業務への理解を深める集合研修や、上司との定期面談、スキルを習得するための学習機会の提供といったものから、定期的なチーム内のランチ会、部門間の交流のイベントなど、あらゆるものが挙げられます。
長期的な視点で、かつ、個々が組織の中で受け入れられ活躍できる状態を目指す取り組みを総じてオンボーディングと呼びます。
OJT制度やメンター・メンティー制度との違い
メンバーが職場に慣れ活躍できるように促す取り組みと聞いて、OJT(On the Job Training)やメンター・メンティー制度を思い浮かべた人もいるでしょう。これらとオンボーディングはどう違うのでしょうか。
OJT制度とは
「OJT(On the Job Training)」とは、業務上の先輩社員が後輩社員に対し、必要な知識やスキルを教えていく方法です。実際に職場で業務を遂行しながら、トレーニングを行っていきます。実践力が早く身につきやすいので、社員が即戦力として成長できるトレーニングとして期待されています。
OJTとOFF-JTの違いは?それぞれの意味やメリット、事例を紹介 | リカレントcounselor |
メンター・メンティー制度とは
メンター・メンティー制度は、新入社員や若手社員が「メンティー」、その手本となる先輩社員などが「メンター」という立場になり、メンティーがメンターから指導やサポートを受けるものです。
OJT制度は業務を教えるのに対し、メンター・メンティー制度は、業務や人間関係、キャリアなどの幅広い相談に応じ、課題解決のサポートを行うというのが特徴です。
これらのOJT制度やメンター・メンティー制度のアプローチも、オンボーディングの取り組みの1つといえます。組織に合った形で様々な施策を組み合わせることでより効果を発揮するでしょう。
メンター・メンティ―とは? 役割や事例を紹介 | リカレントcounselor |
オンボーディング実施のポイント3つ
この章では、オンボーディングを実施する際のポイント3つについて紹介していきます。
-
事前準備の徹底
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企業と従業員間での意見のすり合わせ
-
段階的なプロセスの導入
順番にみていきましょう
1.事前準備の徹底
必要な資料や手続きの整理
入社手続きや社内規則、業務に必要な文書など、入社後に必要な情報を準備しておくことで、従業員は初日からスムーズに業務を開始することができます。
例えば、雇用契約書や社内規則、業務マニュアルなどを準備しておくことが挙げられます。
業務環境や役割に関する情報の収集と共有
従業員が配属される部署やチームの情報、役割や責任、期待される成果などについて、事前に収集しておくことで、入社した従業員は自分の役割や目標を理解しやすくなります。
業務内容や部署やチームメンバーの紹介などを事前に行うことで、従業員が組織内での位置付けや役割を把握しやすくなります。
2.企業と従業員間での意見のすり合わせ
従業員に期待される役割の説明
企業側が従業員に求める役割や責任を明確に説明することで、従業員は自身が期待されている役割を理解しやすくします。
従業員が自身の役割や責任を理解し、それに適切に対応できるような環境が整うことで、業務効率や成果の向上につながることも期待できます。
フィードバックの双方向性
従業員と企業側の双方が、互いの期待や要望をオープンに共有するための雰囲気づくりも重要です。
特に、組織の環境に馴染む期間は質問をしやすい環境を整えることで、従業員の緊張や不安を緩和するだけでなく、モチベーションも維持しやすくなります。
3.段階的なプロセスの導入
目標の設定
各段階での目標や成果を明確に設定し、従業員が進捗を確認しやすくすることで、従業員は達成感を得ることができます。
例えば、最初の週の目標は基本的なシステムへのログインや必須のトレーニングの完了とし、その後の週では具体的な業務タスクやプロジェクトの小さなマイルストーンを設定します。
スモールステップ
オンボーディングのプロセスを段階的に進めていくことも大きなポイントのひとつとなります。
まずは、基本的な業務や組織のルールに焦点を当て、従業員が段階的に新しい環境に慣れることを目的としたステップを意識しています。
オンボーディングが注目される理由
オンボーディングが注目される大きな理由は、企業などの組織や従業員を取り巻く環境の変化です。
近年、終身雇用制度の崩壊、少子高齢化による人口減少と労働力不足の問題、労働時間の短縮・是正など、労働を取り巻く環境は大きく変化していることがわかります。
人材確保が必要
組織にとって、まず人材を確保すること、そして定着させることは人材不足が課題である現代で非常に重要になっています。一方で、採用しても、組織の文化に合わないと感じて離職してしまうケースも少なくありません。近年転職率が増加傾向にあることから働き手が転職に前向きであることも影響します。
この組織で働きたい、自分に合っている、受け入れられていると感じられる環境整備が必要です。
生産性向上が必要
また、従業員が活躍できるよう成長を促すことも重要です。労働力不足の深刻化、グローバル化による企業間競争の激化が進む中で、働き手一人ひとりの生産性向上から組織全体の生産性向上を図る必要があるからです。
これらの課題をクリアするために、組織は従業員に対し、多方向から継続的なサポートを行う必要に迫られているのです。
オンボーディングを導入するメリット
次に、オンボーディングによって具体的にどのようなメリットが期待できるのか解説していきます。
従業員の早期戦力化
新しく入社した従業員は、組織の文化、ルール、事業内容やそれぞれの部署の役割、自身の業務のことなど、覚えなくてはいけないことがたくさんあります。これらは、入社後の短期間の研修で覚えきれるものではないでしょう。
オンボーディングで継続的にサポートすることで、様々な知識・スキルの習得スピードが高まることが期待できます。また、定期的な面談や普段のコミュニケーションにより、入社してから抱く不安や悩みに対しても周囲のメンバーが気付くことができ、問題も解決しやすくなります。
従業員の中長期的な成長が期待できる
オンボーディングの取り組みは継続的に行うことで、従業員が中長期的なキャリアを描きやすくなります。
例えば、上司との面談を通して目標設定とその進捗確認などを継続的に行うことで、組織の中でどのように成長し、何を実現したいかが明確になり、日々の業務に対するモチベーションも高まることが期待できます。
従業員が「この会社の仕事は合わない」「この会社では成長できない」と感じるのは、組織と従業員をつなぐコミュニケーションが不足して起きることも多いです。
継続したすり合わせが、課題発見と解決につながり、お互いの成長を促すでしょう。
従業員の満足度が高まる
オンボーディングが組織内で重要視されることで、人事部門や管理職などの社員育成や働きやすい環境作りなどの意識が高まります。
さらに、オンボーディングが活性化されることで、従業員の組織への信頼感が高まり、その組織や仕事に対する満足感が高まるといえるでしょう。
従業員の満足度が高い組織は生産性が高いとも言われています。また、従業員の満足度が高いと離職リスクも下げることができ、人材定着が期待できます。
採用・育成コストなどを抑える
従業員の離職・転職が多い組織では、新たに人材を採用するコスト、入社した従業員を育成するコストが高くなります。オンボーディングによって従業員の定着が実現すると、採用や育成にかかるコストも抑えることができます。
このように、オンボーディングは従業員と組織の両方がより良い関係をつくり、高い生産性を発揮できる取り組みです。
オンボーディングを導入する際の注意点
オンボーディングは様々なメリットが期待できる注目度の高い取り組みですが、注意が必要なこともあります。
導入意図を従業員にしっかり伝える
従業員が意図を理解しにくい実施方法だと、組織からの一方的な取り組みに終わってしまうことがあります。組織と従業員の双方で行う取り組みですので、意図や実施内容をきちんと周知しましょう。
関係組織を連携する
オンボーディングを実施する上では、人事部などのキーとなる部門、現場部署・チームなどの連携が必須です。
現場のみ、人事のみに丸投げした施策で終わらせないことが重要です。また、具体的に取り組む際は、上司や直属の先輩など特定の人だけに任せないことも重要です。多角的、かつ、横断的に行うことで効果を発揮しやすくなります。
単発の施策にしない
前提として、オンボーディングとは継続的な取り組みですが、研修を行って終わりにしてしまうケースも少なくありません。
オンボーディングの本質をもとに、中長期的な取り組みを実施し、効果を測定し、改善していくことが重要です。
オンボーディング実施の流れ
最後に、オンボーディングを実際に取り入れる場合の一般的な流れを紹介します。なお、組織の規模や業種、採用している働き方によって取り組みは様々ですので、基本的な流れとして参考にしてください。
目的の共有、目標の設定
オンボーディングの取り組みを通して、組織が何を期待するのかという具体的な目標設定を行います。一言にオンボーディングと言っても、組織の規模、置かれているステージ、ビジョンによって、期待することは異なってくるでしょう。自社がオンボーディングを通して目指すものを明確化することが重要です。
施策実施の環境を整える
研修の手配、必要なツールの導入、他施策との組み合わせ、部署の連携など、必要になるものを確認し整備します。
目標達成状況を確認するためのチェックリストを作成する
環境が整い、オンボーディングが実行されたら、都度、目標からずれていないか、問題が生じていないか、目標の修正が必要ではないかなどを確認していきましょう。
その際、目標とその達成状況を確認するチェックリストがあるとよいでしょう。組織・従業員ともに進捗と達成度合いがわかり、継続して取り組む意欲が生まれやすくなります。
フィードバック
取り組みの区切りとなるタイミングでフィードバックを行います。その際、組織と従業員それぞれの視点を取り入れること、また、チームメンバーなど他の従業員の視点を取り入れることで、多角的に掘り下げることができます。改善点などが見つかった場合は、次の施策に反映することもできます。
まとめ
本記事では、オンボーディングとは何か、企業の事例や注目される背景、メリット、実施方法を解説してきました。
キャリア観や働き方が多様化している現代、従業員同士がコミュニケーションを取りながら成長し、働きやすい環境をつくり、人材の定着を図っていくオンボーディングは効果的な取り組みだといえるでしょう。
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