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キャリアコンサルタント資格 - 2024.11.21更新 / 2024.07.24公開

良い効果が波及する「ポジティブ・スピルオーバー」とは?

人生には、私生活、仕事、社会生活などさまざまな側面があり、私たちはそれぞれで役割を持っています。それぞれが良い影響を及ぼし合うことで、人生は豊かになります。

このページで紹介する「ポジティブ・スピルオーバー」は、ある役割で得られた良い効果が他の役割にも波及していくという意味を持つ言葉です。

多様な生き方やキャリアが注目される中で、自分らしい人生を実現するヒントにしていただけると幸いです。

スピルオーバーとは

まずは「スピルオーバー」という言葉について解説します。

「スピルオーバー(spillover)」とは、「漏れ出す」「流出」といった意味を持つ単語です。従来は特に、ラジオやテレビなどの放送電波が想定範囲外にまで届いてしまうことを指すものでした。

この言葉の意味から派生して、近年は、ある役割での経験が他の役割にも影響し波及していくことを「スピルオーバー」と呼ぶことが増えています。

ポジティブ・スピルオーバーとは何か

先に説明した「スピルオーバー」の中でも、ポジティブな影響が波及する現象、つまり良い相乗効果が生まれていくことを「ポジティブ・スピルオーバー」と呼びます。

反対に、ネガティブな影響が波及することを「ネガティブ・スピルオーバー」と呼びます。

また、「ポジティブ・スピルオーバー」と並んで用いられることの多い言葉に、「ワーク・ライフ・エンリッチメント」があります。

ワーク・ライフ・エンリッチメントとは

「ワーク・ライフ・エンリッチメント」の「エンリッチメント」とは、「豊かにすること」「豊かになること」という意味です。

「ワーク・ライフ・エンリッチメント」は、仕事と私生活を相互に豊かにしていくことを意味します。例えば、一方での経験がもう一方の経験に活きたり、モチベーションが高まることなどがあり、「ポジティブ・スピルオーバー」と類似の概念です。

ワーク・ライフの相互関係

人生で避けることのできない「ワーク・ライフ」の関係について整理します。

かつては、仕事と私生活は、「仕事を優先させるか」「プライベートを優先させるか」など、明確に線を引いて考えられることが多いものでした。

現在は、生き方や働き方が多様化しており、個人の価値観も大きく変化しています。ワーク・ライフは両立して豊かにするものという考え方の方が一般的です。

また、近年はワーク・ライフの良い相互関係についての研究も数々報告されています。

2006年に発表されたカールソンらの仕事と家庭に関する研究では、仕事での成功や満足感が家庭生活にプラスの影響を与え、家庭生活の満足感や豊かさが仕事にプラスの影響を与えることを示しています。また、これらを測定するための基準を設け、調査し、妥当性を示しています。

日本でも「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」がまとめられ、取り組みが促進されています。

ポジティブ・スピルオーバーを起こす3つの要因

それでは、具体的にどのようなことが、ワーク・ライフに良い相互作用を生むのでしょうか。

2008年のポールマンらの研究によると、「職務要因」「個人要因」「職場要因」の3つの要素がある場合にポジティブ・スピルオーバーが起こりやすくなるとされています。

職務要因

  1. 仕事に自律性があり、ある程度決定権などがある

  2. 仕事で能力や知識が活かせている

例:

決定権があることで、働き方や働く時間などを自身で調整ができ、仕事と生活の調和が取りやすく、良い相互作用を生みやすくなる。

 

個人要因

  1. 外向的な性格である

  2. 良好な人間関係を築ける

例:

職場と家庭の両方で良い人間関係を保てることで、自身の要望を主張しやすかったり、周囲の協力を得やすくなり、仕事と生活との良い相互作用を生みやすくなる。

 

職場要因

  1. 上司や同僚、組織からの支援がある

例:

柔軟に働ける組織制度があったり、上司や同僚が協力的であることで、仕事と生活のバランスや調和がうまくいき、良い相互作用を生みやすくなる。

 

ポジティブ・スピルオーバーの効果

ポジティブ・スピルオーバーによる生活や職務への影響は、どの程度あるのでしょうか。

内閣府の調査

内閣府の「『ワーク』と『ライフ』の相互作用に関する調査」 で、ポジティブ・スピルオーバーの効果に関する報告が挙げられています。


内閣府 「「ワーク」と「ライフ」の相互作用に関する調査」図表6を参考に作成

このように、ポジティブ・スピルオーバーの度合いが高いほど、満足度が上がっていることがわかります。

 

あわせて読みたい

【ワークライフバランスとは】似た言葉との違いやメリット・デメリットを解説 | リカレントcounselor

 

企業のとってのポジティブ・スピルオーバーの影響

私たち個人にとってポジティブ・スピルオーバーが起こることが好ましいということは言うまでもありません。これは企業にとっても同様です。

職場環境や従業員の社内での活躍を支援することに関しては目を向けやすいですが、従業員のライフについては、まだ目を向けていないという企業も多いと思います。

また、従業員の生活を充実させることは、離職を招いたり、仕事のやる気を低下させることにつながるのでは、と考える人事や上司の方も多いかもしれません。

しかし、上に挙げた内閣府の調査からも、ポジティブ・スピルオーバーは生活だけではく、職務への満足度の高さにつながっていることがわかります。ライフが充実することで、結果的に、職務へのやりがいや、パフォーマンスの向上につながるといえるでしょう。

まとめ

このページでは、ポジティブ・スピルオーバーとは何か、その影響や効果をご紹介しました。

一つの人生を歩む個人としても、ポジティブ・スピルオーバーを発揮して豊かな未来を目指したいものです。

多様な生き方やキャリアが注目される現代、自分らしい人生や従業員の活躍を実現するヒントにしてみてください。

Q&A

ポジティブ・スピルオーバーとは何ですか?
ある役割での活動や効果が他の役割にも影響し、波及していくことを「スピルオーバー」と呼び、その中でも、ポジティブな影響が波及すること、つまり良い相乗効果が生まれていくことが「ポジティブ・スピルオーバー」です。
ポジティブ・スピルオーバーが起こる3つの要因とは何ですか?
「職務要因」「個人要因」「職場要因」です。「職務要因」は、職務に自律性がある又は能力を活かせるか、「個人要因」は、ソーシャルスキルや外向性があるか、「職場要因」は、周囲のサポートがあるか、になります。それぞれがあることで、ポジティブ・スピルオーバーが起こりやすいとされています。
ポジティブ・スピルオーバーの効果は何ですか?
ジティブ・スピルオーバーの効果として、仕事や生活への満足度の向上があります。特に、生活の充実が職務のやりがいやパフォーマンス向上につながることが、内閣府の調査で示されています。
企業にとってポジティブ・スピルオーバーの重要性は何ですか?
企業にとってポジティブ・スピルオーバーは、従業員の生活が充実することで職務への満足度やパフォーマンスが向上するため、従業員の離職防止やモチベーション向上につながります。

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