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キャリア - 2024.10.24更新 / 2023.06.02公開
「プロティアンキャリア」とは? これまでのキャリアと何が違うか
プロティアンキャリアは、あらゆる環境の変化に適応してキャリアを歩むための考え方です。
環境の変化が激しく、転職が当たり前となり、働き方も多様な現代、自分の働き方や生き方を思考するときに知っておきたい考え方です。
プロティアンキャリアとは
プロティアンキャリアは、時代や環境変化に適応できるよう、自分の意思で必要な知識やスキルを身に付けていくキャリア形成を指します。
アメリカの心理学者の、ダグラス・T・ホールが提唱した考え方で、変化の激しい時代における働き方やキャリアの築き方を示唆したものであり、現在でも多くの人に親しまれている理論です。
従来型とプロティアンキャリアの違いについて
アメリカは「自由の国」と言われていますが、かつてのアメリカ社会においては、「労働者は会社に帰属する」という考え方がありました。
しかしダグラス・T・ホールは、会社への帰属意識から、個々人による契約社会を意識することが重要だと説きました。そしてそのときに考えるべきなのが、「プロティアンキャリア」としたのです。
プロティアンキャリアの考え方
プロティアンキャリアでは、「人が積み上げるキャリアは、会社や組織に属するものではなく、一人ひとりの個人に属するものである」と考えました。
今までは「会社が従業員を帰属させて、長期的な契約関係を築く」というスタイルが定着していたのに対して、プロティアンキャリアでは「会社と従業員は対等な関係であり、短期的な契約を行い続ける」と捉えています。
従来型の基準は「組織の中での評価」
従来型のキャリアの場合、その評価や価値観は組織側にゆだねられることが多く、「組織内での評価」と「自分自身の価値」がイコールである傾向が強かったといえます。
また、「自分は何を行えばよいか」を「組織内」または「組織の一員」として考えることが一般的でした。
個人の満足度が基準であるプロティアンキャリア
プロティアンキャリアの評価軸はあくまで「個人」基準です。
基準となるのは「自分が心理的に満足できているか」であり、自分の価値を決めるのもまた「仕事をしている自分を尊重できるか、誇りを持てるか」という問いへの答えによって左右される傾向があります。
プロティアンキャリアの考えにおける「キャリア」を従来の考え方と比較すると、より個人主義であると考えることができます。そして最終的に目標としているのは、「会社に成功」ではなく、「自分自身が満足できること」にあるとしているのです。
プロティアンキャリア |
従来のキャリア |
|
主体となるのは |
個人・従業員自身 |
会社 |
どんな価値観を重んじるか |
個人の成長や自由 |
組織内における昇進や、権力の掌握 |
移動の頻度 |
高い |
低い |
何を指標・目的とするか |
個人の心理的な満足感と成功 |
組織内における地位の向上や給料のアップ |
「自分自身」をどうとらえるか |
「自分が何をしたいのか」を考える |
「自分は何を行うべきか」を考える |
適応のスキル (アダプタビリティー) |
自分自身がどのような市場価値を持っているのか、仕事においてどのような柔軟性を持っているのかを考える |
現在所属しているスキルに対応して、その組織内でよりよく生き抜くことを考える |
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アイデンティティとアダプタビリティーについても意識しよう
上で少し述べた「『自分自身』をどうとらえるか」と「適応のスキル」について、もう少し詳しくみていきましょう。
プロティアンキャリアにおけるアイデンティティ
「自分自身をどうとらえるか」は、「アイデンティティ」とも呼ばれます。アイデンティティは日本語に訳すと「自己同一性」となりますが、プロティアンキャリアにおける「アイデンティティ」はもう少し狭義の意味で使われることが一般的です。
プロティアンキャリアにおける「アイデンティティ」とは、「自分自身をどうとらえるのか、また自分自身の価値観や能力をどのように評価し、どのように気づけているか」を表す指標として使われます。
従来型の場合は「組織のために〇〇をする」としていたのに対して、プロティアンキャリアの場合は「自分自身が〇〇をしたい」ことがキャリア構築において重要になるということを、この「アイデンティティ」という言葉を使って表現しているのです。
プロティアンキャリアにおけるアダプタビリティー
「適応のスキル」についても見ていきましょう。適応のスキルは、「アダプタビリティー」とも呼ばれています。
プロティアンキャリアにおけるアダプタビリティーとは、
① |
環境の変化に対応するための学習能力 |
➁ |
自分自身を理解するための学習 |
③ |
自分自身の行動と感情の間の矛盾を解消させて、環境の変化に順応すること |
④ |
①~③をよく理解し、咀嚼したうえで、さらにそれを発展させたりかたちを変えたりして、自分自身のキャリアを築いていこうとする心 |
を指す言葉です。
日本語に直すには非常に難しい言葉ではありますが、一言で言えば、「適応するためのスキルと、そのスキルを活かそうとする意志」ということになるでしょう。
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プロティアンキャリアのメリットとは
プロティアンキャリアと従来型のキャリアの違いを紹介したところで、ここからは「プロティアンキャリア」を取り入れるメリットについて解説していきます。
プロティアンキャリアのメリットは、
-
仕事のモチベーションが上がる
-
どんな会社でも活躍できる「自分の能力」のアップに繋がる
-
結果的に「会社にとっても有用な人材」になれる
の3つです。
1つずつ見ていきましょう。
1.仕事のモチベーションが上がる
プロティアンキャリアの考えの元では、個々人が「自分がどのようにしたいか」「自分がどのようなキャリアを積んでいきたいか」を考えて、仕事に取り組むようになります。
自分自身が主体となって、やりたい仕事を積極的行っていくため、仕事に対するモチベーション維持や向上が期待できます。
仕事は「お金を稼ぐための手段」ではありますが、それと同時に、自分の生活にハリを持たせ、人生をより豊かに過ごすための手段ともなりえます。
プロティアンキャリアによる「自分事」としての仕事は個々人のプライベートまでをも豊かにし、積極的に物事に取り組むモチベーションを生み出してくれるでしょう。
2.どんな会社でも活躍できる「自分の能力」のアップに繋がる
プロティアンキャリアでは、「自分中心のキャリアを築けるのがメリットである」とよくいわれています。
しかし、プロティアンキャリアの最終目的・キャリアアップの最終目的は「キャリアを築けること」そのものではありません。たしかにキャリアを築くこと自体もひとつのやりがいと面白さを持つものではありますが、キャリアを積む本当の最終目的は、「積み上げたキャリアによって、どんなところでも働けるようにし、どんなトラブルがあっても解決できるようになること」です。
つまり、プロティアンキャリアの考えに基づき、自分自身のキャリアを積み上げることによって、どんな仕事・どんな働き方でもできるようになっていくのです。
プロティアンキャリアに基づいた「自分自身のキャリア」
自分自身に確固たる知識や技術、キャリアがなければ、職業選択の自由は非常に狭くなります。そのため不利な労働条件で働くことを余儀なくされる場合もありますし、仮に非常に良い職場に就職したとしてもその職場が倒産してしまうと行く当てをなくしてしまいます。そして、時代の変化の波が次から次へと押し寄せてくるこの時代において、このような問題が起こることは珍しくありません。
しかしプロティアンキャリアの考えに基づいた「自分自身のキャリア」を築いておけば、このような問題にも対応しやすくなります。
自分を冷遇する職場から脱却して違う職場を求めることは容易ですし、今の職場がなくなっても行く当てに困ることもありません。
3.結果的に「会社にとっても有用な人材」になれる
プロティアンキャリアは、「自由な働き方」「個々人に所属するキャリア」に注目した概念です。そして、現在のように流動的に人が動く時代においては、このような考えを持つことは非常に重要です。
ただ、実はプロティアンキャリアは「従来型のキャリア」「従来型の働き方」をすべて否定するものではありません。
個人を高めることで組織に役立つ力になる
たとえば、「新社会人として初めて入った会社が、企業理念も良く、福利厚生の面でも問題なく、働く環境も人間関係も悪くなかった。給料も良いので、このままここで働き続けていきたい」「自分が望んで入った会社であり、モチベーション高く仕事もできている。このままここで自分の能力を発揮し続けたい」というビジネスパーソンも少なくないでしょう。
このような状況でも、プロティアンキャリアの考え方は非常に有用です。個々人がそれぞれの能力を高めることで、「組織に役立つ力」を得られるようになるからです。
所属している会社を支える力を高めることによって、給与アップや地位向上といったプラスの変化を受けられるようになることもあるでしょう。
このように、「ひとつの会社で働き続けていきたい」と考えるビジネスパーソンにとっても、プロティアンキャリアの考え方は極めて有用なのです。
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まとめ
ダグラス・T・ホールの考えた「プロティアンキャリア」は、流動的な現在の働き方において、非常に多くの示唆をもたらすものです。もちろんこれが唯一の正解ではありませんが、より良い働き方を考えるときに意識しておきたい理論だといえるでしょう。
Q&A
プロティアンキャリアでは、「自分で考え、自分で決定し、自分でキャリアを積み上げる」というやり方をとることになります。そのため、自分自身で進むべき道を見いだせない人の場合は、キャリアの積み重ねが難しい可能性が高くなります。
「人生100年時代」とよく言われていますが、今は昔に比べて働き続けられる時間が長くなりました。そのため、一人ひとりに求められる役割が多様化したり、今までとは異なる働き方を選んだりといった変化が求められるようになりました。その結果として、より柔軟に対応できる「プロティアンキャリア」の考え方が受け入れられるようになりました。
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