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キャリア - 2024.09.18更新 / 2023.10.22公開
リテンションとは?注目される背景や事例をわかりやすく解説
「リテンション」という言葉をご存知でしょうか?
「リテンション」は、企業の人事領域において、人材の維持や確保のための施策を指す言葉です。
人手不足の企業が多い現代、この「リテンション」は重要なものとなっています。このページでは、リテンションの概要から、リテンションでのキャリアコンサルタントの必要性について解説をします。
リテンションとは
「リテンション(retention)」は、「維持」「確保」を意味する英単語です。近年は、企業の人事やマーケティング領域で用いられるようになっています。
人事領域におけるリテンション
人事領域では優秀な人材を確保し、定着させるための施策を「リテンション」と呼びます。また、こういった施策に力を入れた取り組みを「リテンションマネジメント」「リテンション戦略」などと呼ぶこともあります。
マーケティング領域におけるリテンション
マーケティング領域での「リテンション」は、既存顧客との関係性を維持するための施策を指します。また、既存顧客との関係性維持によって安定した利益を得る取り組みを「リテンションマーケティング」と呼びます。
本記事では、人事領域のリテンションに焦点を当てて解説していきます。
リテンションが注目される背景
優秀な人材の確保・定着のための施策である「リテンション」ですが、日本で注目されるようになった背景には、どのようなものがあるのでしょうか。
少子高齢化による働き手不足
日本では、少子高齢化が深刻な問題です。働き手の主な年齢層となる15〜64歳の人口は、1995年以降、年々減少傾向にあり、今後さらに加速するとされています。
実際に、人手不足を感じている企業は多く、特に中小企業では慢性的な人手不足の状態が続いていると報告されています。
このように人材の確保が難しくなっている中で、効果的な施策を打ちたいと考える組織が増えているのです。
進む人材の流動化
雇用制度や働き方の価値観は変化しています。
例えば、年功序列制・終身雇用制などを採用する企業が減少し、成果主義が主流となりました。転職は珍しくなくなり、同じ職場で働き続けることにこだわる必要はなくなりました。
こういった中で、優秀な人材は市場価値が高く、より良い条件の企業へ転職しやすいため、企業にとって確保し続けることが難しくなっています。
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採用・育成にかかるコストの増加
従業員の入れ替わりが激しいと、採用活動や従業員の育成にかかる人事コストが高くなってしまいます。
実際、転職者が増加傾向になってからの企業の人事コストは、増加傾向にあると報告されています。人材定着はコスト減少に直結するのです。
技術の流出防止
人材育成には時間とコストがかかります。一方で、高い技術を習得した優秀な人材は、良い条件を求めて転職する可能性が高くなります。育成だけで終わらず、自社で活躍してもらう工夫、働き続けてもらう工夫が必要になってきます。
また、単なる人材流出だけではなく、企業の技術やノウハウなどが流出する可能性もあります。そのため、リテンションの施策を通して、社員の定着を図り、技術やノウハウの共有を社内で進める必要があります。
リテンション施策の種類
リテンション施策は、従業員の定着や離職率の低下を促進するために様々な方法で実施されますが、この章では金銭的報酬と非金銭的報酬の2つの施策を紹介します。
金銭的報酬
組織が従業員へ与える金銭的な対価です。具体的には、能力や成果に応じた給与、ボーナス、インセンティブ、福利厚生、各種手当などが金銭的報酬にあたります。
成果に応じた給与・ボーナス・インセンティブ
従業員の労働の対価である給与を適正なものにすることは、非常に重要です。そのためには、適正かつ明確な人事評価を行い、従業員にとって納得感のあるものにする必要もあります。
福利厚生・手当
福利厚生は、雇用保険や住宅手当から、レジャー施設や宿泊施設の割引など様々なものがあります。独自の制度を作っている企業もあります。社員の働きやすい環境を整え、プラスアルファのメリットを設けることで、社員の満足度向上に繋がります。
金銭的報酬だけでは不十分?
報酬としてわかりやすい金銭的報酬ですが、組織が生み出した利益の中から支給するため、上限があります。
また、働き方への価値観が多様化している現代、金銭面よりも「ライフスタイルに合わせて働きたい」「余裕を持って働きたい」という層も多くいます。金銭的報酬でだけでは、十分にリテンションの効果を出せるとはいえません。
そのため、次に紹介する非金銭的報酬を併せて行うことが重要になってきます。
非金銭的報酬
非金銭的報酬は、従業員の働きやすさや働きがいなどにつながる、金銭以外の報酬です。
働きやすい環境の整備
従業員にとって働きやすい環境を整えることもリテンション施策の一つといえます。例えば、テレワークの導入や時短勤務、フレックスタイム制の導入が挙げられます。
また、デスクや椅子、空調、休憩スペースなど、物質的な部分でも働きやすい環境を作ることができます。
業種や職種により出来ること・出来ないこともありますが、自社に適した働き方の選択肢や、快適な働く場所を提供することは、従業員の働きやすさにつながります。
社内コミュニケーションの活性化
社内のコミュニケーションが活発に行われていると、課題を従業員同士で共有できる、悩みを誰かに相談できる、といった心理的な安心感が生まれます。
また、部署を越えた情報交換を行うこともでき、新しい意見や案が出やすくなったり、業務がスムーズに進められるといったメリットがあります。これらは社員間の結束にもなり、雰囲気の良い社内環境になるでしょう。
また、上司から部下への伝達やアドバイスなどがスムーズに行われる、経営理念や方針が浸透しやすくなる、という点もあります。
活発なコミュニケーションは、社内文化として根付くまで、地道に取り組む必要があります。研修などで従業員に必要性を伝え、それぞれの現場で浸透していくよう呼びかけることが必要です。社内イベントなど、部署の垣根を越えた交流の場を設けることも有効です。
従業員のスキルアップ支援
従業員のスキルアップ支援を重視する企業は増えており、7割以上の企業が取り組んでいるとされています。従業員のスキルアップが企業の生産性向上につながると期待されています。
スキルアップ支援の取り組みとして多いのは、資格取得支援、次いで社内研修です。若手従業員だけではなく全従業員を対象に行う企業も増えています。
スキルアップの場があることは、やる気のある社員にとっては魅力であり、そういった制度を設けている企業に対しての信頼につながります。
効果を発揮するスキルアップの方法・コツを紹介! | リカレントcounselor |
従業員のキャリア形成支援
従業員それぞれが、どのようにキャリアを積みたいか、そのためにはどうすればいいかを明確にすることは重要です。目標が明確になることで仕事へのモチベーションが上がり、職場定着につながります。
ジョブローテーションや社内公募など、新たな環境で能力開発に取り組めるような制度や、外部講師などを招いてキャリアについて考えるセミナー・研修を実施、キャリアカウンセリング制度を設けることも有効です。
働き方や価値観は多様化しています。理想のキャリア形成も従業員それぞれ異なってきます。幅広い選択肢と活躍の場を用意することが重要です。
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リテンションにおけるキャリアコンサルタントの役割
リテンションの施策において、キャリアコンサルタントの役割は大きなものになります。
従業員へのキャリア形成支援では、従業員一人ひとりの強みや経験、要望に合わせたキャリアプランを立てる必要があり、これを行うには、キャリアコンサルタントの専門スキルが必要です。
また、従業員へのスキルアップ支援においても、その人にはどういったスキルアップが必要か、その人が望むキャリアプランのためには、どのようなスキルが必要かといった的確なアドバイスを行うことができます。
そのほか、キャリアコンサルタントによる定期的な面談を行うことにより、従業員の抱える問題をクリアにしたり、「相談できる人がいる」という安心を与えることができます。また、企業に対して社内環境や制度改善の提案を行ったり、企業と従業員の橋渡しの役割をすることもできます。
このようなキャリアコンサルタントの役割は、人事に所属する社員が資格を取得して対応するケースや、外部のキャリアコンサルタントに委託をして実施するケースもあります。
まとめ
このページでは、「リテンション」について解説してきました。リテンションを強化することは、従業員にとって働きやすい環境がつくられ、それにより企業への定着率が上がり、従業員と企業双方にとってプラスの効果がうまれます。
リテンションにおいて、資格を持ったキャリアコンサルタントが関わることは従業員にとっても安心であり、より効果のある適切な施策が行われると期待されています。
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