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キャリア - 2024.09.16更新 / 2024.04.29公開
【事例あり】組織を変えるリバースメンタリングとは?
「リバースメンタリング」という言葉をご存知でしょうか?
リバースメンタリングは、通常のメンタリングの逆の手法で、若手従業員がメンターとして中堅以上の従業員などに助言や指導を行うものです。
日本ではまだまだなじみのないリバースメンタリングですが、導入する企業や自治体も増えてきています。
リバースメンタリングとは何か
リバースメンタリングとは
リバースメンタリング(reverse mentoring)とは、一般的なメンタリングの役割を逆転させて行うものです。
そもそもメンタリングとは何か、ビジネスシーンを例にとって説明します。
そもそもメンタリングとは
一般的なメンタリングは、上司や先輩が若手従業員の手本となり、仕事やキャリアなどの助言・指導を行い、サポートをするものです。
サポートを行う人を「メンター(Mentor)」、サポートを受ける人を「メンティー(Mentee)」と呼び、日本でも「メンター制度」(メンター・メンティー制度)として導入している企業も多くあります。
「メンター」「メンティー」「メンター制度」について詳しく知りたい方は次の記事を参考にしてみてください。
メンター・メンティ―とは? 役割や事例を紹介 | リカレントcounselor |
リバースメンタリングの場合は、若手従業員がメンターとなり、上司や先輩に対して助言や指導、提案を行います。
この逆転した役割から、「逆メンター」「逆メンタリング」などと呼ばれることもあります。
リバースメンタリングが生まれた経緯
リバースメンタリングは、1999年に米国ゼネラル・エレクトリック(GE)の人材育成制度として採用されたことから広がったとされています。
提唱したのは同社のジャック・ウェルチ会長(当時)で、実際に自身もメンターから教えを受け、インターネットの使い方などを学んだそうです。
若手従業員から学びを得て組織の力を高めた成功例として、同社の取り組みは米国の他企業へと広がりました。
主に、最新の技術の知見を得る目的で、多くの企業に浸透していったとされています。
リバースメンタリングでは何がテーマになるのか
リバースメンタリングでは一般的に、若手が得意とし、上の世代が苦手とする分野がテーマとして取り上げられる傾向があります。
先のゼネラル・エレクトリック社の例では、当時は普及過程にあったインターネットなどをテーマとしていました。
今注目されているテーマもデジタル領域のものが多いですが、ダイバーシティやバイオエネルギーなど多様化しています。
注目されるデジタルネイティブ世代からの助言
1990年代後半から2010年代前半に生まれた世代は「Z世代」と呼ばれており、デジタルネイティブという言葉に代表されるように、インターネットやSNSとの接触機会、活用方法などに長けているとされています。
こういった世代からデジタル関連の助言や指導を受けることに注目が集まっているのです。
スキルだけではなく新しい価値観や視点を学ぶ
加えて、当初はリバースメンタリングは新しい知識やスキルを学ぶことが目的でしたが、学びの範囲も広がり、価値観や視点、考え方にも注目が集まるようになりました。若手から今の消費者の考えや
市場ニーズを知るなど、今後のビジネスを見極める知見を得ることができると期待されています。
また、世代間での働き方や意識の違いなど、ギャップを埋めていくようなこれらの取り組みは、多様性を認め、お互いを高め合いながら関係を構築していく組織づくりに関わってきます。
リバースメンタリングはなぜ注目されるのか
リバースメンタリングが注目される背景
リバースメンタリングに注目が集まる理由のひとつとして、時代の変化の激化が挙げられます。
変化が激しく、予測が困難であるVUCA時代では、今までの知識や経験では対応できない状況が起こることも考えられます。
特にビジネスにおいては、市場ニーズが掴めなくなる、これまでの商品・サービスが売れなくなる、自社を取り巻く環境が一新され業態が全く変わってくる、など様々な事象が想定されます。
予測不能なVUCA時代
中堅以上の世代の知見だけでは予測できない時代に突入したことによって、若手従業員の知識、価値観を積極的に取り入れる必要が出てきたといえるでしょう。
また、労働力不足の中で人材確保・定着の必要が高まっており、若手人材を受け入れる体制を整備する必要も出てきました。
若手人材にとって、会社と考え方が合うか、自身の価値観を受け入れてくれる会社かどうかは、働き続けるモチベーションに関わります。
雇用体制の変化
多くの企業で、これまでの組織のあり方は変化し、縦割り・年功序列の体制が廃止されつつありますが、単に体制を変えるだけでなく、実質的にも若手が活躍・評価される仕組みづくりが必要です。
若手ならではの強みを活かせる組織が生き抜ける時代になってきているといえるでしょう。
リバースメンタリングのメリット
リバースメンタリングにはどういったメリットがあるのか、詳しく解説します。
新しい知見が共有される
若手従業員から新しい知見が共有されることで、上の世代にも成長機会がもたらされることがメリットのひとつとして挙げられます。
仕事に関する新たな学び・成長の機会は年代が上がるにつれ少なくなるという報告もありますが、若手従業員から学ぶというということは新鮮な体験になるでしょう。
組織に多様な考え方や価値観が反映される
リバースメンタリングを導入することで「この会社では(この部署では)こういうやり方・考え方」といったバイアスが取り払われ、多様な考え方・価値観を反映する組織になることが期待できます。
組織の中に多様性があると、様々なアイディアが創出されやすくなり、商品・サービスといった事業そのものにも良い影響が期待できる他、組織に認められているという安心感も生まれます。
コミュニケーションが活発になる
リバースメンタリングでは、メンターとメンティー間でのコミュニケーションが活発になる他、組織内でも世代に関係なく会話しやすい空気が生まれます。そのため、従業員それぞれが自身の意見をフラットに伝えやすい環境になります。
従業員の満足度につながりリテンションの効果が期待できる
リバースメンタリングを通して、他の従業員とコミュニケーションが取りやすく、自身が認められていると感じることが、キャリアに関して不安や迷いを抱えやすい若手従業員の心理的なサポートになります。
若手がいきいきと働き、活躍できることはもちろん、離職・転職防止につながり、人事的なリテンションのメリットもあります。
リテンションについて詳しく知りたい方は次の記事を参考にしてみてください。
リテンションとは?注目される背景や事例をわかりやすく解説 | リカレントcounselor |
効果的なリバースメンタリングを行うために
ここでは、効果的にリバースメンタリングを行うためのポイントをいくつか紹介していきます。
目的を明確にする
目的を明確にすることで、組織側と従業員側に共通した認識が生まれます。
経営層、人事部などの担当部署、上司、若手従業員など、関係者それぞれが、目的を理解している状態で実施をすることが好ましいでしょう。
互いの価値観を知る取り組みであることを大事に
リバースメンタリングでは、一般的に若手従業員と中堅以上の従業員では、世代間ギャップが発生しているケースが多いため、互いの価値観を尊重することが重要であるといえます。
互いの価値観を理解し合うことも、取り組みの狙いであることに留意しておきましょう。
取り組みを評価に反映させる
リバースメンタリングに限らず、メンター業務を担った従業員の頑張りを評価に反映させることは重要です。
メンターを担う若手従業員は、自身の業務にプラスしてその役割を受け入れることになるので、その分負荷がかかります。
また、自身よりも勤続年数が多く、役職も上である従業員のメンターとなることは、大きなプレッシャーと緊張を伴います。
メンターとしての役割と負荷、そして取り組みの度合いを理解し評価することはメンターのやりがいにもつながるでしょう。
リバースメンタリングを活用しよう!
リバースメンタリングの実施方法
この章では、リバースメンタリングの導入手順を確認していきます。
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テーマの設定
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対象者の選定
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目的の共有
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オリエンテーション
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効果測定
順番にみていきましょう。
1.テーマの設定
リバースメンタリングのテーマを設定します。テーマは、参加者が関心を持ち、共有できるトピックや課題を指します。例えば、技術革新への取り組みなど、テーマは参加者が議論を通じて具体的なアクションや成果を生み出せるように選定されます。
2.対象者の選定
リバースメンタリングの対象者として、若手従業員と中堅以上の従業員を選定します。若手従業員は新しい視点やアイデアを持ち、中堅以上の従業員は経験や知識を持っています。両者が対等な立場で学び合える関係が望ましいです。
3.目的の共有
リバースメンタリングの目的やテーマを、参加者に明確に共有します。参加者には、自分たちがメンターとメンティーになることでどのような効果が期待されているのか、どのような成果を生み出すことが目指されているのかを理解してもらいます。
4.オリエンテーション
リバースメンタリングのプロセスやルール、期待される役割について、参加者にオリエンテーションを行います。
5.効果測定
リバースメンタリングの効果を測定し、評価します。参加者や関係者からのフィードバックやプログラムの成果を定量的または定性的に評価し、プログラムの改善や継続的な導入のための学びを得ます。効果測定により、プログラムの成功や課題を把握し、今後の改善に活かします。
リバースメンタリングの事例
最後に、リバースメンタリングを導入した企業の事例をご紹介します。
株式会社資生堂
資生堂では、若手従業員が幹部に、デジタル技術や消費トレンドを教え、新規事業を議論する機会を設けています。
同社は、日本企業に多かった縦割り・年功序列の風土が強く、世代を超えたコミュニケーションの少なさを課題と捉えていたそうです。
若手従業員と役員・部長職などが、リバースメンタリングを通して、双方の本業に刺激を与え、異なる世代の価値観を共有し、さらに部門の垣根も越えた人脈づくりがなされることを期待したとのことです。
リバースメンタリングの交流会には延べ1千人が参加しました。テーマは設定しますが、自由な雑談も妨げず、日常業務では生まれにくいオープンでフラットな対話を意識しているそうです。
参加者からは「若い社員から刺激を受けた」「普段話すことのできない他部署の先輩と話すことができ、キャリアの参考にしたいと思った」などの声が上がっています。
まとめ
このページでは、リバースメンタリングについて解説してきました。
リバースメンタリングとは何か、注目されるようになった背景とメリットは何か、導入のポイントや、具体的な導入事例などをまとめました。
リバースメンタリングを導入することで、組織全体のパフォーマンスが向上し、新たな成長の機会が広がるでしょう。
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