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キャリア - 2024.10.25更新 / 2023.06.21公開
サビカスのキャリア構築理論~その成り立ちや意味、解釈について
「より良いキャリアを考えていこう」「より自分らしく生きよう」とする考えのもとで、さまざまなキャリア理論が生み出され、発展していきました。「サビカスのキャリア構築理論」もまた、そのような考えのなかで生まれた概念のうちのひとつです。
サビカスのキャリア構築理論とは何か
サビカスのキャリア構築理論は、一人ひとりが異なる考えや価値観を持ち、それは年齢や状況、経験によって変化していくことを前提としています。そして、変化する自分自身と変化の激しい社会・環境とを柔軟に適合させながら、自分らしい価値のあるキャリアを築こうとするものです。
これは、パーソンズやホランドの特性因子理論とスーパーのキャリア発達理論を統合・発展させた21世紀を生きる人々のために作られた理論とされています。
サビカスのキャリア構築理論の前に、特性因子理論とキャリア発達理論について簡単に触れておきます。
特性因子理論
特性因子理論はマッチング理論とも言われ、個人の特性と職業をマッチングさせるための理論です。カウンセラーが主導となり、心理テストや検査なども用いて個人の特性を測りマッチングをすることで、適した職業選択をする、というものです。
スーパー(ドナルド・E・スーパー)のキャリア発達理論
スーパーが活躍した時代は1900年代で、彼の提唱したこれらの理論は「キャリア(理論)の古典である」として重んじられています。
スーパーのキャリア発達理論には、重要なワードとして「自己概念」「ライフステージ」「ライフロール」があります。
「自己概念」 |
「自分らしさ」。自己概念は人生の中で様々な影響を受けながら変化し、人生を通じて形成されていくものだとしている。 |
「ライフステージ」 |
人生を年齢で5つの段階に分けたもの。 |
「ライフロール」 |
人生における役割(子供、学生、労働者など)。 |
スーパーのキャリア発達理論は、変化していくライフステージで、そのときどきの役割を演じながら、「自分らしく」キャリアを形成していく、という理論です。
サビカスのキャリア構築理論は、この特性因子理論と、スーパーのキャリア発達理論を、現在の21世紀に合うように構成し直したものだと考えるとよいでしょう。
次の項目からは、これを元に、「サビカスのキャリア構築理論とは何か」について解説していきます。
サビカスのキャリア構築理論における「3つの大切な概念」
サビカスのキャリア構築理論を理解するうえで、必要不可欠となる概念が以下の3つです。
・職業的パーソナリティ
・キャリア適合性
・ライフテーマ
それぞれ見ていきましょう。
職業的パーソナリティ
私たちはしばしば、「社会人」「20代の若者」「〇〇大学を卒業した人」「××の資格を持った人」というように大きなくくりで分類されます。
しかしこの世の中には「同じ人」は当然一人もおらず、100人がいれば100通りの、1000人がいれば1000通りの考え方があります。また、それぞれに異なる能力やニーズを持っています。
この、「個人が持っている、キャリアに関係するニーズや考え方、興味、そして能力」を「職業的パーソナリティ」と呼びます。
この考え方自体は、先に説明した「特性因子理論」のなかにも存在します。しかし特性因子理論の場合は、「個人と職業をマッチングさせること」を主目的とし、個人の特性を客観的に測るものでした。そのため、一面的な判断になるという課題もありました。
しかし、サビカスの「職業的パーソナリティ」の場合は、「個人が環境(職業)とどの程度あてはまりそうなのか?」を測るための、あくまでも「手がかり」であると考えています。
キャリアに対しての解釈や考え方は人によって異なり、状況やその時々で変化するものなので、その人にどういう職業が合うかを、客観的で固定的に判断するのではなく、ある程度その人の主観も踏まえて柔軟に捉えるのが現実的だとしています。
キャリア適合性
「キャリア適合性」は、「キャリア・アダプタビリティ」とも記されるものです。
キャリア適合性は、「現在あるいは直近の職業的発達課題、職業的移行、個人的トラウマなどに対処するための個人のレディネスおよびリソース」と定義されます。
※レディネス…学習に必要な準備が整っている状態
参照)労働政策研究・研修機構
少し難しい表現ですが、噛み砕くと、「時代の変化や転職などの身近な変化、キャリアに関連した課題、これから自分に起こり得る問題などに適応していくこと」を指します。
以前の理論では、人と環境の適合性を考えるときは、人と環境のそれぞれを細かく分析していました。しかしサビカスのキャリア構築理論の場合はこれが少し柔軟であり、「人と環境が完全に一致することはないのだから、それぞれの意味や解釈を変化させながらすり合わせて、キャリアを作っていこうとすることが大切である」としたのです。
サビカスは、キャリア適合性を高めるための4つの要件として、「関心」「統制」「好奇心」「自信」を挙げています。詳細はこちらの記事でも紹介しています。
キャリア・アダプタビリティとは? 個人や企業で取り組めることを解説 | リカレントcounselor |
ライフテーマ
仕事は、単純にお金を稼ぐための手段だけではありません。8時間労働で週に5日働くとすれば、青年期〜引退までの人生の約4分の1が仕事に占められています。そしてこのように人生の少なくない割合を占める仕事だからこそ、そこには常に、「なぜその仕事をしているのか」「最終的に求めている到着点は何か」を考える必要があります。
長期的な目標を持ち続け、一貫したキャリアを形成することが難しい状況において、キャリアに統一感を持たせ、価値のあるものにする枠組みが「ライフテーマ」になります。
カウンセラーと二人三脚で行っていく「職業相談」
サビカスは、キャリアカウンセリングやコンサルティングの場では、相談者の「ライフテーマ」を明らかにするのが重要だとし、そのための5つの質問を用意しました。
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だれを尊敬していましたか?
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雑誌やテレビ番組を定期的に見ますか? その中で好きなものを教えてください
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好きな本や映画の内容を教えてください
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好きなことわざやモットーは?
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あなたの幼い頃の印象に残っている思い出について教えてください
これらはごく単純な質問であるように見えますが、深い意味のある質問です。専門家はその問いかけを通して、カウンセリングを受けている人に対して、本人の人生の振り返りを促します。
一見すると「キャリア」とは無関係に思えるこのような質問とその回答こそが、その人のキャリア構築の土台となるライフテーマ探索において有用であると、サビカスのキャリア構築理論は説いているわけです。
まとめ
サビカスのキャリア構築理論は、今まで引き継がれてきたキャリアに関する理論を考え、21世紀に適合するかたちにした理論だといえます。「今まで引き継がれてきた理論」があるからこそサビカスのキャリア構築理論が作り上げられたわけですから、もちろんそこには単純な「良し悪し」は存在しません。ただサビカスのキャリア構築理論の考え方は、現在により即したものだといえるでしょう。
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