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キャリア - 2024.10.16更新 / 2023.02.24公開

「ナンシー・K・シュロスバーグの理論」転機を乗り越える4つのSとは?

「シュロスバーグの理論」と聞くと、なにやら難しそうに聞こえますが、人生で遭遇する「転機」についての代表的な理論です。

転機に遭遇した時の考え方や乗り越え方の例など、日常的に起こる小さな転機にも有効な「シュロスバーグの理論」を、このページではわかりやすく解説をしていきます。

ナンシー・K・シュロスバーグ、その経歴について

ナンシー・K・シュロスバーグは、メリーランド大学でカウンセラー教育を行い、全米キャリア開発協会の会長も勤めました。

1929年生まれの彼女が生み出した理論は、「ナンシー・K・シュロスバーグの理論」として、広く知られています。その功績が特に認められた学者のうちのひとりであり、多くの経営者にとって有益となりうる理論を展開しました。

転機を乗り越えるための3つの段階

ナンシー・K・シュロスバーグの理論は、要約すると、「人生には転機があり、その転機を乗り超えるための力となる3つの考え方がある。そしてその3つの考え方のなかにも、種類とステップがある。そしてそれらは、お互いに密接に関わり合っている」としています。

それでは、その「転機を乗り越えるための考え方」と、「それぞれの種類・ステップ」はどのようなものなのでしょうか。

①転機を見極める

シュロスバーグは、年齢や段階によるものではなく、個人における出来事を「転機」として捉えています。どのような人の人生にも、それが他人から見れば些少なものであったとしても、必ず転機は訪れます。

転機はイベント型とノンイベント型に分類されています。
 

イベント

  1. 予期していた転機

  2. 予期していなかった転機

ノンイベント

  1. 期待していたことが起きなかったという転機

 
それでは順番にみていきましょう。

【イベント】予期していた転機

「予期していた転機」とは、「ある程度自分で選択することができた転機」をいいます。

たとえば、結婚や就職、引越し、子どもの誕生などがこれに当たります。自分がコントロールできる範囲で起きた転機であり、不安などはあっても「転機が訪れたこと自体に対する驚き」は生じません。

【イベント】予期していなかった転機

「予期していなかった転機」とは、「予期していた転機」と対比されるものです。こちらは自分にはコントロールできない転機のことをいいます。

たとえば、親族などが突然亡くなってしまうことや、天災・事故に巻き込まれた場合などが、この「予期していなかった転機」にあたります。

【ノンイベント】期待していたことが起きなかったという転機

「きっとこういうことが起きるだろう!」と期待していたにも関わらず、その出来事が起きないことが「期待していたことが起きなかったという転機」です。

たとえば、「今年は昇進すると思っていたのに、昇進しなかった」「希望していた配属先に異動になると思っていたが、ならなかった」「〇才までに結婚、と思っていたができなかった」などの事例がこれにあたるでしょう。

転機は変化をもたらす

シュロスバーグの理論は、イベント、ノンイベントともに「転機」と捉えるところが特徴的で、期待していなかったことが起こっても、期待していることが起こらなくても、結果的に変化をもたらすと考えます。

また、転機に見舞われた場合は次のような変化を伴うとされています。
 

  1. 人生の役割

  2. 人間関係

  3. 日常生活

  4. 自分に対する見方

 
そのため、自分になにが起きたのかを理解したのち「それで生活はどう変わるのか」「役割はどんなものになるのか」「それによって人間関係はどう変わるのか」などを考えることになります。そして、そういった変化をプラスにし、転機を乗り越えるために、次の「リソースの点検」が重要になります。

②リソースの点検~転機を乗り越えるための4つのSを意識する

転機の見極めの次は「現在持っているリソースはどんなものか」を確かめる段階に進みます。「リソース」は転機を乗り越えるために必要なものです。

シュロスバーグは4つのリソースを挙げていて、そのすべてが”S“の頭文字を持っているため「4つのS」とされるようになりました。
 
「転機を乗り越えるための4つのS」
 

  1. Situation(状況)

  2. Self(自分)

  3. Support(支援)

  4. Strategy(戦略)

 
それぞれ順番に見ていきましょう。

Situation(状況)

ここで言う「状況」とは、その転機が自分にとってどんな意味を持つのかを判断することをいいます。
 

原因

このような状況がおきた原因は何か。何を選択したことで生じたのか。

 

予期

現在の状況は社会的に予測することが可能であったか。突然起こったことなのか。

 

期間

一時的なことなのか、永続的なことなのか。

 

体験

同じような転機を経験したことがあるか。その時の気持ちや状態はどうか。

 

ストレス

現在の問題以外に抱えているストレスはあるのか。

 

認知

現状況をどの様に捉え、受け止めているか。好機なのか、危機なのか。

 

Self(自分)

訪れた転機を理解し乗り越えるために、自分の感情の動きを理解していきます。
 

仕事の重要性

仕事はどの程度重要か。どの部分(地位、給与等)に興味があるのか。

 

仕事と他のバランス

仕事、家庭、趣味、地域のバランスをどう考えるか。

 

変化への対応

変化への対応はどのようにするのか。立ち向かうのか、受容するのか。

 

自信

自分に対する自信はあるか。新しいことに挑戦しようとしているか。

 

人生の意義

人生にどのような意義を持っているか。

 

Support(支援)

「人からの手助け」は、転機を乗り越えるための力になりえます。そのため、転機を乗り越えるためには「どんな支援が得られるのか」も考えておく必要があります。

ビジネスで関わりのある人物や、第三者などからの支援は期待できるかなども考えておくとよいでしょう。
 

良い人間関係

必要とする援助を他人、友人、家族から得られるか。

 

励まし

自分の成功を期待し励ましてくれる人はいるか。

 

情報

仕事を探す方法、企業や雇用に関する情報などを収集できるか。

 

照会

解雇された時の経済的支援制度等に関する知識や情報の提供者はいるか。

 

キーパーソン

重要な情報を提供してくれる人はいるか。その人からの支援は望めるか。

 

実質的援助

経済的支援など実質的な援助を望めるか。

 

Strategy(戦略)

“S”の最後の1つは「戦略」です。これは、状況・自分自身・支援を確認・分析した後に講じるものです。その転機を乗り越えるために有効な手段は何なのかを考えていくことをいいます。
 

状況を変える対応

職探し、新たなトレーニングを受ける等を実行しているか。

 

認知・意味を変える対応

転機の持つ意味をプラス思考に変えようと試みているか。

 

ストレスを解消する対応

リラクゼーションや運動等でストレス解消を図っているか。

4S 出典)労働政策研究・研修機構 | キャリア・カウンセリングの概念と理論

たとえば会社を解雇になったのであれば、「労働基準局に相談する」「解雇を撤廃せよと求めて戦う」「弁護士を雇って、できるだけ高い金額で解決金を受け取れるようにする」などがこの「戦略」にあたります。

ただ、このように「相手(の決定)を変えようとする戦略」は、しばしば非常に大きな疲労感をもたらします。だれかと戦うことは、多くの人にとって非常に重荷になるからです。そのような辛さを味わいたくないのであれば、あえて「自分を変えていく」という戦略を取っても良いでしょう。

たとえば「興味のあった未経験業界に飛び込むきっかけにする」「無職になったのを機に、仕事とプライベ―トのバランスを変える」などのような選択肢もまた、「戦略」だといえます。

ちなみに、戦略はどれか1つに絞る必要はありません。むしろ複数の戦略を練った方が、スピーディに転機を乗り越えられると考えられています。

③転機を受け止める

転機を受け止めるためには、上で述べた「リソースの確認」を行い、それに基づいた行動計画を練り、必要に応じてそれを実行していく必要があります。そしてこれらが上手く稼働した場合、たとえ時間がかかったとしても、人は自らに訪れた転機を受け入れることができるようになるといえます。

転機のただ中にいるとき、人は非常に疲弊します。しかしどのようなかたちであっても、その転機はやがて終わりを迎えます。この「転機の終わり」を迎えて初めて、人は自らの人生に転機が起きたことを受け止められるようになるのです。

まとめ

私たちの人生には転機が訪れます。そしてその転機には、自分でコントロールできるものもあればコントロールできないものもあります。

シュロスバーグは「転機」が起こった際に自分がどう受け取り対処していくか、またそれをプラスとして活かすことができるかを重要と考えました。

イベントもノンイベントも「転機」として捉えることによって、リソースの点検を行い、転機を乗り越え受け入れることができます。日常で起こる小さな転機でも、シュロスバーグの理論を意識してみると、なにか気づきがあるかもしれません。

キャリアに関する理論はこちらの記事でも紹介しています。

 

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【キャリアに役立つ】クランボルツの「プランドハップンスタンス理論」とは? | リカレントcounselor

 

Q&A

ナンシー・K・シュロスバーグの理論は個人だけのもの?
組織の転機にも有効
ナンシー・K・シュロスバーグの理論は主に個人をターゲットにしていますが、組織の転機においても使うことができます。
特に、従業員一人ひとりのキャリア構築を考えるうえで役立ちます。
この理論を知ることの意味とは
転機を乗り越えられるだけでなく、ストレスの軽減にもなる
ナンシー・K・シュロスバーグの理論は「転機を乗り越えるためのもの」ですが、ストレスを軽減するためにも有用です。
転機は、それがマイナスの意味を持つ場合はもちろん、プラスの意味を持つものであっても、「『変化する』というストレス」を人に与えます。
しかし転機を早く乗り越えることによってこのストレスを解消できます。また、転機を上手く乗り切れたという自信を、人に与えてくれます。
転機を乗り越えるための段階を教えてください
①転機を見極める
②リソースの点検
この2つの段階を経て「転機の終わり」を迎えることにより、
③転機を受け止める
ことができます。
ナンシー・K・シュロスバーグについて教えてください
ナンシー・K・シュロスバーグは、メリーランド大学でカウンセラー教育を行い、全米キャリア開発協会の会長も勤めました。
彼女が生み出した理論は、「ナンシー・K・シュロスバーグの理論」として、広く知られています。

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