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キャリア - 2024.09.26更新 / 2023.05.25公開
自己効力感とは? 概要から高める方法まで徹底解説
学業やビジネスなど、あらゆる場面で「自分ならできる」という自信は重要です。しかし、困難や難しい問題に直面すると「自分には無理だ」と足が止まってしまうこともあるのではないでしょうか。
本記事では、自分を信じやり抜くための「自己効力感」について解説していきます。
自己効力感とは何か
自己効力感:セルフエフィカシーとは
「自己効力感:セルフ・エフィカシー(self efficacy)」とは、目標達成のための行動を自身が遂行できると信じている状態のことです。自己効力感は自己可能感と呼ばれることもあります。
私たちは様々な場面で、「こういう結果を出したい」と目標を立てて行動しています。その際に、「自分ならうまくやり遂げられる」「自分の能力ならうまくいくはずだ」と予期できる状態が自己効力感です。
自己効力感は、1970年代にスタンフォード大学教授バンデューラ博士によって提唱された概念です。社会的認知理論の中の心理学用語として用いられていました。
バンデューラ博士は、恐怖症を克服した人の中にある共通点を発見しました。それは、自分は困難を克服できる、現状を変えることができると信じるようになったことです。
「自分はできるという状態」つまり自己効力感が、人間の行動に大きな影響を与えることや自己効力感を継続できる人の特徴、重要性なども明らかになっていきました。
自己効力感と自己肯定感の違いとは
「自己効力感」と混同されやすい言葉に、「自己肯定感」があります。
「自己肯定感」は心理学の用語で「self esteem」と訳され、「自己効力感(self efficacy)」とは異なりますが、「自己肯定感」が自分を肯定する”感情”であるのに対し、「自己効力感」は自分の能力の”認知”を前提にしています。
「自己肯定感」の高さは、自分が能力を持っているかどうか、また、能力の有無を判断しているかどうかに必ずしも関係しません。無条件に自分を信じることができる感情と言い換えられます。
対して、「自己効力感」は、目標達成のための能力を自分が持っていると認識して初めて高まるものです。
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自己効力感が重視される理由
心理学の用語として生まれた自己効力感ですが、用いられる場面は広がっています。
自己効力感は、人のモチベーションを高める、行動を変化させる、行動を増やすといったことにつながってきます。そのため、ビジネスや教育、予防医学など様々な分野で使われるようになりました。個人だけではなく組織や社会にとっても、自己効力感が重要であることが認知されていったのです。
自己効力感のタイプ&メリットを知ろう!
自己効力感の3つのタイプ
自己効力感は3つに分類できるとされています。それぞれ解説します。
自己統制的自己効力感
自己統制的自己効力感とは、自分の行動をコントロールすることができる自己効力感です。
初めて経験することや困難に思える事態に直面しても、「自分にならできるはずだ」と自分を信じて前向きに臨むことができます。
また、失敗したとしても「次はこうしてみよう」と、ポジティブに捉え、新たな行動に移すことができます。
一般的に「自己効力感」という場合、この「自己統制的自己効力感」を指していることが多いです。
社会的自己効力感
社会的自己効力感とは、対人関係の中で発揮される自己効力感です。
家族、友人、同僚など、他者の気持ちを理解し、良い人間関係を築けると自身を信じることができる状態です。
社会的自己効力感が高い場合、他者に共感し、寄りそいやすくなります。
また、関係を築くことが難しい人に対しても、「自分なら仲良くなれるはずだ」と信じて接することができます。結果的に、周囲とトラブルを起こすリスクは少なく、社会の中でうまく過ごしやすい人になることができます。
社会的自己効力感は、特に乳児期から児童期の社会性が発達する時期に最も発達し、成長した後も保たれるとされています。
学業的自己効力感
学業的自己効力感とは、学業に対する自己効力感です。
良い成績を収める、受験で成功するなど、学業で成果を出した人は高まりやすいとされています。
また、高い学力を持っているほど自己効力感も高くなり、自己効力感が高いと学業に対する満足度も高いことがわかっています。この2つは強い相関関係にあるのです。
学業的自己効力感は、学生のうちだけ働くものではありません。社会人になってからも、新しいスキルや知識を習得する必要があります。
過去に学業で成功体験がある人、つまり、学業的自己効力感の高い人は、そのような場面でも「自分ならば習得できる」と自信を持って取り組むことができます。こういった姿勢は、仕事の成果ややりがいにもつながっていきます。
自己効力感が高い状態にあるメリット
先にも述べましたが、自己効力感の高い人は行動を起こしやすく、失敗しても考えを変えて前向きに挑戦できるという特徴があります。
目標が達成しやすくなることはもちろん、達成することでさらに能力を上げ、自己効力感が高まっていくという、好循環が生まれます。
一方で、自己効力感が低い人は「自分には無理」「失敗が怖い」という感情が大きくなるため行動に移りづらく、失敗した際にさらに自己効力感が低くなってしまいます。
このように「自己効力感」によって、圧倒的な差が生まれてしまうのです。
自己効力感の具体例
具体例で考えてみましょう。例えば、ある企業に新しい部署ができたとします。
人材として配置された2人の従業員、一人は自己効力感が非常に高く、もう一人は自己効力感の低い状態にあります。
新しい部署で前例のない仕事に対し、自己効力感の高い従業員はポジティブに捉え、失敗を過度に恐れず様々な提案をし、実行することができるはずです。
自己効力感の低い従業員は、やったことないことへの不安からあまり行動ができないかもしれません。
加えて、新しい同僚との関係構築の面でも不安を抱く可能性があります。結果的に、「自分は新しい環境でやっていけない」「失敗している」と思ってしまう可能性があります。
自己効力感の高い人にとっては、あらゆる状況がチャンスになりますが、自己効力感の低い状態にある人はチャンスと思わず、自分を追い込んでしまいやすくなるのです。
これは、企業の中だけでなく様々な場面に置き換えて考えられることです。対人関係や学業など、私たちが成功を収めるときはいつも行動が起点になっています。
成功や目標につながる行動を増やす、行動できる自分になることが、人生に良いサイクルを生み出します。
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自己効力感を高めよう!
これまで、自己効力感の重要性を詳しく説明してきました。
それでは、自己効力感はどうやって高めることができるのでしょうか。自己効力感に影響を与える4つの要因、そしてそれらを高める方法を解説します。
自己効力感に影響を与える4つの要因
達成経験
成功体験と言い換えることもできます。
自分自身の力でやり遂げたという体験は自己効力感に影響してきます。困難を乗り越えた、苦手を克服した、うまくやり遂げたという経験は、「自分ならできる」という自信につながるからです。
反対に、失敗の経験はどうでしょうか。人は何度も失敗が重なると「自分にはできない」と思うようになり、自己効力感が低下してしまいます。
ポイントは、小さな達成経験を少しずつ積み重ねることです。自分のレベルに合わせて取り組むことが重要です。
代理体験
他者の行動を観察し、あたかも自分がその状況にあるようにイメージする体験です。周囲の成功している人を、ただ「すごい」と眺めるのではなく、どのように取り組んでいるのか観察し、何が成功の要因になっているのか考えます。
このプロセスを踏むと、「これは自分にもできそう」「こういうスキルを身につけてみよう」など、自分の成功につながる具体的なイメージを持てるようになり、自己効力感を高めることができます。
注意したいポイントは、他人に起きていることを自分に置き換えてイメージするだけなので、根拠のない自信を生みやすいことです。
自己効力感は、「自分には達成するための能力がある」と認識した上で生まれます。
この認識がなくては、ただ自尊心が高い状態になってしまい、挑戦しても失敗してしまう可能性があります。失敗によって、自己効力感が低くなるという悪循環も避けたいです。
言語的説得
「説得」「ほめられる」「励まされる」といった、他者からの言葉によっても自己効力感は高まります。
何かに取り組む際、「こういう方法でやれば大丈夫」と説明を受けたり 「あなたなら心配ない」と言葉をかけられて、不安が払拭されたという経験を持っている方も多いはずです。人の言葉からも「自分はできる」という認知がつくられるのです。
注意したいのは、言語的説得は他人に依存するという点です。
励まされたり、ほめられたりすると自己効力感は高まりますが、批判や叱責を受ければ落ち込みやすくなります。
他者の言葉に左右されてしまうと、批判的な言葉を過度に受け止めてしまい自己効力感が低下する可能性があります。自己効力感を高めるためには、言語的説得だけに頼らず、他の要因とのバランスを考えることが重要です。
生理的情緒的喚起
何かを行っている時、自分がどのような生理的状態にあるか意識することが、安心や自信につながります。
わかりやすい例として、何かする際に、今自分は緊張しているか、リラックスしているかに注目することです。
普段通りであれば、「いつも通りだから大丈夫」と自己効力感は高まるはずです。反対に、体が震える、汗をかく、思考がまとまらないなど、普段と違うと感じれば、自己効力感は低くなってしまう可能性があります。
ただ、不調は誰もが出くわすことであり、こういった状態も受け入れて対処することで自己効力感を高めることができます。詳しくは「【実践】自己効力感を高める方法」で紹介します。
人は、調子が良いと意識するときは何でもできそうだと感じたり、緊張などを和らげることで自信を取り戻すことができます。
「自己効力感」の提唱者であるバンデューラ博士は、達成経験、代理的体験、言語的説得、生理的情緒的喚起の順で、自己効力感への影響力が高いと述べています。これらを念頭に置いた上で、次の「【実践】自己効力感を高める方法」に取り組んでみてください。
【実践】自己効力感を高める方法
先に挙げた4つの要因をもとに、自己効力感を高める具体的な方法を紹介します。
成功を積み重ねる:達成経験
達成経験は、自己効力感に対して最も影響力のあるものです。これを実現するためのポイントは、「小さな成功経験を積み重ねる」ことです。
目標が難しいとなかなか成果が得られずモチベーションが低下してしまい、止めてしまう原因になります。こつこつ取り組んでクリアできる目標を設定し、成功体験を重ねることが重要です。
具体的には、自分の能力、使える時間、さける労力から判断し、設定することをおすすめします。
「能力的には難しくないけれど、時間の問題でクリアできなかった」「時間も労力もあったけれど、能力に合っていなかった」といった失敗が起きづらくなるはずです。
身近にいる人の成功までの過程を観察・イメージする:代理体験
代理経験は、自身の立場に近い人を対象にするほど効果が出やすいといわれています。
例えば、ビジネスのシチュエーションで考えてみましょう。身近な先輩が、どのように顧客に対応しているか観察すると、「こうするとうまくいく」というパターンが見えてくるはずです。
さらに、「自分にはこういうスキルが今以上に必要だ」「自分ならこういう力も活かせる」など、自身の頭の中で組み立て直すと、実際の行動で成功しやすくなります。
他者からの声掛けや助言を活用する:言語的説得
言語的説得は、誰かからの言葉によるもののため、他者に依存します。そのため、周囲の人と信頼できる関係がつくれていることが重要になります。
参考)厚生労働省 | 2019年 労働経済の分析
厚生労働省が調査した「仕事を通じた成長実感の高低別にみた 日常業務に対する上司からのフィードバックの実施頻度」によると、成長実感が高い者の認識のほうが低い者の認識に比べて、上司とのフィードバック頻度が高いことがわかります。
よい助言がもらえるように、普段から積極的にコミュニケーションを取りましょう。
また、他者が自身にとって良い助言をくれるかどうかを見極めることも重要です。批判的な意見や否定などの助言が続く場合は、自分のためになるとは限りません。
自身のコンディションを見極める習慣を身に付ける:生理的情緒的喚起
「スピーチの前は緊張してしまう」「大事なテストの前はそわそわしてしまう」など、必ずしも最高のコンディションで臨めるとは限りません。
そんな時は、自身がどのような不調をどの程度抱えているか知ることが重要です。
「緊張で手が震えている時は簡単なストレッチをする」「集中力が切れたらこの曲を聴く」など、簡単な習慣を作っておくと、不調に陥ったときもネガティブになりすぎずに乗り切ることが期待できます。
また、そういった時に成果を出せると、「今日はこういう不調があったけれどこういう習慣で乗り切れた」という経験につながり、「また同じことがあっても大丈夫」という自信につながります。
まとめ
自己効力感を高めることで、目標や困難に前向きに挑戦でき、成功しやすいサイクルを生み出すことができます。本記事が、皆様が様々な場面で活躍するお役に立てましたら幸いです。
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