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キャリア - 2024.09.16更新 / 2024.04.29公開
【サーバントリーダーシップ】10の特性やメリットを紹介
「どのようにして部下を導いていくか」の答えは、一つではありません。部下の性質や組織の特性、業種によってその答えは変わってくるからです。
本記事では、数多くあるリーダーシップのなかから、「サーバントリーダーシップ」を取り上げて、その特徴やほかのリーダーシップとの違い、サーバントリーダーシップの持つメリットなどについて解説していきます。
サーバントリーダーシップとは
サーバントリーダーシップは、「部下の成長を考えて、それを支援するリーダーシップ」のことを指し、チームや組織全体の目的のために、部下の考えや能力を肯定し、それを伸ばすために教育を行っていきます。
サーバントリーダーシップの特徴
部下がミスや失敗をしてもフォローできる支援体制を整え、部下の意見を尊重していくのも、サーバントリーダーシップの特徴です。
休暇やリフレッシュの重要性
「仕事におけるリーダーシップ」というと、「どのようにして仕事に取り組んでいくべきか」に焦点が置かれがちですが、サーバントリーダーシップの場合は「適切に部下に休暇を取らせること」もリーダーに求められます。
休暇によってリフレッシュした部下が、より高いパフォーマンスを発揮してくれることを期待するためのもので、「休みを取らせることも重要である」というスタンスで組織を運用していきます。
サーバントリーダーシップの歴史的背景
サーバントリーダーシップは現代的な考え方のように感じますが、1970年代にはその基礎が確立されています。
ロバート・グリーンリーフという人が提唱し始めたもので、「戦後のアメリカの建て直しに」「国のリーダーに対して不信感を持っている若者世代に寄り添えるように」という考え方の元で生み出されたものでもあります。
サーバントリーダーシップの10の特性
さて、このサーバントリーダーシップを実践するリーダーには、下記の10の特性が必要だと言われています。
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傾聴
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共感
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癒し
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気づき
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説得
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概念化
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先見性
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執事役
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人々の成長に関わる
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コミュニティづくり
順番にみていきます。
1.傾聴
「部下の声に耳を傾ける」というのが、この「傾聴」です。
リーダーや上司という立場から部下を指導していくのではなく、真摯に耳を傾けて、部下の考えや能力を尊重していきます。
また、リーダーである自分自身の考えに対しても、客観的かつ肯定的な姿勢が求められます。
2.共感
部下に対して寄り添い、理解を示していくことで「共感」が生まれます。共感は1の傾聴においても、非常に重要な役割を担います。
また、表面的な理解ではなく、深い理解を示していくことも求められます。部下の非言語的なサインや微妙なニュアンスに注意を払っていきます。
3.癒し
前章でも述べた通り、サーバントリーダーシップにおいては「休暇」も重要視されます。
ストレス管理の観点からも、部下のメンタルヘルスに気を配るなど、状況や状態に応じて配慮していく姿勢が必要です。
また、従業員だけではなく、組織自体にも注目し、「その組織の欠けているところ」があれば補っていくという姿勢が求められます。
4.気づき
部下の心身の状況や、組織内における弱点と強みを知るためには、周囲に対する感度を高くすることが重要です。傾聴も共感も癒しも、この「気づき」を土台として成り立っています。
また、リーダーとしてチーム全体に気を配ることが多くなりますが、自分自身のストレス管理なども意識的に行っていく必要があります。
5.説得
サーバントリーダーシップは部下に寄り添いますが、意見の相違が生じるケースもあります。そのため、部下の意見を尊重しながらも、チームや組織としての意見に納得や同意をしてもらえるように、説得に当たることが求められます。
きちんと言葉をつくし、コミュニケーションを密にとり、部下が心から納得できる環境を作ることが重要です。
6.概念化
「組織全体が向かう方向性」を明確にして、それを部下に共有します。チーム全体や組織が持つビジョンをわかりやすく示すことができれば、部下は自発的に行動することができるでしょう。
7.先見性
一度トラブルが起こってしまうとそれを修復することはなかなか大変です。
しかしトラブルを未然に防ぐことができれば、労力は最小限に抑えられます。そのため、上司には、過去の事例から学び、トラブルを回避するための施策を行う先見性が求められます。
8.執事役
「この人にだったらなんでも相談できる」「この人にだったら大事な仕事のことを聞ける」という安心感を、部下に持たせることは非常に重要です。
「困ったときに何でも聞ける執事役」を持つ部下は、安心して業務を行うことができるでしょう。
9.人々の成長に関わる
部下の特性や教育方針、成長の仕方は、一人ひとり異なります。上司はそれを把握し、より良い成長につながる支援方法を模索していく力が必要です。
10.コミュニティづくり
人間関係や文化を形成するプロセスがコミュニティづくりであるといえます。良いコミュニティは、個々のメンバーが支え合い、励まし合い、成長できる安心で快適な環境です。
リーダーは、積極的にコミュニティを育成し、その中でメンバーがお互いを尊重し、助け合い、協力して目標に向かって進むことを促進する役割を果たします。
定期的なチームビルディングなどを取り入れることで、メンバー間の信頼関係を育むこと、問題解決や意見交換のためのフィードバック文化を確立することが期待できます。
また、リーダーは自らがコミュニティの一員として積極的に参加し、メンバーとのつながりを築き、組織全体の帰属意識を高めることが重要です。
ほかのリーダーシップとの違いとは
ここからは、サーバントリーダーシップと対比されるほかのリーダーシップについて紹介していきます。
支配型(牽引型)リーダーシップ
「一人のリーダーが、強い牽引力と力を持ち、組織を引っ張っていくタイプ」のリーダーシップを、支配型(牽引型)リーダーシップといいます。
支配型(牽引型)リーダーシップは、特にサーバントリーダーシップと対比されるとき、「部下が受動的になり、育たなくなる」「一昔前の、時代遅れのリーダーシップ」などのマイナスで語られることが多いといえます。上司が強権的である場合、部下が委縮してしまい成長ができず、組織の改革や発展が望めなくなる危険性もあります。
責任感と能力、カリスマ性のあるリーダーが主導するのならば、極めて短期間で組織やプロジェクトを成功に導くことが可能であるという点は、支配型(牽引型)リーダーシップのメリットでもあり、大きな特徴であるといえます。
また、「○○をやりたい!」「××というアイディアを実現化したい」という強い意志を持っているリーダーと、それに共感する部下で構成された場合は、特に成果が得られやすくなります。
民主型リーダーシップ
支配型(牽引型)と対比されることが多いのが、「民主型リーダーシップ」です。
民主型のリーダーシップは、サーバントリーダーシップとも親和性の高いかたちです。ただこの民主型リーダーシップの場合は、特に部下の意見を尊重し、「意思決定をチーム全体で行う」というスタイルをとっていきます。
メンバー全員の合意の下でプロジェクトを進めていくため、部下全員が主体性を持ち、自発的な成長をできるのが大きな特徴です。
ただこの民主型リーダーシップの場合、「全員の意見を取りまとめて、調和させ、決定していく」という工程を取るため、一つひとつの決定に時間がかかることがデメリットとして挙げられます。
そのため、「スピーディーに結論を出したい」「急いで進めなければならない案件がある」という場合は、民主型リーダーシップではなかなか対応が難しいといえます。
コーチング型リーダーシップ
「コーチ型リーダーシップ」と呼ばれることもあります。
これは、「上司であるリーダーが、部下一人ひとりと1対1の関係を作り、彼らを導きながら組織を成長させていく」というスタイルをいいます。
部下一人ひとりに対してリーダーが真摯に向き合い、それぞれの価値観や能力、適性、成長度合いを把握したうえで、部下に対して課題や仕事を与えていくスタイルです。
そのため、部下の間に力量の差があったり、個性的な人材で構成されている組織であったりしても、プロジェクトを成功させやすくなります。
また、人材育成の面でも非常に有用性の高いものでもあります。部下の仕事に対するモチベーションも維持しやすくなり、離職率の低下も期待できます。
ただこのコーチング型リーダーシップの場合、全員を導く役目を背負う上司には大きな負担がかかります。部下の人数が少ない時は上手くかじ取りができていても、部下の人数が増えた場合はその全員に目をいきわたらせることは難しくなるでしょう。
そのため、コーチング型リーダーシップをとる場合は、「上司自身の心身の調子」「抱えている部下の人数」によく気をつける必要があります。
ビジョン型リーダーシップ
サーバントリーダーシップと並んで、「理想的なリーダーシップのうちのひとつである」とされているのが、この「ビジョン型リーダーシップ」です。
ビジョン型リーダーシップでは、まず、組織全体に対して、「将来的にこの組織をこうしたい」「将来的にこのようなプロジェクトを成功させたい」という提示を行います。
また、それに至るための役割分担や道筋も、リーダー側がざっくりと示します。しかしその後の、「どのようにしたらそれが成功するか」「成功するための方法としてはどのようなものが最適か」は部下に考えさせ、部下に任せます。
ただしこれは、「部下のやっていることをむやみに承認する」「部下にすべての責任を押し付ける」ということではありません。
上司は必要に応じて、大事だと思われるポイントで確認を行い、時にそれを承認し、時にそれを是正するためのアドバイスを行い、部下の仕事を支援していきます。
つまり、「最初にビジョンを提示して、大まかなところは上司が定めるものの、そこに至るまでの道筋は部下の自主性に任せる。必要に応じて、上司は部下にアドバイスをする」というかたちです。
このビジョン型リーダーシップは、組織全体の成長と、個々人の仕事に対するモチベーションの維持の両方を両立できるスタイルだとして注目を浴びています。
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サーバントリーダーシップのメリット3つ
ここからは、サーバントリーダーシップのメリットについて見ていきましょう。
部下の自主性が育つ
サーバントリーダーシップは、「上司が部下をサポートする」というかたちのリーダーシップです。
部下の特性を理解し、その成長をサポートすることで組織やプロジェクトを成功に導く方法であるため、部下の自主性が育つことになります。
上司から与えられた仕事をただこなすだけではなく、部下一人ひとりが「どのようにしたら上手くいくか」「上手くいかせるためにはどのような知識が必要か」を考えて取り組んでいくのがサーバントリーダーシップであり、部下を「自分の判断で行動できる人間」に育てることができます。
離職者が少なくなる
人はお金のために働きますが、お金のためだけに働くわけではありません。多くのビジネスパーソンは仕事に「やりがい」「働きがい」を求めます。そしてこれらを叶えるためには、「自分が組織で尊重されている」という意識を持てる環境が重要になってきます。
サーバントリーダーシップは、部下の自主性を尊重します。このため、部下は「自分を認めてくれるこの組織のために、自分も一生懸命働こう」という気持ちを抱きやすくなります。この結果として離職率が低下し、仕事に対する理解度が深い従業員が組織を支えてくれるようになるのです。
生産性が上がる
仕事へのモチベーションが上がれば、「より効率よく仕事をするにはどうしたらいいか」「よりお客様に満足していただける製品を生み出したい」という気持ちも強くなります。
また、上でも述べたように熱意があり、モチベーションが高い従業員は離職しにくくなるため、経験豊かな社員が多くいる組織を構成することができるようになります。
この結果として、1時間あたりの生産性が上がると考えられます。
まとめ
近年注目を浴びているサーバントリーダーシップは、部下の成長を考えるうえで非常に有用なものです。
その特性やほかのリーダーシップとの違いを把握したうえで、その実践が組織にとって有用か、実践する場合はどのようなことを心掛けたらいいのかを考えていきましょう。
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