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キャリア - 2024.11.22更新 / 2024.02.23公開

ソーシャルスタイル理論、4つのタイプとアプローチ方法

良好な職場の人間関係を目指したり、より良い人材育成をしたいと考えるのであれば、コミュニケーションについて理論的に考える視点を持つことが必要になってきます。

今回はこのようなコミュニケーション理論のうちのひとつである「ソーシャルスタイル理論」を取り上げ、その意味と特徴、ソーシャルスタイル理論を理解することで得られるメリットなどについて解説していきます。

ソーシャルスタイル理論とは

ソーシャルスタイル理論とは、コミュニケーションに関する理論のうちのひとつです。1968年に作られた理論であり、比較的歴史のある理論だといえます。

このソーシャルスタイル理論は、アメリカの産業心理学者であったデビット・メリル氏によって提唱され始めた理論です。

彼は、「人は4つのタイプに大別される。人とコミュニケーションをとる際には、相手のタイプを分析したうえで、そのタイプが好ましいと判断するアプローチをしていくことで有益な結果を得られる」としました。

75年近くも前の理論ではありますが、彼の生み出したこの「ソーシャルスタイル理論」は、現在も広く使われています。

ソーシャルスタイル理論、4つのタイプとその特徴

ソーシャルスタイル理論では、人を4つのタイプに分けています。

「感情を表すタイプか、表さないタイプか」を縦軸の指標に置き、「意見を主張するタイプか、意見を聞くタイプか」を横軸の指標に置きます。

この横軸・縦軸に従い、ソーシャルスタイル理論では人を、

  1. 感情表現控えめ×意見を主張する=ドライバー型

  2. 感情表現豊か×意見を主張する=エクスプレッシブ型

  3. 感情表現控えめ×意見を聞く=アナリティカル型

  4. 感情表現豊か×意見を聞く=エミアブル型

の4つのタイプに分類します。

それぞれの特徴と、そのタイプに対する望ましいアプローチ方法について解説していきます。

自己主張はしっかりするが、冷静に物事にあたる「ドライバー型」

ドライバー型は、「ドライバータイプ」「ドライビング」「ドライバー」ともいわれます。

自己主張はしっかり行うものの、感情表現は控えめであり、「言うべきことは言うが、感情的にはならない」というのがドライバー型の特徴です。

非常に合理的な考え方をするのがこのドライバー型に分類される人の性質だといえます。また、勝利や成功に向けて冷静に対応していけるタイプでもあります。

ドライバー型はその多くが、高い上昇志向を持ち、決断もスピーディーに行います。経営者に向いているタイプではありますが、やや冷淡に思われることが多く、時にぶっきらぼうな印象を与えます。

ドライバー型との交渉においては、「結論ファーストで話をし、要点をまとめ、無駄話(と判断されること)を排除する」という姿勢を貫くとよいでしょう。

合理的で理論に基づいた説明をしていくように心がけると、より良い結論にたどり着きやすくなります。簡潔に、わかりやすく、「必要なことをピンポイントでわかりやすく話すこと」を意識して交渉にあたるとよいでしょう。

自己主張が強く、感情表現も豊かな「エクスプレッシブ型」

自己主張が強く感情もしっかり表す「エクスプレッシブ型」は、「エクスプレッシブ」「エクスプレッシブタイプ」ともいわれます。

エクスプレッシブ型は、身振り手振りを積極的に使う人が多く、声もやや大きめで、ビジネスの場でもしっかりと感情表現をしていきます。

周りを引っ張っていく力があり、決断もスピーディーに行います。新しいことや話題性があることに積極的に取り組んでいくタイプであり、好奇心が旺盛であるのもエクスプレッシブ型の特徴のひとつといえるでしょう。

エクスプレッシブ型は 明るい雰囲気を持つため、スター性もあります。ムードメーカーとなり得る人材ですが、探求心が豊かであるため、しばしば発言内容が二転三転することがあります。

また、 エクスプレッシブ型は、新しい情報を好みますので、興味を引き付けられるような新規性のある話題であったり、ビジネスへの新しいアプローチ方法を提案したりするとコミュニケーションが円滑に進みやすくなります。

ただエクスプレッシブ型の人の興味は比較的移りやすいため、商談をする場合は、迅速に事を進めるように心がける必要があるでしょう。

エクスプレッシブ型の人は、自分自身が感情を大切にするタイプであるため、「情熱」「やる気」などを意識的に伝えるようにすると、好意的な感情を抱いてくれやすくなります。

物事をよく分析し、理論的に話をする「アナリティカル型」

人の意見によく耳を傾けて、自分の感情を押さえながら仕事を進めるアナリティカルは、「アナリティカル」「アナリティカルタイプ」とも呼ばれます。

理屈を重んじ、データを分析していくことを得意とする研究者タイプの人が多く見られる型です。

「どういう考えを持っているのか分からない」という印象を抱かれたり、「自分のことを話してくれないから、コミュニケーションをとりにくい」と思われるたりすることが多いのですが、理論に基づくアイデアを持っていたり、本質を見抜く力を持っていたりします。

また、冷静な視点で構築された理論を順序立てて話をすることが得意であり、チームの参謀に適している型であるともいえます。

アナリティカル型の人とのビジネス対話を上手く進めようとする場合は、同じように「数字」「理屈」で話をしていくのが望ましいといえます。感情に訴えることは避けて、客観的なデータを説得材料にすると、仕事が進めやすくなります。

また、アナリティカル型の人の場合は、「一度持ち帰ってデータの整合性を確認する」「自分のなかでの理論構築を大切にする」という性質があるため、その判断をサポートできるような情報の提供を心がけるようにします。

新しいデータや、理論を補強できるデータが出てきた場合は、その都度情報の共有を行うと、高い評価を得られやすくなるでしょう。

協調性を重んじ、傾聴を重んじる「エミアブル型」

「温和型」とも評される「エミアブル型」は、豊かな感情表現をするものの、基本的には人の姿勢や考え方を尊重しようとするタイプです。「エミアブル」「エミアブルタイプ」とも呼ばれます。

いわゆる「いい人」が、このエミアブル型に分類されます。傾聴の姿勢と、穏やかな気質を持ち、自分が主張するよりも全体の和を大切にします

話し方や態度も柔らかく親しみやすいので、チームの潤滑剤ともなるのがエミアブル型の特徴だといえるでしょう。「チームのサポートを行う」「悩んでいる同僚に寄り添う」などを得意とするタイプです。

争いを好まない「調停役」としての顔があるからか、時に優柔不断さがみられることもあります。またスピーディーに物事を決定〜進行していくことはそれほど得意ではありません。

エミアブル型の人はコミュニケーション能力が高く、相手の接し方に合わせてくれるところがあります。そのため、コミュニケーションは取りやすいでしょう。

ただ、エミアブル型の人は、「決断を急がせられること」が苦手な傾向があります。そのため、エミアブル型の人に対しては早急に判断をさせることは避け、交渉にあたっては「どのようなことが不安か」「疑問点はあるか」などのヒアリングを取り入れていくとよいでしょう。相手のペースに合わせて交渉を進めていく姿勢が求められます。

ソーシャルスタイル理論を理解することの意味とは何か

ソーシャルスタイル理論を理解することには、数多くのメリットがあります。

  1. 社内での人間関係を円滑に保ちやすい

  2. 人材育成に役立てられる

  3. 交渉力がアップする

  4. プライベートでも役立てられる

それぞれ見ていきましょう。

社内での人間関係を円滑に保ちやすい

ソーシャルスタイル理論は、「相手がどのようなコミュニケーションを好み、また相手がどのようなコミュニケーションを嫌うか」を知るための手がかりとなるものです。

そのため、相手のタイプを把握し、その人に合ったコミュニケーションを心がけることで、社内の人間関係を円滑に保ちやすくなります。

社内の人間関係は、仕事へのモチベーションやパフォーマンスに大きく影響を及ぼします。

また、同僚や上司、部下との関係を良好に保つことで仕事の効率化も期待できますので、ソーシャルスタイル理論を取り入れたコミュニケーションが役立つといえるでしょう。

人材育成にも役立てられる

部下を指導する上司の立場である場合は、「自分が指導する相手は、どのようなコミュニケーションを求めているか」を知ることは非常に重要です。

たとえばエミアブル型の人を指導するときに「同僚の○○に負けるな」などのような指導をしてもその部下は強いストレスを感じるだけでしょうし、アナリティカル型の 部下に「(根拠となる数字などを出さずに)もっとやる気を出せ」と言っても、成長を促すことは難しいでしょう。

「相手が望ましいと思う働きかけをすること」は、上司にとって必要なスキルです。そのような働きかけができる上司は信頼されますし、結果的に「私はここでならのびのびと働ける」という安心感を部下に与えることができます

そしてこの安心感は、部下の人材育成において、大きなプラスとなります。

 

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交渉力がアップする

「車や家などの大きな買い物をしようとしたとき、担当者の態度が好ましく思えず、契約を打ち切ってしまった」 という経験をしたことのある人は、決して少なくはありません。

これは、見方を変えれば、その担当者がお客様の求めるコミュニケーションをとれなかったということです。

ソーシャルスタイル理論を理解し、交渉相手のタイプを分別し、その人に合った交渉方法を身に着けることで、仕事の成約につなげやすくなります。

なおこれは、キャリアコンサルタントを目指す人にとってもヒントとなる考え方です。

キャリアコンサルタントは、転職・就職を希望する人と対話し、その願いや悩みを引き出していく仕事です。

このような特性を持つキャリアコンサルタントにとっては、相手のタイプを理解し、その人がリラックスして話ができる環境を整える話術が必要です。ソーシャルスタイル理論への理解は、そのような環境づくりに役立ちます。

プライベートでも役立てられる

ソーシャルスタイル理論は主に仕事の場で活用される理論ですが、プライベートにおいても活用することができます。

友人関係やパートナー、あるいはパートナーになり得る可能性のある相手との関係を考えていく場合、「相手がどのようなコミュニケーションを望んでいるか」をはかることは重要だからです。

なおこれは、「相手におもねる」「相手の気持ちだけに従う」とイコールではありません。相手の望むコミュニケーション方法が自分にとって大きなストレスになるのであれば、それを伝えて、望ましい対話方法のすりあわせを行うことにも役立てられるからです。

まとめ

「ソーシャルスタイル理論」は、人を4つの型に分類するものです。

それぞれの型によって「望ましい接し方」が異なりますが、それを理解したうえで、人材育成や交渉、対話を行っていくと、ビジネスもプライベートもより円滑にまわるようになるでしょう。

Q&A

ソーシャルスタイル理論とは?
ソーシャルスタイル理論は、人のタイプを4つに大別し、人とコミュニケーションをとる際には、相手のタイプを分析したうえで、そのタイプが好ましいと判断するアプローチをしていくことで有益な結果を得られるというものです。
ソーシャルスタイル理論の4つのタイプとは?
ソーシャルスタイル理論の4つのタイプは、「ドライバー型」、「エクスプレッシブ型」、「アナリティカル型」、「エミアブル型」です。
ソーシャルスタイル理論のメリットについて知りたい
相手がどのようなコミュニケーションを望んでいるかを知ることで、円滑な人間関係の構築が期待できるのが、ソーシャルスタイル理論のメリットであるといえます。また、ソーシャルスタイル理論はビジネスシーンだけではなく、プライベートの人間関係にも活用することができます。
ソーシャルスタイル理論のデメリットについて知りたい
決めつけやバイアスが働いた場合はソーシャルスタイル理論がマイナスに働くこともあります。
ソーシャルスタイル理論は、相手を「分類」することによって望ましいコミュニケーション方法を考えるものです。
ただ人には多面性があり、必ずしもこの4つのタイプに明確に分類されるものではありません。この4分類が、逆に「誤ったコミュニケーション方法」に繋がる可能性もあります。

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