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キャリアコンサルタント資格 - 2024.11.08更新 / 2023.08.18公開

トランスファラブルスキルの意味と有効な選択肢、そのトレーニング方法について

近年、働き方やキャリアに対する考え方が大きく変化しており、働き方や職場、職業にこだわることなく柔軟に仕事を選択する傾向になりつつあります。このような背景から、専門的なスキルだけではなく、普遍的なスキルにも注目が集まっています。

そこで今回の記事では、職場や業種が異なっても必要であるスキルである「トランスファラブルスキル」について詳しく解説をしていきます。

トランスファラブルスキルとは?

トランスファラブルスキルは、「移転可能スキル」と訳されます。

これは、「Aという組織で働いていた人間が、ほかの職場や職業に変わっても使える普遍的なスキル」を指します。

トランスファラブルスキルとテクニカルスキル

大学や職場で学び、研究をしてきた人たちはそれぞれ「専門分野」を持っています。

たとえば「電気工事の分野において3つの国家資格を取得していて、実務経験も十分にある」「テイスティング能力があり、ワインの目利きが可能」「冠婚葬祭の葬儀の分野での経験が長く、専門の資格を有している」などのようなものです。

専門分野のスキルはテクニカルスキル、またはトランスファラブルスキルの対義語としてアンポータブルスキルと呼ばれています。

このようなスキルは、その業界においては非常に有用なものではありますが、異なる分野や異業種への転職を考える際には、活かせる場面が少なくなることが予想されるのです。

トランスファラブルスキルとは、「どのような職場、どのような職業であっても使える、社会人として求められるスキル」であり、このような専門分野スキルとしばしば対比して語られるものであるといえるでしょう。

トランスファラブルスキルはなぜ注目されるようになったのか?

「トランスファラブルスキル」という考え方はイギリスで生まれました。イギリスでは1990年ごろから、「大学院において、どのようなトレーニングをすればよいのか」という問題意識が持たれていたといわれています。

トランスファラブルスキルに注目が集まった理由

特定の分野に特化した「大学の研究者」が、他の分野でも活躍し、より多くのキャリアを展開していくためにはどのような方法があるのかという問題意識こそが、トランスファラブルスキルに注目が集まった理由といえます。

大学も強い関心を持つトランスファラブルスキル

「トランスファラブルスキルは、研究者だけでなくほかの職種の人にも大切なものだ」という認識が広まった現代においても、上記のような歴史を持つためか、学習機関である「大学」の多くは特にこのトランスファラブルスキルに強い関心を払っています。

なお、トランスファラブルスキルの考え方はイギリスで生まれましたが、現在はアメリカでも積極的にこの研究が進んでいます。

トランスファラブルスキル7つの具体的例

ここからは、「トランスファラブルスキルの具体的なスキル」について解説していきます。

 

  1. コミュニケーションスキル

  2. 他者と協力する能力、リーダーシップをとる能力

  3. 現場やチーム、プロジェクトになじむ力

  4. 情報収集能力および情報整理能力

  5. ITリテラシー

  6. 専門性を生かした問題解決能力

  7. 信頼感と倫理観の構築能力

 
順番にみていきましょう。

1.コミュニケーションスキル

コミュニケーションは、代表的なトランスファラブルスキルのうちのひとつだといえます。

たとえば、個人で制作を行う芸術家であっても、仕事として成立させるためには様々な関係者とコミュニケーションを取る必要がありますし、一般的な仕事をするビジネスパーソンであれば、業務を進める上で関わる人数はより多くなることが予想されます。

また部署異動や転勤、そして転職においても、高いコミュニケーション能力を有する人は活躍の場を広げることができます。特に、個々に違う価値観を認め、尊重することができるビジネスパーソンは、高い評価を得ることが期待できます。

「仕事」をする上では、他者との関わりは必要不可欠であり、コミュニケーションスキルは非常の重要だといえるでしょう。

2.他者と協力する能力、リーダーシップをとる能力

コミュニケーション能力と併せ持つことを求められるスキルとして、「他者と協力する力」があります。これは特に、ある程度の人数でプロジェクトを進めていく際に求められるものです。

上記で挙げた画家などは「1対1で人間関係が完結する」というやり方も可能かもしれません。

しかしこ多くの職業では、仕事をしていくうえで他者とチームを組み、協力をして物事を進めていく力が求められます。

また、ある程度の年齢になれば他者と協力する力はもちろん、そのチームのなかで円滑にチームを導いていく、リーダーシップを取る能力も求められることが多くなるでしょう。

3.現場やチーム、プロジェクトになじむ力

トランスファラブルスキルのひとつとして、「新しいプロジェクトに移ったときに、迅速にそこになじめる能力」が挙げられます。

業種や分野のよっても異なりますが、多くのプロジェクトは数か月~数年単位であるのが一般的です。

いままで携わってきたプロジェクトから新しいプロジェクトに移行した場合は、 以前のやり方にこだわるのではなく、新しいプロジェクトを前向きに受け止めることが重要になってきます。

より良い発想や提案をしていける能力があれば、それは働くうえでの大きな強みとなるでしょう。

4.情報収集能力および情報整理能力

現在では個人で得られる情報量も非常に多くなってきており、日々めまぐるしく情報が更新されていきます。

このような状況の中で、情報の正確性を見極めるスキルを持つ人は他者からの信頼を得ることができるでしょう。

また、「情報収集能力および情報整理能力」のトランスファラブルスキルは、単純に、「その分野の情報を得て、整理する能力」を指すのではありません。

社外からの問い合わせや社内での連絡などを的確に処理する能力もまた、トランスファラブルスキルのうちのひとつです。

多くの情報を混乱なくまとめて迅速に返信をし、正しい手順で処理する能力を持つ人もまた、最新の情報をつかみ整理する人と同じように評価されるといえます。

5.ITリテラシー

現在はほとんどの業種でITが導入されています。このため、ITテクノロジーの基礎知識を有していること、またそれに対して抵抗なく取り組んでいけることが、トランスファラブルスキルのひとつであると考えられています。

もちろん、職場によって扱うソフトやツールには違いがありますが、「まったく触ったことがない」「抵抗がある」という人よりも、「ほかの業種やツールではあるが長く親しんできた」「分からないことでも、積極的に調べて取り組める」という人の方が高く評価される傾向があります。

6.専門性を生かした問題解決能力

トランスファラブルスキルは「どの職場でも使える能力」を指しますが、これは「専門分野の知識・能力」であるテクニカルスキルと両立するケースがあります。

「専門性を生かした問題解決能力」として、テクニカルスキルをトランスファラブルスキルとして考えることができるのです。

問題解決をするスキルには、知識と経験が必要な場合が一般的には多いため、テクニカルスキルが非常に有効に働きます。

7.問題解決の選択肢を提示できる

たとえば「車をぶつけてしまい、傷が入った。ドア交換を勧められているが、見積の時点で高額だ」という相談に対して、「経年剥離が見られる危険性はあるが、パテ処理などで処理をすることで費用を抑えられる」などのように、よりよい提案ができれば、顧客だけではなく社内からの信頼度も上がるでしょう。

専門分野におけるたしかな知識と能力をもって、さまざまな問題解決の選択肢を提示できることもまた、トランスファラブルスキルのひとつだといえるのです。

信頼感と倫理観の構築能力

私たちは、「仕事に求められるスキルは何か」と尋ねられた際、しばしば「何ができるか」に焦点を当て考えることが多くなります。このアプローチは決して間違ではありませんが、これだけでは不十分な場合があります。

仕事をしていくなかで重要なもののうちのひとつとして、「信頼感と倫理観」があります。

たとえば上で紹介した車の修理の事例では、提案をするときに「経年剥離が見られる危険性がある」などのようにあえてリスクの提示もしています。

このように最初からリスクを提示することで、顧客により強い信頼を寄せてもらえることが期待できますし、トラブルの防止にもつながります。

情報化社会で求められるスキル

現代は情報化社会であるため、不適切な対応は口コミなどを通じて広がり、ネガティブな評価が及ぶ可能性があります。しかし、誠実で倫理的な対応は信頼を築き、次の契約につながる可能性があります。

顧客や取引先に信頼を得られる対応力や、高い倫理観を持ち、それに基づいた行動を取る能力は、現代の情報化社会において不可欠なトランスファラブルスキルのひとつといえます。

 

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トランスファラブルスキルは様々

ここまで、7つの「トランスファラブルスキル」の例を取り上げてきましたが、7つのトランスファラブルスキルだけを把握していればどんな状況でも対応できるというわけではなく、キャリア管理、マーケティング能力、時間管理能力、仕事遂行能力などもトランスファラブルスキルの一部とされることもあります。

業種や時代によって求められるスキルは異なり、トランスファラブルスキルは変化するもので、一定の枠に収められるものではないといえるでしょう。

まとめ

このページでは、トランスファラブルスキルについて解説してきました。変化の激しい時代において、様々な場で必要とされるスキルを身につけておくことは、キャリアの選択肢を増やすことにつながるかもしれません。

Q&A

トランスファラブルスキルとは?
トランスファラブルスキルは、「移転可能スキル」と訳されます。 これは、「Aという組織で働いていた人間が、ほかの職場やほかの職業に変わるときに使える普遍的なスキル」のことをいいます。
トランスファラブルスキルの具体例は?
コミュニケーションスキル、リーダーシップ能力、情報収集能力、ITリテラシーなどが挙げられます。
ポータブルスキルとトランスファラブルスキルの違いは?
もともとトランスファラブルスキルは、「研究者」を対象としたものでした。しかし厚生労働省の唱える「ポータブルスキル(働く場所や職種が変わっても、持ち運べる能力)」は、働く人全体を対象とした概念です。
ただし現在では、トランスファラブルスキルもポータブルスキルも、ほとんど変わらないものとして使われています。
テクニカルスキルとトランスファラブルスキルの違いは?
「テクニカルスキル」は、その職業固有の技術や技能を指す言葉です。テクニカルスキルはいわば「専門分野のスキル」ともいうべきものであり、高い専門性を求められる職業・職場では必須です。
対してトランスファラブルスキルは、「どのような職場でも使える能力」であり、テクニカルスキルとは異なるものです(ただしテクニカルスキルがトランスファラブルスキルの土台となることはあります)。

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