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キャリア - 2024.05.01更新 / 2023.11.11公開

トランジションとは? 理論やビジネスにおける重要性をわかりやすく解説

人生の様々な場面で人は変化や転機に出くわします。特にビジネスにおいては多くの場合、こういった変化には不安や困難がついて回るものです。

本記事では、人生で訪れる「変化」や「転機」という意味を持つ「トランジション」という言葉について解説します。

後半では働き方の領域、「キャリア・トランジション」にクローズアップしていきますので、様々な変化を乗り越える参考になれば幸いです。

「トランジション:転機」とは何か

「トランジション(transition)」は、転機、転換、転換点、移行、変化、節目などを意味する言葉で、その人の人生において状況や役割が変化していくことを指します。

トランジションは、単なる外的変化ではなく、個人の心理的変化も含めて述べる場合が多いです。

特に、ビジネスや人事領域においては「キャリア・トランジション」という言葉で用いられ、期待される役割や行動の変化を指します。

様々なトランジション理論

トランジションについての学術的研究は「トランジション理論」と呼ばれています。トランジション理論は1970年代頃から用いられるようになり、1980年代頃から活発に議論されるようになったと言われています。

様々な学者が研究をしていますが、中でも有名なトランジション理論をいくつかご紹介します。

レビンソンの発達段階説

生涯発達心理学とは、生涯に亘る人の発達過程を研究する学問で、早くにトランジションに注目した分野といわれています。

この分野で有名な人物はアメリカの学者ダニエル・J・レビンソンです。レビンソンは、人間は生涯にわたって安定期と移行期(過渡期と節目)を繰り返すと主張しました。

子供から大人への移行、青年期から中年期への移行などを節目と捉えました。レビンソンは人生を四季になぞらえ、4つの段階に分類した「ライフサイクル理論」でも有名です。
 

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【解説】ダニエル・レビンソンの発達段階説-人生の四季とは | リカレントcounselor

 

トランジションの個別性に注目したシュロスバーグ

ナンシー・K・シュロスバーグは、アメリカを代表するキャリアカウンセリングの理論家・実践家です。

シュロスバーグは年齢や発達段階に応じて論じるのではなく、トランジションが個別性の高いものであると述べました。

人それぞれの状況を、4つのS、「Situation (状況)」「Self (自己)」「Support (支援)」「Strategy(戦略)」で見極めることで乗り越えていけると述べました。

 

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「ナンシー・K・シュロスバーグの理論」転機を乗り越える4つのSとは? | リカレントcounselor

 

キャリア・トランジションのサイクルに注目したニコルソン

イギリスではナイジェル・ニコルソンがキャリアについての学説として、「キャリア・トランジション・サイクル」を提唱し、そのモデルを整備しました。

このニコルソンのモデルについては後半で解説します。

心理的な変化に着目したブリッジズ

ウィリアム・ブリッジズはアメリカの心理学者です。ブリッジズの理論はキャリアコンサルティングなどにも活用されています。

ブリッジズは、トランジションについて考える時、特に心理的な変化に着目し、3つの段階に分けモデルとしました。詳しくは後半で解説します。

日本でのトランジション理論

日本では、1980年代からキャリア・トランジションが注目されるようになりました。特に、企業の中での役割変化などへの関心が高まったことにより、野中郁次郎などが研究を進めました。

トランジションの具体例

トランジションは様々な場面で発生します。変化の性質に分けた例をご紹介します。

関係の喪失

過去の人生で誰かとの関係が切れたことはないか。配偶者の死から友だちの引っ越しまで、すべてリストアップしてみよう。離婚、子どもの自立、友人と疎遠になったこと、ペットの死、憧れのヒーローの消失など、何かとのつながりが失われる場合である。

 

家庭生活の変化

過結婚、出産、家族の就職・退職、家族の病気と回復、学校に通い始める、家事の分担の変化、家の新築や改築、家庭内の緊張の増加や減少、など。

 

内的変化

自分の病気と回復、大きな成功や失敗、食生活や睡眠リズムや性行動の変化、入学や卒業、ライフスタイルや外見上の大きな変化など。

 

内的変化

スピリチュアルな覚醒、社会的・政治的自覚の深まり、心理学的洞察、自己イメージや価値観の変化、新たな夢の発見や古い夢の放棄、「私は変わりつつある」という感じなど。

 

仕事や経済上の変化

就職、解雇、退職、転職、組織内での配置転換、収入の増加と減少、ローンや抵当権の設定、昇進が困難になるなど。

 
出典 |「トランジション ――人生の転機を活かすために」
ウィリアム・ブリッジズ (著)(2014)
倉光 修 , 小林 哲郎 (翻訳)
出版社:パンローリング株式会社

こういった様々な変化の中でも、仕事に関する変化、「キャリア・トランジション」は近年注目されています。次の章で詳しく解説します。

キャリア・トランジションとは

キャリア・トランジションは、キャリアにおける重要な変化や移行を指し、具体的には、就職、解雇、退職、転職、組織内での配置転換、昇進などが含まれます。

一方で、キャリアチェンジやジョブチェンジはその中の一つであり、経験や職務を変える行為を指します。つまり、キャリア・トランジションはキャリアに関する様々な変化を包括する概念です。

キャリア・トランジションが重要視される理由

キャリア・トランジションは、なぜさまざま理論家に取り上げられ、注目されたのでしょうか。

急速に進んだ技術革新

技術革新は急速に進んでおり、これまでの事業やビジネスモデルを変革する必要が生じています。

従来のスキルだけでなく、新たな能力や知識が求められるようになりました。このような状況下で、個々の働き手が自己成長を図り、キャリアを充実させることはますます重要になっています。

労働力の減少と生産性向上の必要性

さらに、日本の労働人口が減少し、将来的には十分な労働力を確保することが難しくなると予想されています。このような状況下で、限られた人材を最大限に活用し、生産性を高めるためには、働き手の能力開発が不可欠です。

キャリア・トランジションの仕組み

キャリア・トランジションを上手く乗り越えていくためには、その仕組みを理解することが重要です。今、どういった状況にあるのかを把握することで問題に向き合いやすくなるはずです。

キャリア・トランジションの仕組みを説明するため、ここでは次の2つの理論をご紹介します。

  1. キャリア・トランジション・サイクルをわかりやすいモデルに展開したニコルソンの理論

  2. 心理的な変化に即したモデルを展開したブリッジズの理論

1つずつみていきましょう。

1.ニコルソンの有名な「キャリア・トランジション・サイクル」

ナイジェル・ニコルソンはキャリア学説として、「キャリア・トランジション・サイクル」という4段階から成るモデルを展開しました。キャリア・トランジション:節目に際して、次の①~④のサイクルが発生するというものです。
 

① 準備
目前に見えてきた節目への準備段階

 

② 遭遇
新しいキャリアに遭遇する段階

 

③ 適応
遭遇したキャリアに対し、苦労しつつも徐々に順応していく段階

 

④ 安定
慣れて安定した段階

 
このサイクルを回すことができれば、新たなキャリアの形成や成長につながります。

ニコルソンはこの一連のサイクルが終了すると、また次のキャリア・トランジションへ移行すると述べています。安定した状態に留まるのではなく、また別の節目を迎える準備段階に入るのです。

このサイクルを循環させることで、キャリアにとって良い効果が見込めます。このニコルソンのサイクルは、成功のイメージとしてとてもわかりやすいのではないでしょうか。

注意したいのは、うまく回らない場合も想定しておくことです。企業や上司からの期待、つまり、新しく挑戦してほしい仕事や担ってほしい役割が、当事者と合わない場合があります。双方が納得できる目標を設定し、サイクルが上手く回る工夫を怠らないことが重要です。

ブリッジズの有名な「トランジション・モデル」

ウィリアム・ブリッジズは、トランジションについて考える時、特に心理的な変化に着目し、3つの段階に分けてモデルとしました。

① 何かが終わるとき

トランジションとの遭遇は、何かとのつながりが終わることから始まるという考えです。

新しい仕事に従事する時にそれまでの仕事を手放す、新しい職場に勤める時にそれまでの職場から去る、という体験です。

ブリッジズは、終わりを受け入れることは、しばしば心理的な不安をきたすと述べています。安定した環境や慣れ親しんだものを手放すことは簡単ではありません。終わりを受け入れることは試練のようなものだとも述べています。

② ニュートラルゾーン

終わりを受け入れ、トランジションを迎えた人が存在する場所です。

「ニュートラル:中立」という意味の通り、新しい環境や役割にまだ完全に馴染めていない段階です。試行錯誤したり、混乱したり、周囲から指導されることもあります。

ブリッジズはこの段階にいる人が抱く心理について、次のように解説しています。多くの人は「ニュートラルゾーンにいることを無視する。あるいは、圧倒されてしまう」。このどちらも、目的を達成するチャンスを失ってしまうとも述べています。

ニュートラルゾーンで過ごす時間の必要性を認めなければ、その状況から得ることはできないということです。

新しい状況を手探りで進むことには不安やストレスを感じますが、目的達成のために必須であるといいます。

③ 新たな何かが始まる時

終わりを受け入れ、ニュートラルゾーンでの体験が十分に達した後、初めて生まれ変わり、新たな出発をすることができます。

ブリッジズは、人生の新しい局面が色分けされたようには明確でないと述べています。

また、新たな始まりは必ずしも意図して起こるものではないが、スタートの準備ができている人には訪れる可能性のあるものだと述べています。

終わりが統合されていたものを崩す段階である一方、始まりは新しい自分を再統合していく段階です。これを生じさせるのがトランジションであり、人生を進めていく上での新たな道につながるのです。

自身の心理をブリッジズの理論と照らし合わせてみると、今どういった状況にいるのか整理できるのではないでしょうか。また、抱いている不安や対峙している問題に対して、「これを乗り切ることで次に進める」と前向きな解釈ができるかもしれません。

キャリア・トランジションを活かして新しい働き方を目指そう!

従業員のキャリア・トランジションを支援する方法

従業員のキャリア・トランジョンを支援する方法としては、企業側が求めるスキルや役割を明確に示すことが重要です。何が求められているのか、どの時期までにどういった成長が必要なのかがわかると、従業員は安心して取り組むことができます。

また、企業側は人材育成のノウハウを蓄積していくことも重要です。従業員の立場や価値観によって、発生する悩みは様々だと思いますが、共通するものも多いのです。

過度な期待、モチベーションを損ねる目標設定は真逆の効果を発揮します。

ノウハウを活かして取り組みつつ、従業員と上司や人事担当者が状況を共有できる環境であることが重要です。

自身のキャリア・トランジションを乗り越える方法

キャリア・トランジションには不安がつきものです。

新入社員として配属される。別の部署に異動する。管理職になる。昇格し、立場が変わる。裁量の変化や、新しい業務の担当など、日々の社会人生活そのものがトランジションです。

同じ環境で、安定して仕事をこなしたいという方もいる一方で、新たなキャリア形成を実現していく働き方に、”やりがい”を感じる人も多いはずです。

新しい事に挑戦をする時は、環境への適応や業務を理解するための努力が必要となります。学ぶ姿勢や積極的に馴染もうとすることも重要になってくるでしょう。

トランジションを乗り越えることで、新たなスキルや人脈、そして自信を得ることが期待できます。

まとめ

このページでは、トランジションについて解説してきました。

トランジションとは何か、学説や具体例を紹介した後、キャリア・トランジションに注目して解説しました。

トランジションは人生の中で、誰もが何度も出くわすものです。トランジションは大きな不安や困難を運んでくることもあるでしょう。

ブリッジズは著書でこのように述べています。

「人は跳び上がる前に、かがまねばならないのだ。このような旅はまた、たった一人で行くしかない」

個々が出会う困難は、跳び上がるためのチャンスなのではないでしょうか。

本記事が、様々なトランジションを前向きに乗り越えていく力になれば幸いです。

Q&A

「トランジション」とは何ですか?
「トランジション(transition)」は、転機、転換、転換点、移行、変化、節目などを意味する言葉です。人生において、その人の状況や役割が変化していくことを指します。
トランジションの具体例は何ですか?
家庭生活の中だと、結婚、出産、家族の就職・退職、家族の病気と回復、など。個人的な事柄だと、自分の病気と回復、大きな成功や失敗、食生活や睡眠リズムや性行動の変化など。内的な事柄だと、スピリチュアルな覚醒、社会的・政治的自覚の深まり、心理学的洞察、自己イメージや価値観の変化など。仕事や経済上だと、昇進、就職、離職、転職、などが挙げられます。
「キャリア・トランジション」が注目されている理由は何ですか?
企業や働き手を取り巻く環境が変化し、生産性の高い人材が求められているためです。「キャリア・トランジション」を経て、期待した役割を担う人材に成長していくことが求められています。
トランジョンを意識することで何かメリットはありますか
トランジョンを意識しておくことにより、変化に対する準備をすることができます。トランジョンは成長の機会ととらえることもできますので、準備をしておくことにより、さらなるスキルアップが期待できるでしょう。

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