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キャリア - 2024.09.27更新 / 2022.12.17公開
VUCA時代でも迷わないキャリア戦略とは?個人に与える具体的な影響も解説
「身の回りががらりと変わった」
「この先どんなことがあるか心配」
そんな不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。先行き不透明な現代は、「VUCA時代」と呼ばれています。「VUCA」は、特にここ数年で浸透した言葉です。
近年は、コロナ禍の影響による変化が激しく、仕事の面で不安を抱えている方も多いようです。
「今、この仕事をしていていいのか」
「将来どうしていったらいいのか」
そういったキャリアについて悩むビジネスパーソンも増えています。本記事では、そもそも「VUCA」とは何なのか、その定義や具体例を紹介し、個人への影響と対応について解説します。
VUCAとは何か
まずは、VUCAとは何なのかを解説していきます。
-
VUCAの定義
-
VUCA提唱の経緯
-
VUCAが浸透したきっかけ
順番にみてきましょう。
1.VUCAの定義
「VUCA」の読み方は「ブーカ」です。次の単語の頭文字による略語になります。
V | Volatility | 変動性 |
U | Uncertainty | 不確実性 |
C | Complexity | 複雑性 |
A | Ambiguity | 曖昧性 |
VUCAとは、これら4つの要素を含む状態、つまり不透明で将来が予測困難な状態を指します。
私たちを取り巻く環境では、不確実な経済・社会情勢が該当します。
2.VUCA提唱の経緯
VUCAはもともと、1990年代にアメリカ陸軍戦略大学校が軍事用語として提唱したもので、ロシアとアメリカの冷戦が終結し、軍事が国対国の構造からさらに複雑なものになることを予想する言葉でした。
ビジネスや社会においては2010年頃から用いられるようになっています。
VUCAが使われるようになった大きな要因のひとつにテクノロジーの進歩が挙げられます。
3.VUCAが浸透したきっかけ
インターネットの発展に伴い、社会活動やビジネス活動の幅は国内外へ広がりました。また、AIなどの技術発展に伴って、既存の社会・ビジネスのあり方が大きく変化することも増えています。
既存のやりかた、体制では対応できない複雑な状況が増えたことにより、VUCAは社会やビジネスにおいても頻繁に使われるようになったのです。
VUCAという言葉が広く浸透したきっかけは、2016年、世界経済フォーラムであるダボス会議で「VUCAワールド」という言葉が用いられたことです。
現代は先行きが不透明な時代、VUCA時代であるという認識が共通のものとなりました。以降、様々な場面でVUCAが用いられるようになったのです。
VUCAの具体的な影響
頭文字である4つの要素ごとに具体例を紹介します。
【V】Volatility:変動性の例
インターネット・スマートフォンの普及
変動性、つまり、一度成功しても優位性が確保されない状態です。
現在日本では、およそ9割がインターネットを個人利用し、7割以上がスマートフォンを保有しているとされています。
日本でインターネットが誕生したのは1980年代ですが、急速に進み始めたのは2000年前後から。
そこからわずか数年で携帯電話市場の急拡大、検索エンジンなどが続々登場、厳密なセキュリティが求められる取引などにも対応する法律などの整備が一気に進みます。
インターネット普及率の推移
厚生労働省がまとめた「インターネットの普及率」では、1997年には9.2%だったのに対し、2000年には37.1%、さらにその5年後の2005年には70.8%となっており、急速にインターネットが普及していったことが分かります。
厚生労働省 2013年版 厚生労働白書 図表 1-4-2を加工して作成
短期間で様々なサービスが誕生し、ここからさらに数年でスマートフォンの台頭によってさらなる変化が訪れます。
ビジネスモデルも変化していく
SNSやソーシャルゲームなどのアプリケーションや周辺機器が生まれました。特に現在では、SNSは企業の販売戦略にも大きな影響を与えているため、短期間ですさまじい変化があったといえるでしょう。
新しいビジネスが生まれると利便性が高まり、既存のビジネスが淘汰されていった時代でもありました。
インターネットに代替され無くなった事業もあれば、携帯電話、いわゆるガラケーの分野は縮小されたように、新しい技術が誕生するたび、ビジネスモデルの変化が求められるのです。
【U】Uncertainty:不確実性の例
災害や人口の問題
不確実、つまり、誰にも予想がつかない事象が発生する可能性があるということです。
東日本大震災や新型コロナウイルス感染症などもこれに当てはまります。
いつ、どこで、どう起こるか予測しづらい、その後の見通しを立てにくい事象です。地球温暖化などの環境問題も当てはまります。
世界的な課題や取り組みが行われてはいますが、長期的に観測し、効果を検証していく必要があります。いつまでと終わりが見えづらいことも問題です。
少子高齢化問題
日本においては少子高齢化も避けて通れない問題です。世界的には、将来的な人口増が見込まれている中、日本はほぼ確実な人口減が見込まれています。
何年時点でどの程度減少しているのか、様々なシミュレーションも行われていますが、不確定要素が多い問題です。
予想より減少しているということも考えられますし、現在検討・実施されている様々な対策が効果的なのかも長期的に考えていまなければなりません。
【C】Complexity:複雑性
サービスの多様化と規制の問題
様々な事象が複雑に絡み合うために、解決策が導きづらい状態です。
近年、ITの進化により様々な商品やサービスが誕生しました。サービスを提供するのが、個人というケースも出てきています。一般人による配車サービスや、空き部屋のレンタル、民泊などです。
サービス形態の増加は、提供する側、される側双方にとってメリットがあるように見えますが、法律や規制といった様々な問題と絡み合ってあってうまくいかないことも多いのです。
決まった企業が提供し、消費者が利用するという、シンプルな構造ではなくなってしまったことで、問題が発生する場面も多くあるのです。
各国で異なる整備や規制
他の国で浸透している便利なサービス・テクノロジーが自分の国でも同じように使えるかはわからないという問題にも関連します。
法の問題から利用できないサービスや、反対に、自社サービスを海外で売りたいけれども他国の規制があって売りづらいという問題も発生します。
様々なサービスが生まれるがゆえに、シンプルに規制する法の整備が難しく、政府としても対応が難しいことがあります。
【A】Ambiguity:曖昧性
SNS普及とマーケティング
捉えるべき事が曖昧で、明確な解決方法が見つけにくい状態です。
近年の広告手法の変化にもよく見られます。スマホ普及以前は、テレビ広告などマスメディアが主体となってトレンドを作り、消費者の目に触れることでモノやサービスの流行が生まれていました。
しかし、SNSが普及するにつれ、マスメディア中心のトレンド一強から変化しつつあります。
様々な要因を踏まえた上で、どういった情報を提供すればいいのか、どこに向けて提供するべきなのか、そのターゲットとはどういった人物なのか、手探りで取り組む必要が出てきているのです。
こういったVUCAの影響は、企業などの組織のみならず、個人にとっても大きいものです。次の項目で詳しく解説していきます。
VUCAが個人に与える影響
それでは、VUCA個人に与える具体的な影響とはどういったことなのでしょうか。主に、働き手としての個人に焦点を当て解説していきます。
競争社会の中での立ち回り
インターネットやITの普及により、国内外の競争が激化していると述べました。これらは、労働市場にも影響を与えます。
激しい競争の中では、企業の経営悪化の可能性も高まるため、労働者を解雇しなければいけない事態も多く生じてきています。
企業は、将来的に会社に貢献できる可能性の高い、”優秀な従業員”を求めるようになります。「VUCA」時代における”優秀な従業員”は、時代に合わせて価値観をアップデートいける人材であるともいえるでしょう。
デジタル化や技術革新に伴う業務内容の変化
ITツールの拡充や、新しい機器の導入など、ここ数年で、身の回りの業務が大きく変化したという方も多いのではないでしょうか。
こういった変化は今後も起こり、様々な業界に影響すると考えられています。
デジタル化や技術革新によって、これまで人の手で行ってきた作業などが一新されるケースも増加傾向にあります。
従業員は、長年担ってきた業務から離れ新しい業務に対応しなくてはいけなかったり、場合によっては雇用契約が終了する場合もあります。
少子高齢化による労働環境の変化
日本では、将来的な少子高齢化が確実視されています。
まずは、数字で少子高齢化問題をみていきましょう。
2022年の出生数は過去最少
2022年に厚生労働省がまとめた出生数の年次推移を見てみると、2022年の出生数は77万747人と80万人を割っており、過去最少となっています。
厚生労働省 2022年人口動態統計月報年計(概数)の概況 図1を加工して作成
2030年の高齢化率は30%になると予想されている
2022年に内閣府が発表した高齢社会白書の「世界の高齢化率の推移」から日本単体での総人口に占める65歳以上の者の割合を見てみると、2020年は28.6%となっています。推計値として2025年には29.6%、2030年には30.8%になるのではないかと予想されています。
内閣府 2022年版高齢社会白書 図1-1-6を加工して作成
このように、今後も高齢化率が高い水準が見込まれる日本では、既存のやり方では、働き手の不足も避けられません。
そのため、一人当たりにこれまでより高い労働力が求められるようになっています。成果を出せる人材の価値が高まっているのです。
年功序列から成果主義へ
以前までの、年功序列制度が無くなりつつあることも、これらの象徴ともいえます。勤務年数に応じて対価を与えるのではなく、従業員の成果に応じて評価し給与を査定する企業が増えました。
企業にとって、優秀な従業員が長く働いてくれるのはありがたいことですが、高いパフォーマンスを出せるかどうかがシビアに判断される時代へとなりつつあるといえるでしょう。
VUCA時代を生き抜くキャリア戦略
では、私たちはこれからどのようにVUCA時代に備えていけばよいのでしょうか。ここでは、VUCA時代を生き抜くための方法としてキャリア形成に焦点を当て、3つご紹介します。
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環境に対応する
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情報収集・学びによって自身をアップデートしていく
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自発的に行動する
1つずつみてきましょう。
環境に対応する
変化していく環境に対応するというのは、とても難しいことですが、以下の2つに分けて取り組むことが重要です。
周囲の環境を正しく認識する力をつける
まずは、状況を認識することです。どういった部分がどう変化しているのか、その結果として影響を受けるのはどこか、そういったことを一つひとつ分析していきます。
環境を認識することで、「何となく変化しているけれどよくわからない」「この先どうなるのだろう」という不安を解消することができます。
自身を客観的に認識する力をつける
その環境の中で、自身あるいは企業が置かれている状況はどうなのかを認識することも必要です。
環境そのものを認識し、さらに自身の立場を知ることで、「何が課題なのか」「今何をすべきなのか」が明確になってくるでしょう。
情報収集・学びによって自身をアップデートしていく
VUCA時代においては、特定の狭い分野よりも、広い領域で活躍できる人材の価値が高まっています。普段から、広い分野の情報収集を行う、学ぶといったことが重要です。
技術革新やビジネスモデルの変化によって求められるスキルが変化しても、多領域の知識を有していれば、その分対応できる範囲が広くなりことが期待できます。また、転職と選択肢を持つことにもつながります。
人生100年時代に向けて
人生100年時代と提唱されているように、これまでよりも長く生き、長く働く人が増えると予想されます。
何歳であっても働ける、通用する知識やスキルを身につけるため、社会人が、学校教育からいったん離れたあとも、それぞれのタイミングで学び直し、仕事で求められる能力を磨き続けていくリカレント教育を視野に入れることも重要です。
自発的に行動する
「トップダウンの目標に従って成果を出す」「上司の指示に従ってミスなく業務をこなす」といったことから変化しつつある評価基準では、”優秀な従業員”の在り方もまた大きく変わっていくことが予想されます。
VUCA時代は、社会も企業も常に変化にさらされています。そのため、従業員には変化にいち早く対応する行動力が求められます。また、与えられた課題を解決するという業務は、AIやロボットに代替されるとも言われています。
VUCA時代に求められるキャリア自律
思考や発想を、自発的に、行動に移していくことが必要です。行動に移すことで、課題をクリアできるだけではなく、自身の経験にすることもできます。
与えられて得るのではなく、主体的にキャリアを築いていくキャリア自律によって、様々な状況に対応できるようになるでしょう。
「キャリア自律」がもたらすメリット~企業側と個人側の両面から | リカレントcounselor |
まとめ
このページでは、VUCA時代でも迷わないキャリア戦略について解説してきました。
VUCA時代には終わりがないと言われています。今後ますます激化する可能性もあります。先行きが見えない未来を生き抜いていくのは困難に思えるかもしれません。実際、私たち個人への影響は大きく、避けることは難しいのです。
しかし、この困難に面しているのは個人だけではなく、社会全体、そして全ての人々です。どういった人も、それぞれが不安を抱えているといえます。
VUCA時代はこれまでとは違う時代ではありますが、個人の考え方や行動、キャリアや学びの積み重ねによって、乗り越えられる時代なのです。
Q&A
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