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キャリア - 2024.09.05更新 / 2024.02.15公開
「ワークエンゲージメント」とは? 高める方法や年収との関係を解説
「働き方」の価値観をとらえるための言葉は、時代が経つにしたがってその数を増やしてきました。
今回はその中から、「ワークエンゲージメント」という言葉について解説していきます。
ワークエンゲージメントとは
ワークエンゲージメントとは、誇りややりがい、熱心さ、活力を持って自分の仕事に取り組んでいる状態を指す言葉です。
仕事を熱心に行い、自分の仕事に誇りを抱き、そして仕事から活力を得ている状態の人は、「ワークエンゲージメントが高い」といえます。
ワークエンゲージメントという言葉は、比較的新しい概念です。アメリカのワシントンにあるギャラップ社によって1990年代から使用され始めたものと考えられていて、2002年にオランダでその概念が確立しました。
ちなみに日本に入ってきたのはそれよりも遅く、2014年ごろから積極的に使われるようになったと考えられます。
ワークエンゲージメントの高い従業員は、組織を活性化させて生産性を向上させるので、企業側にとって非常にありがたい存在です。仕事にやりがいを抱いているため、定着率も良いとされています。
またこのような従業員は総じて消費者・顧客に対しての働きかけも熱心であり、消費者・顧客の満足感を上げるスキルを持つ傾向があります。
出典:厚生労働省「ワーク・エンゲイジメントに注目した「働きがい」をめぐる現状について」
ワークエンゲージメントの指標について
ワークエンゲージメントの指標として、以下の3つがあります。
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活力
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熱意
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没頭
それぞれ見ていきましょう。
困難に立ち向かう「活力」
「活力」とは、高いエネルギーでもって自分の仕事に取り組めている状態をいいます。
人は活力がみなぎっている状態のとき、困難な仕事であっても積極的に取り組み、それを克服するための努力をすることができます。
また、仕事のミスや問題が起こった場合であっても、そのダメージからすばやく回復することができます。
加えて、活力がある状態の人は仕事を「楽しい」と感じるため、そもそも「仕事上のストレス」を感じにくい傾向にあります。
仕事への誇りを表す「熱意」
「熱意」は、自分の仕事に誇りを持ち、自分の仕事は意味のあるものだととらえている状態をいいます。
仕事に対して熱意がある人は、現在の商品・サービスをただ提供するだけではなく、「お客様のためにより良く改善するためにはどのようにしたらいいか」「自分の能力をアップさせるためには何をしたらいいか」を常に考えて自発的に行動します。
これは、企業に利益をもたらすだけでなく、本人のスキルアップにもつながります。
仕事に熱中できる「没頭」
趣味などの楽しいことをしているとき、「時間が経つのも忘れて没頭してしまっていた」「気が付いたら、外が真っ暗になっていた」という経験をしたことのある人も多いのではないでしょうか。
仕事においても集中力が持続し、業務に「没頭できるほど仕事に夢中になれる状態」にある人は、ワークエンゲージメントのスコアが高くなる傾向にあります。
また、時間を忘れて仕事に没頭できる人は、総じて仕事の精度が高く、また仕事が早い傾向にあり、ヒューマンエラーも起こりにくくなると考えられています。
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ワークエンゲージメントと年収の関係
上でも述べた通りに、ワークエンゲージメントのスコアを向上させることは、企業側にとって大きなメリットがあります。それでは、どのようにしたらワークエンゲージメントをアップさせることができるのでしょうか。
「ワークエンゲージメントを高めるためには、年収を上げればよい」と考える人は少なくはありません。「年収の高さ」は、従業員のモチベーションを高めるもっとも分かりやすい指標のうちのひとつです。
年収が高くなればその分さまざまなサービスや商品を購入できるようになりますし、何よりも年収の高さは「自分が認められている」という自己肯定感にも結び付きやすいものだからです。
実際に、39歳以下の層では、非役職者・係長および主査担当職・課長相当職などのどの立場であっても「年収が高ければ高いほど、ワークエンゲージメントのスコアが上昇する」というデータがあがってきています。
2019年に厚生労働省がまとめた労働経済の分析「39歳以下の従業員年収別にみたワーク・エンゲイジメント・スコア(活力・熱意・没頭)の概況」では、年収が高くなるにつれてワークエンゲージメントスコアも高くなっています。
※ワーク・エンゲイジメント・スコアは、調査時点の主な仕事に対する認識として、「仕事をしていると、活力がみなぎるように感じる」(活力)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(熱意)、「仕事をしていると、つい夢中になってしまう」(没頭)と質問した項目に対して、「いつも感じる(=6点」「よく感じる(=4.5点)」「時々感じる(=3点)」「めったに感じない(=1.5点)」「全く感じない(=0点)」とした上で、「活力」「熱意」「没頭」の3項目について回答している16,579サンプルについて、1項目当たりの平均値として算出している。
厚生労働省 2019年労働経済の分析 第2-(3)-5図を加工して作成
しかし「ワークエンゲージメントを高めるためには、年収をアップしさえすればよい」とまではいえません。なぜなら40代以上になると、「年収の高さとワークエンゲージメントに相関関係は見られない」というデータが出ているからです。
39歳以下の社員と同様のデータでは、「40歳台社員の年収別にみたワーク・エンゲイジメント・スコア(活力・熱意・没頭)の概況」は39歳以下の結果とは異なり、年収とワークエンゲージメントは直結していないことが分かります。
厚生労働省 2019年労働経済の分析 第2-(3)-5図を加工して作成
このようなことから、ワークエンゲージメントを上げるためには、「年収アップ以外の要素」も押さえておく必要があることがわかります。
ワークエンゲージメントの高め方
ワークエンゲージメントを高めるために有効だといわれている方法は、以下の4つです。
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コミュニケーションを積極的に行う
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研修を行ったり、参加型の討論会を実施したりする
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必要に応じて人事制度を見直す
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業務の効率化を図る
一つずつ解説していきます。
コミュニケーションを積極的に行う
従業員同士でのコミュニケーションは、ワークエンゲージメントを高めるうえで非常に重要な要素です。
社内で活発に議論できる環境があり、また仕事上の悩みを共有できる状態にあった場合、ワークエンゲージメントが上昇しやすくなるとされています。
たとえ採用にはいたらなかったとしても、 「自分の意見が聞いてもらえる環境」「自分の仕事上の悩みを上司やチームに伝え、アドバイスをもらえる人間関係」を築けていた場合、人は「この環境のためにがんばろう」「困ったことがあったら早めに共有して、判断を仰ごう」と考えることができます。
ただ、「どのようなコミュニケーションが望ましいか」は個人差があるため、上司は「その部下にあったアプローチ」を考えていくことが必要です。
また、ミスやトラブルを部下が報告してきた場合、プライドや尊厳を傷つけるような過剰すぎる叱責は避けましょう。状況を把握し、トラブルの解決に努める冷静なふるまいを見せることで、部下からの信頼感はアップします。
研修や参加型討論会の実施
上でも少し触れましたが、「社内で活発に議論できる環境」はワークエンゲージメントの向上に役立ちます。
また、個々人が自分の能力アップのための研修に積極的に参加できる状況を作ったり、魅力的に見える研修を企業側が提示したりすることもまた、ワークエンゲージメントの向上につながります。
なお、参加型の討論会においては、反対意見が出されることも当然にあります。そしてこのような反対意見に対して、従業員それぞれが意見を言い合うことは、健全なかたちであるといえます。
ただし、反対意見などがある際は、頭ごなしに否定するといったことは避け、相手を尊重しながら討論できるよう注意が必要です。
必要に応じて人事制度を見直す
「評価の基準が不透明で、可視化されていない」「結果を出したのに正当に評価されていない」という状況にある場合、仕事に積極的に取り組むモチベーションを持ちにくくなります。
このため上層部には、必要に応じて、現在の人事制度を見直し、「今現在の人事制度に問題はないか」を冷静に見極めていく視点を持つことが求められます。
また、「この立場に就くためには、この資格が必須」などのように分かりやすい指標を提示するようにすると、従業員のスキルアップのモチベーションがアップします。
業務の効率化を図る
明らかに多い業務量や、スキルに見合わない仕事などを継続して行うことで、従業員はモチベーション維持が難しくなり、やがて疲弊していきます。
疲弊やストレスは業務パフォーマンスにも影響を及ぼすため、ミスやトラブルなどのイレギュラーな状況が起こる可能性があるのです。
このため、社員のワークエンゲージメントを高めようとするのであれば、「必要に応じた業務の見直し」を行うことも必要です。
現在の仕事の流れの中で無駄なところはないのか、あるとすればその無駄を省くためにはどうすればいいのかを考えて、それを現場に反映していくことが求められているのです。
また、「現在の仕事量が非常に多く、その業務にあたる人を摩耗させている」という状況であれば、新しい人材を雇うなどの検討も必要です。
まとめ
ワークエンゲージメントは、「仕事を肯定的にとらえていて、かつ仕事に対して積極的にある状態を示す指針である」といえます。
ワークエンゲージメントは、「生産性が向上する」などのメリットがあるため、近年多くの企業に注目される概念となりました。
なおこのワークエンゲージメントを高めるためには、「社内のコミュニケーションの活性化」「討論会や研修の実施」「人事制度の見直し」「業務の効率化」などが有用です。
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