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キャリア - 2024.10.18更新 / 2023.03.29公開

【ゼロベース思考】その特徴とメリット

世の中に数多くある思考方法のうちのひとつとして、「ゼロベース思考」があります。ここではこの「ゼロベース思考」の特徴とメリットを解説していきます。

「ゼロベース思考」とは

ゼロベース思考とは、その名前の通り、「まったくのゼロから物事を考える思考方法」をいいます。

多くの人が、自分自身の経験や知識、そして一般的な常識を元に物事を判断をしていますが、ゼロベース思考は、これらをいったんクリアにして、まっさらな状態から思考やアイデア出しをしていきます。

このようなゼロベース思考が必要とされるようになったのは、世の中が「複雑化」が背景にあるとされています。

多様な価値観とライフスタイルの変化

異なる価値観を尊重する傾向にある中で、ニーズやライフスタイルにも変化が生じています。また、新型コロナウイルスの蔓延は、生活や仕事のあり方に大きく影響をおよぼしました。

多くの選択肢の中から、より最適である物事を選ぶこに対する難易度が高くなりつつある現代では、新たな考え方・創造性が求められるようになりました。その結果として、前例にとらわれない「ゼロベース思考」が注目されるようになったのです。

ゼロベース思考と対極に位置する「トレンド思考」について

トレンド思考は過去の実績や経験、前例を基にして現在のトレンドや流行を考慮しながら、未来の状況や展望を予想するアプローチです。トレンド思考では、過去の成功体験や市場の動向を元に、将来的なニーズや市場の変化を予測し、それに合わせて戦略を立てることが重視されます。

経験をベースとした「トレンド思考」

たとえば新しい商品を開発した場合、過去の商品が初月から3か月目までほぼ同じ売り上げを続け、それ以降は5パーセントずつ減少し、半年目から売上が一定になったというデータがあるとすると、「新商品も前回と同様の売り上げパターンではないか」と予測するのがトレンド思考です。

このトレンド思考は以前の経験などをベースとするため、分かりやすく未来の予想を立てやすい方法です。

しかし上でも述べた通り、現在は価値観もライフスタイルも働き方も多様化しています。このため、トレンド思考だけでは予想がつかない部分も出てきました。このような流れから、ゼロベース思考の方が大きく取り上げられるようになったといえるでしょう。

ゼロベース思考を取り入れるメリットとは

ここからは、ゼロベース思考を取り入れることのメリットについて解説していきます。ゼロベース思考を取り入れることのメリットは、以下の通りです。

  1. 今までになかった新しいアイデアが生まれる可能性がある

  2. 主張やプレゼンに説得力が生まれる

  3. 複雑化した物事が解決する可能性がある

 
1つずつ見ていきましょう。

1.今までになかった新しいアイデアが生まれる可能性がある

ゼロベース思考のメリットは、新しいアイデアが生まれる可能性があることです。

ゼロベース思考では、過去の成功例や固定概念を一旦リセットし、前例や条件に縛られることなく思考をしていきますので、以前では出なかったアイデアが生まれる可能性が高まります。

中には、業界全体のあり方を変えるような画期的なアイデアも現れるかもしれません。

技術革新をもたらす可能性も

「ゼロベース思考によって生まれたアイデア」が、会社の経営そのものを変える大きなきっかけとなる可能性もあります。また、技術やシステムの革新をもたらすことも、決して珍しくありません。

サービスの見直しなどにも有効

また、顧客の目線に立つということができれば、自社を顧客の視点から評価したり、自社の抱える問題を洗い出したりしやすくなります。

企業である以上、自社の利益を考えるのは当然のことです。また、顧客が求めるものだけをリリースし続けることが成功につながるとも一概に言えないのが経営の難しさでもあるでしょう。

しかし「自社の従業員」という立場からいったん離れ、「顧客」という立場から自社を見つめ直すことで、顧客が求める商品やサービスが分かったり、顧客が抱く不満点が分かったりします。これらが分かれば、それに対する「回答」を出すこともしやすくなるでしょう。

またこの考え方は、「かつては売れていたけれど、今は売り上げが低迷している商品・サービス」を見直すための方法としても非常に有用です。

2.主張やプレゼンに説得力が生まれる

どれほどすばらしいアイデアが浮かんでも、それをきちんとプレゼンできなければ、商品・サービスの開発にはつながりません。

「画期的なアイデアを考え付いたのに、上手くプレゼンでアピールできず、結局リリースに至らなかった…」「問題解決のための方法を思いつき、それが実践できるところまで道筋を立てられたのに、上層部の理解が得られず流れてしまった…」このような経験をしたことのある人もいるのではないでしょうか。

意外に思われるかもしれませんが、ゼロベース思考はこのような「プレゼンでの失敗のリスク」の低下が期待できる思考方法でもあります。

なぜならゼロベース思考は、その思考段階において無意識的にせよ「まず現在の状況はどのようになっていて」「どのようなトラブルや問題を抱えていて」「その問題に対してどのようにアプローチすればよいのか」を組み立てていきます。

「理論の段階」を踏む

組み立てた理論の結論として、「だから、〇〇すればよい」「このような問題を解決するには、〇〇が有用だ」とします。ゼロベース思考はたしかにまったくのゼロからアイデアを出す方法ではありますが、それをかたちにするためには、きちんとした「理論の段階」を踏むことになるわけです。

このような理論の組み立てがきちんとできていることを自覚すれば、あとはそれを資料にまとめます。自分の頭の中にある「構築された理論」を上手くプレゼン資料に落とし込むことができれば、プレゼンでの説得力もぐっと上がることでしょう。

3.複雑化した物事を解きほぐせる可能性がある

現在の世の中は非常に複雑です。すでに述べたように、ライフスタイルも価値観も実に多様化しています。そのため、一つひとつの物事も複雑化していて、解決方法がなかなか見つからないこともあります。

しかしゼロベース思考の場合は、「どんなに複雑化したことであっても、それを打破する方法が必ずある」という考えを基本とします。このため、複雑化したことでもそれを解きほぐし、新しい解決方法を模索し、解決の糸口を探し出そうとします。

今までの「前例」では解決方法が見つからなかった場合は、「新しい思考」によって突破口を探そうとします。また、まっさらな状態から考え直すことで、従来の方法では解決できなかった問題も、あっさりと解決できてしまうかもしれません。

このように、ゼロベース思考には数多くのメリットがあるのです。

ゼロベース思考を身に付けるために普段から心掛けたいこと

ゼロベース思考を身に付けるために重要なことのひとつとして、まず、「なぜこれは〇〇なのか」と自分自身に問いかけ続けることが挙げられます。

上司から指示された内容に対して「なぜ上司はこのような指示を出すのか」と考えたり、資料を作るマニュアルを見たときに「なぜこのようなマニュアルが作られているのか、より良い方法はないのか」と考えたりするのです。

このように、一つひとつの物事に対して敏感であり、すでにある前提を疑う思考を習慣づけることで、ゼロベース思考は身についていきます。

様々な意見を「聞く」

また、ゼロベース思考を会社組織として行う場合は、「人の意見を否定しないこと」も非常に重要です。

ゼロベース思考で出されるアイデアのなかには、現実的には実行不可能なものもあります。しかしそこで「それは実行不可能である」と切り捨てていては、社員は新しい意見を出すなどのチャレンジを恐れるようになるでしょう。

実行不可能かどうかを考えるのは後の段階でもよいので、まずは他者の話を否定せずに聞く、といった傾聴の姿勢を身に付けるようにしましょう。

上でも話したように、どれほど良い案であっても、それを上手く伝えなければなかなかその案は受け入れてもらえません。そのため、ゼロベース思考を進めていくなかで、「それでは自分で出したゼロベース思考の案を、どのようにしたら人に伝えられるのか」を勉強していく必要もあります。

自分が組み立てた理論を書き留めたり、整理したりして、研究していくとよいでしょう。

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まとめ

すべての前提条件を取り払い、真っ白な状態から思考を始める「ゼロベース思考」は、変わり続ける現在の世の中によくマッチした思考方法だといえます。

キャリアコンサルティングにおいても、相談者の状況や特性は様々です。一人ひとり違う相談者の課題解決のサポートをするにあたり、キャリアコンサルタントにとっても、ゼロベース思考は活かせる部分があるかもしれません。

Q&A

ゼロベース思考とは?
ゼロベース思考とは、その名前の通り、「まったくのゼロから物事を考える思考方法」をいいます。
ゼロベース思考にデメリットはあるのか
ゼロベース思考にもデメリットはあります。ゼロベース思考は「前提条件」「これまでの成功事例」「先人の知識」をまったくゼロにして考えます。そのため、しばしば実現不可能な結論にたどり着くことがよくあります。特に、「相手の文化や風習をよく理解したうえで、慎重にことを進めなければならない場面」などにおいては、マッチしない思考方法となることもあります。
ゼロベース思考がもたらした具体的な成果を知りたい
ユニクロで開発された「ヒートテック」がその代表例です。ヒートテックは、ユニクロ×東レ株式会社の開発したものですが、当時東レ株式会社は「ものづくり」を重要視していました。しかしそのような東レ株式会社がユニクロと提携し、「顧客目線で必要なもの」を模索した結果、ヒートテックが生まれました。
またJRでは、増え続けるニーズに対応するために、貨物線路を旅客線路としても運行するという決断を下しました。その結果、顧客の要望を満たすことに成功しています。
ゼロベース思考が生かされる業界は?
常に新しい思考が求められるコンサルティング業界と非常に相性がよい思考方法としてゼロベース思考はよく取り上げられています。これだけでなく、ゼロベース思考は「アイデア出し」や「課題解決」において有効な思考法のため、あらゆる業種・業界であってもよく使われています。

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